提供:リアルライブ

写真拡大

 新日本プロレスが92年から来年で26年連続(東京ドームでの興行は29年連続)となる、1.4東京ドーム大会『レッスルキングダム12』の前売り券が、ブシロードが2012年1月末に新日本を買収してから初めて開催された2013年の大会以降、最速の売り上げを見せている。関係者の話によると「年内に3万枚を突破したことで、用意したチケットがすべて売り切れる可能性も出てきた」という。

 ブシロード体制になってから、実数発表となり、90年代のような6万人という数字を叩き出すのは難しい状況になっているが、日曜開催で満員マークをつけた2015年の36,000人を超えるのは濃厚で、チケットが完売した場合は札止めで発表されることになる。新日本は次に1月4日が週末となる2020年大会での札止めを目指していただけに、この目標が大きく前倒しされるかもしれない。2019年大会からはしばらく開放されていなかった外野寄りの内野スタンドや、外野スタンドを開放し、動員数を増やしていくことが考えられる。

 昨年1月に主力選手だった中邑真輔をはじめ、複数の選手がアメリカの世界一のプロレス団体WWEへ移籍したことで、一瞬動員が下がった時期もあったものの、入れ替わるかのようにロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンを結成した内藤哲也が台頭。現在は中邑が在籍していた時よりも動員数が上がっているのだ。今回、ドーム大会の前売りが好調なのも、内藤人気がかなりのウェイトを占めているのは確実で、先日、東京スポーツが選定するプロレス大賞のMVPに内藤が2年連続で選ばれたことも追い風になった。

 メインで行われるオカダ・カズチカが持つIWGPヘビー級王座に、真夏の最強決定戦G1クライマックスで優勝した内藤が挑戦するというのは、2013年にも同じシチュエーションで実現したカード。しかし、当時立場が不透明だった内藤はファンから全く支持されず、新日本も中邑にライバル棚橋弘至が挑戦するIWGPインターコンチネンタル王座に挑戦する試合と、ファンにどちらがメインで行われるのが相応しいのか問いたいと、ファン投票を実施。結果、オカダ対内藤はダブルメインイベント第1試合に降格している。

 この時の苦い経験が現在の内藤の原動力に繋がっているのは言うまでもない。しかし、この時に悔しい思いをしたのは、チャンピオンとして誰が相手でもドームのメインを守れなかったオカダも同じ。内藤人気が爆発する一方、オカダはケニー・オメガ、鈴木みのる、柴田勝頼らと命を削るような防衛戦を続けることで、超人ぶりを発揮してきた。特にケニーとは1.4ドーム大会で46分を超える死闘を制し、6.11大阪城ホール大会では60分フルタイムドロー、G1の公式戦で行われた8.12両国国技館大会では接戦の末敗れている。その翌日の決勝戦でケニーをG1史上最長の試合タイムで破り優勝し、ドームメインの切符を手に入れたのが内藤である。前哨戦の内容を見ていても内藤は勝敗に関わらず、余裕を見せているだけに、現状は挑戦者の内藤が優位に立っていると思わざるを得ない。ただ、今年1年間の防衛戦でオカダから底知れぬ強さを感じたのは誰もが認めるところ。勢いが強さを超えるのか?強さが勢いを阻むのか?死闘は避けられない一戦だ。

 ダブルメインイベント第1試合では、現在もWWEの主要ブランド、スマックダウンのHPに“掲載”されている(本人は「現在の契約はフリーだが(WWE会長の)ビンス・マクマホンには話した」とのこと)クリス・ジェリコが、カナダの同郷後輩レスラー、ケニー・オメガが保持するIWGP USヘビー級王座に挑戦する。ジェリコは日本マット(天龍源一郎さんの団体WARが主戦場だった)で育ち、アメリカでスーパースターになった選手なので、WWEの日本公演には毎回のように凱旋。今年も来日し、ヒデオ・イタミ(元ノアのKENTA)とのシングルマッチを難なく制している。一方のケニーは前述のように、今年はオカダと3度に渡る死闘を繰り広げ、G1決勝では敗れはしたが、内藤とギリギリの試合を行い、レスラーとしてステータスを高めている。ジェリコの新日本参戦が発表されると、ストリーミング配信サイト新日本プロレスワールドへ登録するファンも世界中から殺到しているそうで、新日本プロレスがWWEに続くプロレスカンパニーとして、世界にアピールするには十分過ぎるカードと言ってもいいだろう。この試合はあらゆる反則が認められるノーDQマッチで行われるのもポイント。ジェリコとケニーがニューヨークやカナダの空気感を東京で体感させてくれるはずだ。

 アンダーカードでは、メインやセミファイナルから久々に降格した棚橋が、ジェイ・ホワイトの凱旋マッチの相手を務める。IWGPインターコンチ王座を賭けての闘いなだけに負けは許されないが、まだどのユニットに属するかも判明していないホワイトが何処まで成長しているのかは不透明で不気味。2012年に凱旋帰国していきなり棚橋を破り、IWGPヘビー級王者に輝いたオカダのような雰囲気を感じる。棚橋は2年連続でドームの試合を勝ててないこともあり、ここはスカッと勝ちたいところだが…。

 今回のドーム大会は、CS(第0試合を除く)とストリーミング配信で完全生中継。テレビ朝日と一部の系列局では、当日の深夜に特番が放送される。年末は格闘技、年始はプロレスを楽しむ文化の再来を期待したい。

取材・文 / どら増田
カメラマン / 舩橋諄