プロレス王者とロックスター、二つの夢を叶えたC・ジェリコの素顔

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2018年1月4日(木)、東京ドームで開催される「WRESTLE KINGDOM 12 in 東京ドーム」。新日本プロレスによる日本プロレス界最大のビッグマッチ。今回、ダブルメインイベントの一つでもある「IWGP USヘビー級選手権試合 ノーDQマッチ」に参戦するクリス・ジェリコにインタビューを実施。

2017年前半は米WWEのマットで活躍し、夏に両国国技館で開催された「WWE Live Tokyo」にも参戦。その後、自身のバンドであるFOZZYで精力的に音楽活動を行ってきた彼が、11月にケニー・オメガへの挑戦を突如表明。新日本プロレスのリングに立つことになった。プロレスと音楽について、今何を考えているのか話を聞いてきた。

世界中のプロレスファンを巻き込んだ試合をしたい

ー イッテンヨンに参戦しようと思った最大のモチベーションは何だったのでしょう?

クリス 誰も実現するとは思っていなかったドリームマッチだよね。自分自身もワクワクさせられる試合だ。27年間プロレスをやってきて、あらゆる人たちと世界中で戦ってきた。リック・フレアー、ジ・アンダーテイカー、ショーン・マイケルズ、ジョン・シナ、アダム・コープランド……名だたる面々と戦ってきたけど、ケニー・オメガとはまだ戦っていない。彼が日本プロレス界でどれくらいのスターか心得ているし、彼と戦うことがどれだけ特別な試合になるのかも分かっている。そして、タイミング的には今しかないんだ。昨年じゃダメだし、再来年でもダメ。今こそがそのときだ。世界中のプロレスファンを巻き込んで大きなことができると考えている。そういうすべての物事を考えた結果、好奇心を持ってこの試合に出たいと思ったんだ。

ー ケニー・オメガという選手についてどんな印象を持っていますか?

クリス いい選手であり17年のベストバウト(プロレス大賞)、そして同じカナダのウィニペグ出身であるということも知っている。ウィニペグはカナダでもそんなに大きな街ではないから、興味はあったよ。でも、彼の試合は実はまだ観たことがない。なぜならば、観る必要がないからだ。いいプロレスラーである、有名である、人気のある選手である。それしか知る必要はないんじゃないかな。

ー 最近の新日本プロレスの動向はチェックしていますか?

クリス 記事は読んだりしているよ。日本に長くいたから日本には興味があるね。そして新日本にも。新しいジェネレーションが出てくる、トップスターが代わる、そんなサイクルのなかでも永田裕志、天山広吉、小島聡、獣神サンダー・ライガーという世代が一緒に頑張っているところを見てきた。自分自身も長いキャリアのなかで、古参と言える人たちと戦ってきたけど、彼らはまだ第一線にいるよね。その一方、オカダ・カズチカ、内藤哲也、棚橋弘至という新しいジェネレーションや、ケニー・オメガ、ヤングバックス、Codyという選手を知ることもすごく大事なことだと思う。僕は27年間プロレス業界にいるから、もうベテランと呼んでもいい。でも、自分はまだピークにいる。ヤングライオンともベテランとも戦える存在が自分だし、それができる選手は他になかなかいないし、引退したら自分みたいな存在は現れないかもしれない。ずっとトップに君臨し続けているのに若手とも古参とも戦える。こんな存在はなかなかいないよね。

ハード・ロックが好きで、日本の『Burrn!』を読んでカタカナを学んだ

ー あなたはプロレスラーである一方で、FOZZYというハード・ロック・バンドのフロントマンでもありますが、バンド活動のインプットがプロレスにフィードバックされることはありますか?

クリス すべてに関連性があるね。ティーンエイジャーの頃はロックスターになりたかったしプロレスラーにもなりたかった。ハルク・ホーガン、アンドレ・ザ・ジャイアント、ジェイク・ロバーツといった2メートル・150キロもあるようなプロレスラーになれるとは思っていなかったけど、キャラクターは大きくできると思っていた。バンドのフロントマンのような存在のプロレスラーになれたらいいなと考えていたんだ。ポール・スタンレーやフレディ・マーキュリーのようなクオリティを持ったプロレスラーになりたくて、それを実践してみたってわけ。 

1999年からFOZZYを始めたんだけど、プロレスをしててもバンドのフロントマンでも、オーディエンスとつながることには変わりはないから、もしそのつながりを持つことができれば、そして影響を与えることができれば、プロレスも音楽も関係なくそれが自分にフィードバックされる。それは世界どこの国でも同じことさ。日本はこれほどのロックンロールカントリーで、クリス・ジェリコは有名なのに(笑)、まだFOZZYとして来日したことがないんだ! 恐らくロックスターとしてのクリス・ジェリコと、プロレスラーとしてのクリス・ジェリコでギャップを持っているんだと思う。しかし他の国では、アメリカ、カナダ、イギリス、スペイン、ドイツ……どこでもFOZZYは人気なんだ。FOZZYで来日公演を行うことは大きなミッションだと思う。だって「FOZZYいつ来るの? 日本にも来てほしい!」と言ってくれる人はたくさんいるからからね。 

ー 日本人はハード・ロックやヘヴィ・メタルが好きですからね。

クリス 僕は『Burrn!』でカタカナを学んだからね(笑)。日本のファンが何を求めているのか分かっているつもりだから、ぜひ日本でのライブは実現させてみたい。



Photo=Yoko Yamashita

ー FOZZYではいろいろなバンドと共演していますが、自分が子供の頃に憧れていたアーティストと遭遇することも多いんじゃないですか?

クリス そうだね。キッス、メタリカ、スラッシュ、ダフ・マッケイガン。すべて自分にとって憧れの存在だ。そんな彼らとツアーをまわるのは本当に光栄なことだし、自分自身もやったぞ!という達成感を得ることができる経験だね。 

ー そう考えると、プロレスも音楽も子供の頃に抱いていた夢がすべて叶っているといっても過言ではないですね。

クリス 大きな夢を一つ見るよりも二つの夢を見る、そしてそれがどうやったら叶うかを考えるんだ。インターネットが普及していなくて発信することが難しかった90年代、自分を信じるしかなかった。大事なのは、他の奴らの言うことは聞かず、影響も受けないこと。なぜなら、周りの連中が言うことは大体ネガティヴなことが多いから。「できっこないよ」って言われても、「なぜ? 自分にはできるさ」としか僕は言わなかった。

大きなケガが一度もないのは「月より寒い」故郷のおかげ?

ー ハードワーカーなのに、これまで大きなケガを一度もしたことがないと思うんですけど、ケガ予防の秘訣でもあるのでしょうか?

クリス 秘訣は自分でもわからないね(笑)。幸運だったと思うよ。生まれ育ったウィニペグはすごく寒い場所で、マイナス20度もざらだし、風も強いから体感温度が下がる。ウェザーチャンネルで「ウィニペグは月面よりも寒い」って紹介されていたくらい。骨まで凍るくらい寒い場所で育てばタフになるんだと思う。FOZZYでもなかなかフィジカルなショーをするよ。エネルギーもあるし動くんだけどケガは一度もしてない。ジャンプして膝を打つこともあるし、FOZZYのフロントマンもプロレスラーも同じくらいケガのリスクはあるんだけど、ラッキーなのかクレイジーなのか、それともウォッカの飲み過ぎなのか、今のところ無事だね。


Photo=Yoko Yamashita

ー 東京ドームのリングには過去一度だけ立ってるんですよね。

クリス そう、97年に一度だけ。新日本プロレスのリングで、獣神サンダー・ライガーの悪の片割れ、”スーパー・ライガー”として金本浩二と対戦した。でも個人的にはあまりうまくいかなった。今回は20年経ってのビッグリターンということになるけど、輝かしいカムバックになるよ。

ー あなたの場合、WWEでレッスルマニアの大舞台は何度も経験しているし、大きな会場での自分の見せ方というのも分かっているんじゃないですか?

クリス 俺にとっては、たぶん15回目くらいのビッグマッチになる。会場が大きいと歓声もあまりリングに届かなくて、みんな観てる?っていう気分になる(笑)。特にドームはその傾向が強い気がするね。初めて来日したとき、ファンが静かで驚いた記憶があるんだ。観てはいるけど声は出さない。でも、こういうものなんだってすぐ理解したよ。日本のドームで、あの試合中の研ぎ澄まされた静けさっていうのは、自分自身を信じることがすごく大事になると思う。やっぱりアメリカのプロレスとはぜんぜん違うスタイルだなって感じてるよ。

25年間の点と点がつながった運命のインテンヨン

ー 日本で印象に残ってる試合は?

クリス 日本だと95年、両国国技館でWARの3周年記念興行として「WARインターナショナルジュニアヘビー級選手権試合」をウルティモ・ドラゴンとやったんだけど(当時のクリスのリングネームはライオン・ハート)、”クリス・ジェリコといったらこの試合を観ろ”っていうくらいの内容だった。日本からアメリカに行くときの大きなきっかけになった試合だと考えると、それが思い出深いかな。すごくいい試合だった。もう一つ思い出深い試合と言えば、後楽園ホールで外道とやった96年の試合。邪道・外道とは25年の付き合いだけど、まさか新日本のリングで一緒になるとは思ってもいなかったよ。

ー 冬木軍でも一緒でしたしね。

クリス ああ。イッテンヨンの自分の試合のレフェリーはWARで一緒だったレッドシューズ海野、当日の英語実況はドン・キャリス――彼も25年来の仲で、同じウィニペグ出身なんだ。そして、自分の対戦相手であるケニー・オメガもまたウィニペグ出身。点と点が線でつながるというか、25年という長い年月をかけて、すべてのパーツが一つになったのがこの「WRESTLE KINGDOM 12 in 東京ドーム」だと思う。まさに運命としか言いようがない一戦だね。

クリス・ジェリコ
カナダマニトバ州ウィニペグ出身。1990年にプロレスデビュー。2001年にはWWE世界王者を戴冠し史上初のWWE&WCW統一世界王者に輝いた。2012年にはWWE公式サイトが選出した史上最もカリスマ性のあるレスラー5人にランクインしている。1999年にジェリコがヴォーカリストを務めるロック・バンド、FOZZ結成。コンスタントに活動を続け、2017年9月には7枚目となるアルバム『Judas』リリース。アルバムの表題曲はYouTubeで5週間で500万回以上再生され、8カ国のロック/メタルチャートで1位を獲得した。また、自伝など3冊の著書でニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストにランクインし、17年8月に刊行されたもので4冊目となる。
 

WRESTLE KINGDOM 12 in 東京ドーム
2018年1月4日(木)
東京ドーム
15:30開場 17:00試合開始
http://www.wrestlekingdom.jp/