年末企画:藤津亮太の「2017年ベストアニメTOP10」 キーワードは「内と外」

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 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。今回は、2017年に日本で公開&放送されたアニメ作品から10本を選出。第16回の選者は、アニメ評論家の藤津亮太。(編集部)

・『けものフレンズ』・『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』・『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』・『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』・『サクラクエスト』・『Re:CREATORS』・『夜明け告げるルーのうた』・『BLAME!』・『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』・『宝石の国』

 2017年のアニメの状況を浮き彫りにする作品を順不同で10作品選んだ。キーワードは「内と外」だ。長編が多くなったのは、テレビに魅力的な作品が多い分、選びきれなかったことの裏返しでもある。

 本年を代表するヒット作の一つが『けものフレンズ』。熱狂的な人気を得た本作は、すぐさま他企業とのコラボレーションや、主題歌を歌ったどうぶつビスケッツ×PPPの音楽番組出演などが決まった。こうしたファンの盛り上がり(内)に企業や歌番組(外)が注目するスピード感は、2017年ならではのものといえる。

 コアなファンに深く刺さる作品(内)なのか、一般層に広く見られる作品(外)を目指すのかは、(厳密には二分法でないにせよ)アニメにとって大きなポイントだ。そんな「外=一般層向け」のアニメの筆頭ともいえる『名探偵コナン』の劇場版第21作『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』の興行収入は、シリーズ過去最高となる68億9,000万円の大ヒットとなった(数字は2017年12月25日時点のもので公式発表から)。幅広い世代をキッチリ楽しませる『名探偵コナン』ブランドのあり方は、「一般層に届くアニメ」のあり方を考える時にもっとフォーカスされてもよいはずだ。一方、第20作にして原点回帰をした『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』の興行収入も34億円を越えるヒットを記録(数字は2017年9月27日時点のものでテレビ東京の9月の定例社長会見から)。「“ポケモン”の魅力とは何か」という「作品の内側」を見つめ直した内容が「外」に伝わった形だ。

 今年数多く公開されたテレビシリーズの総集編映画もまた「内を目指すか/外を目指すか」それぞれの戦略がある。その中にあってテレビシリーズの素材も使った映画『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』は時制を大胆にいじる語り口で、「内/外」の二分法を超えて作品に向かい合うことを求めるような1本だった。オリジナル長編では『きみの声をとどけたい』が印象に残った。神奈川県・湘南を舞台に、ミニFM局を運営する女子高生たちの悩みと友情を爽やかに描いた普遍性のある物語で、もっと「外」に届いてほしい1作だ。

 「アニメの内と外」という観点では“町おこし”という現実的な問題を取り上げた『サクラクエスト』と、フィクションのキャラクターたちが現実世界に現れるという『Re:CREATORS』は正反対に見えながらも、「ストーリーの共有」がポイントとして共通しており面白かった。

 一方、日本の「内と外」にまつわる話題も多かった。『夜明け告げるルーのうた』はアヌシー国際アニメーション映画祭の長編部門グランプリ・クリスタル賞を受賞。小さな漁港を舞台に繰り広げられる中学生の男の子と人魚のルーの交流を独自のセンスで描いた本作は軽々と内から外へと越境を果たしてしまった。一方、世界最大級の動画配信サービスNetflixは、今年8月に発表会「Netflix アニメスレート2017」を開き海外ユーザーも関心を持っている日本製アニメに力を入れることをアピールした。配信という形で(ほぼ)リアルタイムで世界中に作品が届く状態は10年ほど前から始まっているが、それが本年はより加速したといえる。『BLAME!』は劇場公開とNetflix配信を同時にスタートさせた作品。巨大な階層都市の小さな村に流れ者が現れるという本作は、原作を換骨奪胎して、SFマカロニ・ウェスタンとでもいうような間口の広いエンターテインメントに仕上がっている。逆に海外作品で注目を浴びたのが『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』。日本を舞台にしたアメリカ製のストップモーションアニメで、劇的なストーリーと見事なアクションを見せた。こうした作品が「外」からやってくると、国内で「アニメ」という言葉が指し示す範囲がどんどん狭くなっているのではないかということを考えさせられる。

 『宝石の国』は同名原作をCG制作会社のオレンジが美しくも繊細にアニメ化した。これまで作品の一部分を担ってきたCG会社が元請けとして制作を手掛けるケースが目立ったのも今年の特徴で、背景には企画数に対し制作現場(=スタッフの数)は追いついていないという現状もあると思われる。魅力的な作品は様々に登場してはいるが、「外」から語られるよりもずっと業界の「内」は切迫した状況にあるのである。

(藤津亮太)