ドコモ、au、ソフトバンク3大キャリアの「格安SIMに行かせない」 2017年の大手携帯電話事業者の思惑と闘いを振り返る

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2017年も間もなく終わります。
今年もモバイル業界は大きなニュースが多く世間を賑わしました。

今回は、その中でも多くの人にとって身近な大手携帯電話事業者三社であるNTTドコモ、au、SoftBankの2017年について振り返っていきます。


○NTTドコモ 格安SIM対抗を進める新サービス
NTTドコモの大きな発表といえば「docomo with」と「シンプルプラン」のふたつでしょう。


最安は280円から利用できるシンプルプランとdocomo withの組み合わせはインパクト大


2014年に導入した「カケホーダイ・パケあえる」こと、家族でデータ容量をシェアする「シェアパック」や、2015年にスタートした「ドコモ光」など、NTTドコモはこの数年間の間に囲い込みとも言える新料金、新サービスを多数リリースしています。

その中でも「docomo with」は、シェアパックに変更し、対象機種を購入し使い続ける限り「ずっと、毎月1,500円割引」という大盤振る舞いの料金プランで、ほぼ同時期に発表された「シンプルプラン」と組み合わせることで、最安280円の月額でNTTドコモのスマートフォンを利用できるようになりました。

280円という安さは格安SIM(MVNO)を脅かす価格であり、対象機種の性能・機能も必要十分なものであったことから、導入から半年で100万契約を達成するほど。

とくに現在もフィーチャーフォンを利用しているユーザーで、スマートフォンへの買い替えで月額があがることを敬遠していたユーザーや、フィーチャーフォンでは恩恵の少ないシェアプランへの変更を躊躇っていたユーザーにdocomo withやシンプルプランは大きく響きました。
このプランへの変更を行うことで、NTTドコモからすれば「他社へ流出を防ぐ」効果も大きく、2017年は長期利用者向けの割引サービスの拡充と、同割引の2018年以降の刷新を発表するなど、既存ユーザーに「今後もNTTドコモを使ってもらう、選んでもらう」取組がハッキリと出る一年だったと言えるでしょう。

○au 新サービスと新プランで選べる格安プラン導入
auも2017年は新プラン、新サービスを投入し、今までと違う買い方、選び方が立ち上がった印象的な一年だったと言えます。


イチキュッパ(1,980円)と格安SIMを意識した料金設定で登場したauピタットプラン


2017年7月に発表された「auピタットプラン」は、条件を満たした場合は格安SIM並の月額料金である「1,980円」でスマートフォンが利用できるプランとして大きく注目を集めました。
もちろん、この金額を打ち出す背景には「格安SIM」へのユーザーの流出を防ぎたいという意図があるのですが、中でも同社のサブブランドとも言われている「UQ mobile」への流出も多く、グループ内でユーザーを奪い合う状況をストップさせたいというものがあります。

その結果が出たと、今時点ではまだハッキリとは言えないものの、auピタットプラン、そして同時に発表されたauフラットプランを契約するユーザーは11月中頃に300万契約を突破しています。

ただし、auピタットプラン、auフラットプランは従来、新しい携帯電話・スマートフォンの購入時に付与されていた「毎月割」という購入補助割引が適用されず、従来通り24回払いの分割で購入をした場合、これまでの料金プランを選択した場合よりも月額が高くなってしまいます。
そこで、新たに48回払いを設定し、24ヶ月以上の利用で残り半分の支払いを免除、機種変更を容易に行える「アップグレードプログラムEX」も導入されました。

通信料と端末代金をハッキリと離別させた新料金プランの投入は販売現場を混乱させたと評される一方、業界として向かうべき方向性として求められているものを真摯に導入したとも言えますので、auの2017年の取組は、2018年以降の結果、動きに注視したいところです。

○SoftBank 格安対応より大容量プランでの満足度アップ
NTTドコモ、auと比較すると、2017年のSoftBankは大人しかったと言えます。

サービス面での大きな変化は「ウルトラギガモンスター」という、新しいデータパックの導入がありました。


50GBの大容量を今までより安く、家族で利用ならさらに値引くウルトラギガモンスターが登場


スマートフォンの高性能化、サービスの拡充に伴い「ギガが足りない」という言葉が当たり前に使われる通り、スマートフォンの利用者からは「契約プランのデータ容量不足」「通信速度の制限」への不満が大きくなってきました。
そこで近年、従来と同額でより大きな通信容量が使えるデータ単価の安い格安SIMへのりかえる動きも活発化しています。

SoftBankが2017年に導入した「ウルトラギガモンスター」は、従来よりも大容量となる「50GB」を毎月利用できるプランです。
同プランを利用する家族が多ければ割引額が大きくなり、今までと月額料金が据え置きでも、より大きな通信量が利用できるといった内容になっています。

家族4人以上と割引額が最大になる敷居も低いのも特徴で、一つの大きな容量を分け合う「シェアパック」よりも、一人一人が利用できるデータ容量が大きく、割安に済ませられるため、データ容量を重視するユーザーが一人でも家族にいれば、今までよりも通信量が安くなる可能性があるプランといえます。

ただ、同社の新サービスはNTTドコモ、auに比べ「格安SIM」に対抗するような、「安さ」がわかりづらかったのは事実。

実際、ウルトラギガモンスターに対する高評価や話題をあまり見かけることが少ない印象です。
一方、SoftBankは格安SIMサービスとしては「Ymobile」を展開しており、こちらが市場でも高評価で勢いのある会社、サービスとして認知されています。

SoftBankのメリットは、
NTTドコモやauのように「他社」で格安SIMを提供する会社があるのではなく、ひとつの会社で従来品質・サービス内容のキャリアサービスと、格安SIMのふたつのサービスを提供している唯一の事業者という点でしょう。

Ymobileが好調な影に隠れて、SoftBankの取組が弱く見えてしまったのかもしれません。
ただ実情は、Ymobile以上に充実したサービスをSoftBankも提供していることは変わりません。

YmobileからSoftBankへの移行は各種手数料が無料、通信料も割引も実施されていることから、SoftBankとしては、格安SIMへ移行したいユーザーをYmobileでキャッチして、速度や容量に不満を感じるユーザーが大手事業者に戻したいと考えているとも見えます。

最安で最良の選択肢としてSoftBankがあるという、二重の受け皿を今年一年で整備したと考えてもいいかもしれません。


こうして見ると、各社の2017年は「格安SIMに行かせない」ための取組が目立つ一年といえるでしょう。

高性能な機種を取りそろえる一方で本体価格が高騰したため、ユーザー負担を減らし購入しやすい仕組みを整えるなど、月額料金の安さやその内容だけでなく、端末も含めた「お買い得感」を打ち出してきています。

これから訪れる学割商戦、新生活商戦期に向け、三社の2017年の取組の成果が出てくるかにも大注目です。


迎 悟