年末企画:藤原奈緒の「2017年 年間ベストドラマTOP10」 “悪役のいないユートピア”の物語が愛された

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 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は地上波および配信で発表された作品から10タイトルを選出。第14回の選者は、今年ドラマに関する記事を数多く執筆したライターの藤原奈緒。(編集部)

1.『カルテット』(TBS)2.『おんな城主 直虎』(NHK)3.『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK)4.『過保護のカホコ』(日本テレビ)5.『ひよっこ』(NHK)6.『監獄のお姫さま』(TBS)7.『やすらぎの郷』(テレビ朝日)8.『刑事ゆがみ』(フジテレビ)9.『セトウツミ』(テレビ東京)10.『予兆 散歩する侵略者』(WOWOW)

 個人的に惹かれたものが中心になってしまうが、主に脚本部分に注目し、2017年放送ドラマにおいて興味深かったものを羅列させていただいた。

 まず、坂元裕二脚本による『カルテット』。繊細で優しい一つひとつの台詞と物語の完成度の高さは、ロマンスとしてもサスペンスとしても秀逸だった。特に高橋一生、吉岡里帆の人気を決定づけた作品であることも特筆すべきだ。

 続いて『おんな城主 直虎』は、森下佳子の脚本。ユニークなのはサブタイトルだけでなく、その物語構造はあらゆるジャンルを越え、枠にはまらない面白さがあった。

参考:龍雲丸は“もうひとりの直虎”だったーー『おんな城主 直虎』全50回を振り返る

 井上由美子脚本の『お母さん、娘をやめていいですか?』。斉藤由貴の狂気の「毒母」の演技は圧巻だった。また、母娘の戦いは、『昼顔』などで井上が描いてきた女の情念そのものである。

 『過保護のカホコ』はいつもの毒よりも純粋さが際立つ遊川和彦脚本。今話題の過干渉の母親と娘を違った角度で描いた。竹内涼真は『過保護のカホコ』と『陸王』によってその人気を磐石なものにしたと言える。

 岡田恵和の朝ドラ『ひよっこ』は、懐かしさと斬新さが光った。愛すべき傷ついた人々が懸命に明るく生きようとする戦後史は時に優しく時に核心をつき、現代へと繋げていた。

 宮藤官九郎の『監獄のお姫さま』は、嬉々として「おばちゃん」を演じる女優たちの「わちゃわちゃ」と、最終回に向けてパズルのピースがはまっていくことの心地よさがたまらない。

 『刑事ゆがみ』は、切なさの連鎖が主人公へと向かう最後の2話が衝撃的だった。『セトウツミ』は、特に6話「バツとテリー」の、江口のりこが声を務めるネコ含め、それぞれの一方的な独白による混沌状態が限界点に達し、やがて収束する見事さ。終盤の展開も息を呑んだ。

 夏帆主演の『予兆 散歩する侵略者』はどうしても加えたかった黒沢清監督作品。東出昌大演じる侵略者は、映画『CURE』における萩原聖人を彷彿とさせる。

 今年のドラマの傾向は“毒母”、“不倫”、“女性のために戦う女性像”などのフレーズが挙げられるが、なにより“悪役のいないユートピア”の物語が多く、視聴者に愛されたように思う。だが、その傾向だけではなく、倉本聰『やすらぎの郷』のユートピアたる象徴のような松岡茉優演じる「ハッピーちゃん」が不自然なほどにある日突然貶められたように、ドキリとさせられる展開も多かった。

 さて、来年はどんなドラマに出会えるか、楽しみである。

(藤原奈緒)