ピンとこなかった相手を大好きになり成婚した。そんな事例とは?(写真:xiangtao / PIXTA)

「なんかピンとこないんですよね」

「今日のお見合いは、どうでしたか?」と会員たちに結果をたずねたときに、よく返ってくる言葉だ。

この「ピン」とは、何か? 理屈ではなく出会った瞬間に感じる直感のようなものなのだろう。先日お見合いした女性会員(37歳)は、「今までしてきたお見合の中で、いちばんピンときました!」と、声を弾ませて連絡をしてきたのだが、「ピンときた」と答える会員は希有で、9割方が、「ピンとこなかった」という。

それは、さもありなん。そもそもお見合いで“ピンとくる”相手に出会うことが難しいのだ。お見合いは、直感を働かせることがもっとも難しい出会い。見知らぬ人の場合、出会ったときの第一印象が、相手の最初の情報となる。そこに働くのは“直感”だろう。そして、時間を重ねていきながら相手のことを知っていく。

お見合いは直感を働かせることが難しい


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ところがお見合いの場合は、顔写真や身長、体重、仕事、年収、趣味など、相手のおおまかな情報を身上書で知り、その条件に納得した相手に会いに行く。すでに情報を知ったうえで会いに行くのだから、第六感のような直感を働かせるのは難しい。

情報をあらかじめ仕入れていると直感が働くどころか、情報と目の前の相手をすり合わせ、ジャッジをしてしまう。「写真はかなり修正していたな。可愛くない」「身長も体重もサバ読んでるよな」「写真に写っているよりも髪の毛が薄い」「えっ、お茶代が割り勘? 年収はあるのに、実はケチかも」などなど。加点法で見るのではなく減点法で見てしまうのだ。

仲人をしてきた経験則からいえば、お見合いにおいて、「ピンときた」「ピンとこなかった」という直感ほど、あてにならないものはない。前出の「今までお見合いしてきた中で、いちばんピンときました!」と言っていた会員女性の交際は、2カ月弱で終わった。逆に、最初は「ピンとこなかった」けれど、時間を重ねていくうちに相手のよさを見いだし、成婚にいたった例もある。

今回は、ピンとこなかった相手を大好きになり成婚した、そんな事例をご紹介しよう。

「私、12月までには、絶対に結婚を決めたいんです!!」

6月下旬に面談にやってきた山田彩子(37歳、仮名)は、切羽詰まったような顔で言った。聞けば5月には大手の結婚情報サービスセンターにも入会し、そちらでも婚活しているという。

「今入っているところは、まず掲示板でやり取りをしてから2人が会うので、会うまでに時間がかかる。あと“お断り”のボタンを、自分で操作するから、連絡が遠のいたときに、どのタイミングで“お断り”をしたらいいのかわからない。そこが主催する婚活パーティにも毎週出ているんですが、カップルになっても、その後が続かない。もう時間がないので、もう1つ仲人型の結婚相談所にも入ろうと、今日はこちらに来ました」

なぜ、彩子はこんなにも結婚をあせっているのか?

「結婚しないと、東京の本社から大阪支社への転勤を命じられそうなんです。今の部署だと独身で自由がきくのは私だけ。それに、もともと私は大阪支社から本社に異動してきたんですね。ただウチの会社は、結婚している女性には転勤がないんです」

彩子は、大手のメーカーで働いていた。熊本出身なのだが、大阪の国立大学を卒業後にプログラマーになり、現在の会社の大阪支社に出向、その仕事ぶりが認められ、そのまま社員となった。その後、念願がかない東京本社に異動になったのだが、ここにきてどうも部内に“年明け早々に誰かが大阪支社に転勤を命じられる”という空気が漂っている。そこにいちばんに該当するのが、独身の自分ではないかというのだ。

「今の仕事にやりがいを感じているので、このまま本社に留まりたい。それに、気がつけば36歳。これまでひたすら仕事をして自分の生活を支えてきたけれど、結婚して子どもも産みたい。ならば、この半年間のうちに結婚する! そうすれば本社にも残れるし、家庭も築ける。私が願っている2つのことが手に入るんです」

この決意のもと、私の相談所での彩子の婚活がスタートすることになった。

1週間に5人から7人のペースでお見合い

登録するや、猛ダッシュの婚活を始めた。来たお申し込みは積極的に受け、自分でもどんどんお申し込みをかけていく。7月から8月半ばまでは、毎週末必ずお見合い。多い日は午前中1人、お昼に1人、午後に1人と1日に3回のお見合いをこなし、ウイークデーでも可能な日は、会社終わりにお見合い。1週間に3人から多いときは7人のペースで会っていった。

「がんばるわね〜」

「はい、この夏は、天王山です。悔いなくやりきります!」

こうして1カ月半のうちに20近いお見合いをし、その中で“断ったり”“断られたり”を繰り返しながら、8月の終わりには、交際相手を4人に絞り込んだ。大手結婚情報センターでお付き合いが続いていた会社員の上田(41歳、仮名)、私の相談所でお見合いした動画作家の富山(38歳、仮名)、公務員の佐藤(42歳、仮名)、IT会社に勤務のSE幸田(37歳、仮名)。

ところが絞り込んだところで緊張の糸が切れたのか、彼女が初めて弱音を吐いた。

「4人選んでみたものの、結婚にとって何が正解で不正解なのか、ここからどの男性を選んだらいいのか、わからなくなってしまいました」

一気に婚活疲れが出たのだろう。そこでこちら側からは、こんなアドバイスをした。

「1週間くらい、婚活のことをまったく考えない期間を作ったらどう? 1度頭の中をカラッポにして、気持ちを真っ白にしてみましょう」

こちらは1週間と提案したのだが、生真面目な彩子はそれを5日間とし、8月後半の土日を挟んで、まったく婚活をしない、婚活のことを考えない時間を作った。交際に入っていた4人の男性たちには、“気持ちを改めて整理するために、これからの5日間はメールのやり取りをお休みさせてください”と申し出たという。

彼女はその5日間に、こんな計画を立てた。
・マツエクに行く。
・スポーツクラブに行く。
・土日は、婚活セミナーに行く。
・渋谷ヒカリエでウインドーショッピング。
・サイゼリヤに行き、予算1000円内でいい感じに酔っ払う。
・さんざん昼寝をする。
・読んでいない本を読破する。

こうして5日間の“休暇”を取ったところ、気持ちがリフレッシュしただけではなく、結果的には4人の男性それぞれの今まで気づかなかった一面を垣間見ることができた。

空白の5日間を経て、見えてきたもの

まず5日間の婚活休止宣言に、公務員の佐藤は憤慨し、相談室を通じて苦言を呈してきた。

「一方的で身勝手ではないか。メールを入れても返さないことを宣言するなんて非礼だ」

彩子はこのときのことをこう振り返る。

「佐藤さんは誠実な方でしたが、とてもプライドが高くて上から目線の物言いが気になっていました。5日間のお休みのことを怒っている様子を見て、もしこの方と結婚したら、私は自由なことができなくなる気がしたんです。動画作家の富山さんは、逆にこの5日間に対して無反応でした。彼は、お会いしてお話しするとユーモアがあって楽しい方なんですが、会う日やデートの場所が決められない。決めるのはいつも私だったので、空白の5日間があっても意に介さなかった。富山さんと結婚したら何から何まで私がやらないと家庭が回らなくなるなって。結婚情報センターで出会った上田さんは、5日間のお休みも理解してくださったし、やさしくてとてもいい方だったんですけど……」

ここまで言うといったん口ごもり、「こんなこと言っていいのかなぁ」と、ひと息おいてから続けた。

「ニオイが……独特の体臭があって。会う度に気になってはいたんでけど、お休み明けに会ったときに、やっぱりこのニオイは受け入れられないと思ったんですよ」

ニオイについては、ほかの会員からもよく聞く話だ。多かれ少なかれ人には体臭があるものだが、「今日お見合いした人は、ちょっと変わったニオイがして、お見合いの1時間が苦痛でした」。

しかし不思議なもので、相手を好きになっていると、逆にそのニオイが愛おしくなる。成婚退会した女性が、結婚後にこんなことを言っていた。「彼が会社に出かけた後に使っていた枕を抱きしめると、彼のニオイがして胸がキュンとなるんです」。

放つニオイは、その人を受け入れられるかどうかの侮れない判断材料となる。

そして、SEの幸田だが、彼にいたっては空白の5日間がプラスに転じた。好感度が上がり、気持ちがぐっと近づいた。まずは、休み明けで会ったときに、こんなサプライズをしてくれたのだ。

「実はその5日間の間に、私の37歳の誕生日があったんですね。食事をしたときに『この間、誕生日だったよね』と言って、シャンパンを頼んでお祝いをしてくれた。 “5日間何も考えずに1人の時間を過ごしたい”と言ったときも、嫌な顔をせずに受け入れてくれた。お見合いのときには、ピンとくる相手ではなかったんですよ。でも、お会いして時間を重ねていくうちに、人を受け入れる許容量の大きさに気づいたし、考え方にも柔軟性があるというのがわかった。あと、声を荒げて怒ったりもしない。こういう人と結婚したら、生活も穏やかで楽しいんじゃないかなって」

こうして彩子は、幸田を選び、そこから3カ月の真剣交際期間を経て、11月には成婚退会をしていった。

「12月までに結婚をする!」という、当初の目標を達成したことになる。

短期間で結婚を決めたいなら、最初は複数と交際する

彩子がなぜ結婚できたのか。まずは、遮二無二がんばる彼女のバイタリティが結婚を引き寄せたことは間違いない。婚活疲れを起こしたときも、腐ることなく、後ろを向くことなく、上手に気分転換をして婚活を再開させた。

またピンとこなかった相手でも、自分が決定的に嫌でなければ、“交際希望”を出し、どんどん会っていったのも、成功のポイントだ。

さらに言うなら、お見合いには、“交際”と“真剣交際”の区分があり、“交際”というのは、食事やデートをして相手を知る期間、“真剣交際”は、付き合う相手を1人に絞って結婚に向かう期間なのだが、“交際”の期間に複数と並行して会い、そこから真剣交際の相手を絞り込んだのもよかった。

もしこれが複数ではなく、1人とだけ交際していたらどうか? 1人がだめになった時点で候補者はゼロになり、スタート地点からのやり直しになる。そのぶん時間もかかる。ところが複数いれば、ダメになってもまだ候補者は残っている。1人がダメになったら、またお見合いをして1人を補充すればいい。

また複数と付き合うことのメリットは、それぞれを比較検討できるところにもある。最初はピンとこなかった相手でも、付き合ってみると意外な長所や居心地のよさを発見することができる。

さらに言うなら、ひとりを好きになりすぎると、自分らしい行動がとれなかったり、相手に対して期待してしまったり、相手が重たいと思う行動をとってしまいがち。そんな相手に振られたら、心のダメージも大きい。立ち直るのに時間がかかる。これが複数と付き合うことで執着が分散できる。それによってより自分らしく振る舞えるし、振られたときのダメージも少なくなる。

ただし、結婚相談所には相談所のルールがあり、交際期間中に男女の関係になることはご法度だ。“男女の関係は成婚とみなす”というルールがあるし、一線を越えると、男性はテンションがいったん下がるのに対し、女性は気持ちが入ってしまう。そこは、仲人としていつも会員に厳しく伝えているところだ。

さて。先日、成婚退会をした彩子が、事務所に遊びにやって来た。

「プロポーズされたときよりも、今のほうがもっと彼を好きなんです。日に日に好きな気持ちがどんどんと積み上げられていく。だから、結婚って完成品を選ぶのではなくて、お互いに作っていくものなんだなって思いました。完成品を探しに行っても、そんなものは存在しない。それが今回の婚活でよくわかりました」

笑顔が幸せそうだった。

おめでとう! あなたのがんばりがつかんだ幸せよ!!