転職で内定が取れる人と取れない人との差は、「ちょっとしたこと」にある (写真:Graphs / PIXTA)

第二新卒向けに就職活動のサポートを続け、多くの人たちを見てきた。そこで見てきたことは、内定が取れる人と取れない人との差は、“ちょっとしたこと”ということだ。

そのちょっとした差が何なのかを知ることで、転職活動をうまく進められる第二新卒が増えると思う。今回、代表的な転職活動のストーリーを紹介しながら、その“ちょっとしたこと”を説明していきたい。

休日出勤しても代休が取れない


「今は土日も普通に休めていて、むしろちょっと暇なくらいです」。

芦田靖幸(仮名)さんが転職に成功したのは約半年前。「休日出勤が当たり前」という、典型的なブラック企業に勤めていた。が、残業時間も少なく、休日も普通に休める会社に転職することができた。転職活動をしていた当時とはうって変わり、余裕のある表情でそう答えた。

最初に出会ったのは、芦田さんが前職を退職し、転職活動を始めて約半年くらいが経過したタイミングだった。そのころは面接を受けても、不採用ばかりだったようで、表情もどこか自信がないような印象を受けた。ある程度の職歴があるのに、なぜか自分のやってきた仕事の自己評価が低く、前職の経験はアピール材料にはならないと思い込んでいる点に、疑問を感じたことを覚えている。

【第二新卒プロフィール】
仮名:芦田 靖幸
性別:男性
年齢:26歳(転職当時:25歳)
最終学歴:日東駒専レベルの機械工学科卒
在籍期間(1社目):1年7カ月
前職の業務内容:計装の施工管理
現職の業務内容:環境試験機の設計

芦田さんは日東駒専レベルの大学で機械工学を学び、卒業後すぐに中堅規模の電気設備メーカーに就職した。工場などの電気や環境設備の施工管理業務を行う会社で、施工管理の担当者として、さまざまな現場を昼夜問わず駆けまわっていた。

「施工管理という業務の特性上、土日関係なく、お客さんの都合で突発的に仕事が入ることが多かった。休みの日でも急に仕事が入るので、自分の車には仕事道具や着替えを常に入れてありました。気が休まる暇もなく、正直めちゃくちゃしんどかったです」と、いまとなっては思い出話のように語る芦田さんだが、当時は考える暇もないくらい、ハードな日々を過ごしていたと思われる。

休日出勤すれば、その後、代休や振り替え休日を取得するのが通常だが、前職では、代休を取るような雰囲気ではなかったという。「代休なんてほとんど取ったことがありませんでした。ほかの社員も代休を取らないので、『仕事というのはこういうもの』と信じ込んでいました」と、芦田さん。運良く、たまに休みが取れても、疲れて部屋で寝てばかりの生活を送っていたと、当時を振り返っていた。

芦田さんが入社した会社は、入社2カ月目にはもう、複数の現場を1人で任されるような職場だった。

扱っているモノが工場で使用されている設備ということもあり、修理やメンテナンスは、基本的に工場が稼働していない休日や早朝、終業後といった時間帯になる。だから、顧客からの電話が鳴れば、現場の担当者として早朝深夜問わず、すぐに1人で現場に向かわざるを得なかった。

大学の同級生は合コンで楽しんでいるのに

芦田さんはそれでも頑張って仕事をこなし、そうした環境にも慣れ始めていたが、転機が訪れる。

「大学の同級生たちと久しぶりに会う機会があって、自分の会社がかなりブラックな労働環境だということをそのときに知りました。みんなの仕事も大変そうなのですが、休日はちゃんとあり、平日の夜に合コンをしたり、土日に旅行に行ったり、自由に時間を使えていて、とても羨ましく思いました。そんな当たり前のことができていなかったんです。このまま今の仕事を続けていても、仕事ばかりでプライベートが全くないまま歳を取ってしまうと思い、退職を決意しました」。入社から1年7カ月経ったときの話だ。

実際、年間休日を計算してみると、会社の規定では年間120日ほど確保されているはずだったが、芦田さんが取得した年間の休日日数は60日しか取れていなかった。

転職活動では、大学時代に学んでいた機械工学の知識と、前職の計装の仕事の経験を活かして、前職よりも一般的にレベルが高いと言われる、機械製品の設計業務を志望していた。

同じ業界ということもあり、転職はすんなりできると考えていた。しかし、実際は面接に立て続けに落ち、内定が勝ち取れない日々が続いた。その数は書類選考も含めて30社以上に及んだ。それは芦田さんの癖が足かせとなっていたのだ。わが社(UZUZ)に就活サポートを申し込んできたのもこのころだった。

前職の経験を聞いてみると、1年7カ月とはいえ、ほぼ1人で複数の現場で計装の施工管理も経験し、図面も簡単なものであれば、読み書きができる。第二新卒としては一定の経験を持つ人材という印象だった。しかし、芦田さんと会った当初、自分がやってきた仕事にまったく自信を持っていなかった。転職活動を続けていくうち、自信がなくなっていたのだ。

「転職活動を始めた頃は、そんなに自信がないわけではなかったんです。前職の経験をアピールしましたし、大学時代に機械工学を学んでいるので、設計職として活躍できるだけの知識も経験もありました。でも、自分の経験や志望動機を話すと、面接官はことごとく納得してくれませんでした。それどころか『その程度の経験で次の環境に転職するのは気が早いんじゃないの?』と、逆に批判されてしまいました」(芦田さん)。

自分の中では正当性のある理由で転職したにも関わらず、批判的な反応をされたことで、芦田さんは自分が経験してきたことに自信をなくしていく。それからは自分の唯一の強みである、「前職の経験」をアピールすることを避け、「できること(経験したこと)でも、できない」と答えてしまうようになったという。

不採用続きで”アピール不足症候群”に陥る

ヒアリングを進めていくと、新卒の就活のときから、「自信が持てないことをアピールしない」という徴候があったことがわかった。芦田さんは大学時代に留年し、そのことを必要以上に気にしていたのだ。志望職種も第一希望の設計職ではなく、少し就職のハードルが低い施工管理職を選んだ経緯がある。芦田さんには自信がなくなると、アピール(勝負)を避け、消極的な選択肢を選ぶ傾向があったのだ。

「批判されたり、自分のアピールは大した事がないと思われたりしないかと、不安に感じ、アピールすること自体を避けていました。必要以上に恐がってしまうのは、自分の悪い癖でした」(芦田さん)。

そうしたことを自分でつかめなかったことや、退職から半年ほど経過していたこともあり、芦田さんの転職サポートは序盤から苦戦が続く。選考企業からは軒並み低い評価が相次いだ。1社だけ内定が出たが、評価が低かったことで、設計職ではなく、前職と同様の施工管理職での採用。勤務地も北海道という条件だ。迷った挙句、「施工管理として再就職しても前職と同じように休日出勤が続くのではないか」という結論となり、内定を辞退した。

不採用続きの第二新卒は、このようにして“アピール不足症候群”に陥りやすい。そこで「武器となる経験(アピール材料)」の「伝え方」をアドバイスした。

まず、「その程度の経験で凄いと思ってるの?」と面接官に批判された件では、自分が経験したことの「凄さ」をアピールし過ぎたのではと考えた。そこで、自分の経験を凄いこととして強調するのではなく、単純に経験してきた「事実」として、控えめにアピールしていくよう提案した。武器となる経験(アピール材料)の、“伝え方”を変えたことで、芦田さんの転職活動は好転する。

「転職活動がうまくいき始めたのは、ちゃんと『自分ができること』を『できる』と言い出してからだったと思います」。そして臨んだ面接で、自分がやってきたことを話すと、面接官は、その話にものすごく喰いついてきて、話が盛り上がったまま終わったという。

「その場で次の面接も決まって、前職経験も活かしつつ、設計の仕事ができるポジションで選考が進んでいきました。何で今まで前職の話を避けていたのかと後悔したくらいです」(芦田さん)。

選考は無事に進み、芦田さんの“武器”を認めてくれた、現在勤めている会社に入社することになった。

「今の仕事では、施工管理の仕事もありますが、評価試験、保守・メンテナンスなど、ものづくり全般に関わっており、志望していた設計の仕事もできています。面接の時に前職の仕事の話に喰いついた理由も、実際に仕事をしているとよくわかります」(同)。

前職の経験をきちんと活かすこと

今の仕事は休日出勤もほとんどなく、11月の残業時間は20時間、10月はわずか3時間程度だったという。希望していた設計の仕事を担当できたばかりか、ほかの仕事も幅広く経験することができ、前職でもやっていた施工管理の仕事も部分的にあるので、その経験も活かすことができている。

芦田さんの転職は、結果として、ワークライフバランスを整えるという点も満たしつつ、設計の仕事にキャリアアップを果たすことができた。ただ、このようにキャリアアップできる転職は、意外と珍しい。

その理由は、前職の労働環境に不満を持っていると、いままでと違う仕事に転職しようとするからだ。すると、いままでやってきた仕事と、まったく別の仕事をすることになる。それだと、前職で培った知識やスキルを活かすことができず、さらに給与条件も下がってしまう。

第二新卒が転職によってキャリアアップを目指すのであれば、今回の芦田さんのケースのように、前職でやってきたことを「活かす」ことをお勧めしたい。その場合は、経験(アピール材料)は、相手に合わせた“伝え方”を意識したほうがいいだろう。