フジテレビの月9ドラマ『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』12月25日放送の最終回が、平均視聴率4.6%で幕を閉じた。また、同じくフジテレビの木曜劇場『刑事ゆがみ』12月15日放送の最終回は平均視聴率6.6%、関西テレビ制作のフジテレビ系火曜21時枠『明日の約束』12月19日放送の最終回は平均視聴率5.9%をそれぞれ記録している。前シーズンに月9枠で放送された『コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜THE THIRD SEASON』の最終回が16.4%と好調だったこともあり、今シーズンの落ち込みが目立つ。(ビデオリサーチ調べ 関東地区)

 一方、熱心なテレビドラマファンには、今期のフジドラマの内容を評価する向きもある。ドラマ評論家の成馬零一氏もそのひとりだ。

「『民衆の敵』は、いま人気の高橋一生がシャワーシーンを披露したり、風俗嬢と交際したりと、一見すると安直な方法で話題作りを行っているような印象もありましたが、後半になるに連れてそうした設定が深みを持つようになる秀逸な脚本でした。『刑事ゆがみ』もまた、映画俳優のイメージが強い浅野忠信を主演に迎え、これまでにないスタイルの刑事ドラマに仕上げた意欲作で、コアなファンが付いた作品です。関西テレビが制作している『明日の約束』も、“毒親”を題材にしたハードな社会派ドラマで見応えがありました。10年代のフジドラマは低視聴率から不調に見られがちですが、実は作品単位で見ると作家性が際立っていたり、社会性に富んでいる作品が多く、その質は決して低くはありません。たとえば近年では、坂元裕二が脚本を手がけた『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016年)や、大ヒットした今期の『コード・ブルー』と同じく安達奈緒子が脚本を手がけた『リッチマン、プアウーマン』(2012年)などは、良質な作品だったと思います。今期の『コード・ブルー』には賛否両論があったものの、大人の女性が仕事と恋愛にどう向き合うかという現代的なテーマを内包していて、評価できる内容でした」

 ドラマそのものの質の良さが、視聴率に繋がりにくいのはなぜだろうか。

「作り手側の意識と、その宣伝の仕方がマッチしていないのではないかと考えています。たとえば今期の『民衆の敵』はしっかりとした作りの硬派な作品なのに、宣伝のイメージからはそれが伝わってこない。フジテレビの良いところは新しい才能に対して門戸が広いところで、意欲のある作り手も集まっているのですが、彼らがどんな層に向けてどういう表現をしているのかまでは、十分に周知されているとは言い難い状況です。その点、たとえばTBSの火曜ドラマは作品の方向性と宣伝の仕方がマッチしていて、ちゃんと届けるべき人に届いている。『カルテット』にせよ、『監獄のお姫さま』にせよ、視聴率はそこそこですが熱心なファンを獲得することに成功しています。テレビ朝日もその辺りは上手で、『ドクターX 〜外科医・大門未知子〜』や『やすらぎの郷』などのヒット作は、どんな層に向けて作っているのかが明確です」

 フジテレビは今後、どのような方向性を目指すべきなのか。

「もし今後も幅広い層に向けてライトな宣伝をしていくのであれば、作品自体も敷居を下げて、気軽に観られるものにシフトしていくというやり方もありますが、せっかく意欲的な作品を生み出しているのだから、木曜劇場などが本来持っていたブランド力を再び高めていってほしいです。木曜劇場は、『最高の離婚』(2013年)や『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(2014年)、『問題のあるレストラン』(2015年)といった社会性の高い大人向け作品を多く生み出してきた枠で、つい最近までドラマ好きが注目していました。視聴者の高齢化にともない、内容やテーマが変化していくのは仕方がありませんが、いま挙げた3作品はターゲットを30〜40代の女性に絞っているからこそ生まれた良作です。“この枠ではこういう層に向けて、こういう作品をやっている”というイメージを改めて確立して、それに見合った宣伝をすれば、ちゃんと届けるべき人に届くはずですし、一定の視聴率は獲得できるのでは。おのずと内容についても正当に評価されるでしょう」(松田広宣)