体を張ったリバウンドで勝利に貢献した娘・永井唯菜【写真:平野貴也】

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指揮執った父・永井コーチと娘・唯菜、順番が逆だった共闘で実現した初優勝

 思ってもみなかった“父娘鷹”での日本一が実現した。ウインターカップ2017全国高校バスケットボール選手権大会は28日に第6日を行い、女子の決勝は大阪桐蔭(大阪)が2度の延長戦の末に86-84で安城学園(愛知)を下して初優勝を飾った。陣頭指揮を執った元日本代表の永井雅彦アシスタントコーチと、体を張ったリバウンドで勝利に貢献した永井唯菜は、親子。父と娘の共闘で日本一に輝いた。

 決勝における永井唯菜の活躍は、見事だった。試合は、大阪桐蔭にとって厳しい展開だった。日本女子代表の合宿に参加した経験を持つエースセンターの竹原レイラが、相手の徹底したマークで封じ込まれてしまったからだ。安城学園はダブルチームでプレッシャーをかけ、すかさず3人目も寄せて囲い込むほどの徹底ぶりで、竹原に何もさせなかった。終盤は、ファウルが重なったこともあり、竹原のベンチに下げる時間が多くなった。

 大阪桐蔭は、全員がアウトサイドに広がって、相手の守備を分散させ、外角シュートやドライブ勝負を仕掛ける攻撃を展開。そして、味方が外角シュートを放つと、永井が誰よりも早くゴール下へ走り込み、リバウンド、あるいはルーズボールを拾って二次攻撃につなげた。

 第4ピリオドだけで7本、2度のオーバータイムで5本とリバウンドを取り続け、「リバウンドは得意というか、自分にできるプレー。競っていたので、とにかくボールが落ちる位置を予測して、意地でも取りに行こうと思っていました」と試合を振り返った永井のプレーが大阪桐蔭の粘り勝ちを呼び込んだ。

 父と一緒に日本一に輝いたが、最初からそのつもりだったわけではない。親子が指導者と選手の立場になることは、それほど珍しくない。ただ、同じチームに所属する場合、多くは親が先にいて、子どもが後から入って来るパターンだ。しかし、永井親子の場合は、順番が逆だった。

当初は1週間のはずが…永井コーチ「娘からしてみれば、いつまでおるねんという形」

 2015年の春に永井が入学。その後、森田久鶴監督の体調面の考慮などがあり、アシスタントコーチ就任の要請を受けたのが永井コーチだった。最初は1週間と聞いていたが、少しずつ延長され、現場を任される形になった。

 娘がいるチームの指導を任された永井コーチは「娘からしてみれば、森田先生に教わりに行ったのに(親が)何しに来るねん、いつまでおるねんという形ですから。僕もどうすればと思いましたけど、娘の方が嫌だったでしょうね。今も大変ですよ。たまに車に乗せて家まで帰りますけど、機嫌の良いときは、何かよく分からん歌を歌っていますが、練習で怒ったときなんかは、ぷいと横を向いていますからね。だったら電車で帰れよと思いますけど……。車の中、悲惨ですよ」と話し、苦笑いを浮かべた。

 饒舌な親に対し、娘は取材となると口数が少なくなる。父がコーチになると聞いた時にどう思ったかと聞くと「うーん……」と言葉を選んでいたが、父の言葉を借りて「嫌だった?」と聞くと「はい、それはありました」と笑った。だが、父の教えは、しっかりと受け止めている。

「最初はやりにくかったけど、コートとそれ以外でしっかりと切り替えるようになりました。私は、いつも弱気になってしまう。相手が強いと感じると、すぐに仲間に頼ってしまう。だから、いつも『強気で攻めろ』と言われています」と話した通り、強気のプレーで栄冠をつかんだ。娘の弱点を指摘した父と、父の叱咤に応えた娘が日本一に輝いた。(平野貴也 / Takaya Hirano)