ワールドシリーズMVPに選出されるなど輝かしい実績を残した松井秀喜氏【写真:Getty Images】

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同時期に活躍したハフ氏と比較、「彼らは似た者同士」も…

 ワールドシリーズMVPに選出されるなど輝かしい実績を残し、2012年限りで現役を引退した松井秀喜氏は、今年初めて米国野球殿堂入りの候補者となった。日本人メジャーリーガーのパイオニアである野茂英雄氏も2013年末に有資格者となりながら、得票率1.1%(6票)で資格継続条件の「5%」に達することなく、翌年の候補から漏れた。有資格1年目となる「ゴジラ」の殿堂入りは極めて厳しいと見られ、この「5%」に達するかがポイントとなるが、MLB公式サイトは特集で「クーパーズタウン行き」は決して非現実的ではないと主張している。

 記事では、同じく今年始めて殿堂候補となったオーブリー・ハフ氏と松井氏を比較。松井氏はメジャー2年目となる2004年に打率.298、31本塁打、108打点を記録したのに対して、ハフ氏はレイズで打率.297、29本塁打、104打点だったことを振り返っている。

 そして、「彼らは似た者同士だ」と指摘。「ハフは13年のキャリアで長打率.464、マツイは.462だった。ハフの打率は.278でありメジャーキャリア終了時のWARは20.2だった。マツイは打率.282、キャリア終了時のWARは21.3だ」。確かに成績も似通っており、「彼らの長所(パワーがあり三振が少ない)と短所(スピードに欠けており平均以下の守備)はほとんど同じだった」とも付け加えている。

 ハフ氏は、松井氏がヤンキースで世界一を勝ち取った翌年の2010年にジャイアンツでワールドシリーズ制覇を経験。2年後の2012年も世界一に輝いた。キャリア終盤で悲願を達成したという点でも、2人は似ている。

 ただ、2人の“育ち”は全く違うと記事では説明。ハフ氏は幼少期に父親を亡くしており、決して裕福な家庭で育ったわけではないこと、薬物依存やギャンブル依存などに陥っていたことも回顧。そして、世界一に輝いた2010年にはジャイアンツで「ちょっとしたカルト・ヒーローになった」とも言及している。

日米の成績を合わせると…「クーパーズタウン行きは現実的」

 一方で、松井氏は幼少期から野球の才能を見せ、18歳で巨人デビューを飾ったこと、4年目の1996年にMVPに輝いたこと、そしてスター選手として日本で偉大なキャリアを築いたことを紹介。さらに、「ゴジラ」のニックネームで人気者となり、「同時に、これは彼の圧倒的なパワーと日本での存在感を明らかにするものである。彼は並外れた選手というだけではなく、非常に謙虚である。彼はチームに献身した」という事実についても触れている。

 また、記事では、松井氏がMLB行きを決断した理由については、イチロー外野手のメジャー挑戦も動機の1つになったのではないかとした上で「もし、彼が日本に残れば、マツイは野心がなく、世界最高の選手たちを相手に自信を試す勇気がないと人々は言っただろう」とも推測。ただ、対照的な話として「しかし、彼はMLBに行き、日本人の何人かは彼に不誠実のレッテルを貼った」と、巨人からのメジャー挑戦に少なからず批判の声があったことにも言及した。

 その他、松井氏の1年目の成績にイチローほどのインパクトはなかったものの、2年目には打率.298、出塁率.390、長打率.522、31本塁打、109得点、108打点の好成績で、MVP投票では票を獲得したことも回顧。2009年のワールドシリーズMVPをはじめ、メジャー随一の名門球団で日本の強打者が確かなインパクトを残したことは間違いない。その証拠に、現在でもニューヨークでの松井氏の人気は絶大だ。

 記事では最後に「日本と米国での成績を合わせてみると、彼は打率.293、出塁率.381、長打率.521、508本塁打、1500の得点と打点を記録している。クーパーズタウン(殿堂)行きが現実的であることがわかる。日本における野球の象徴であるサダハル・オウは入会していないが、野球はより国際的スポーツになるという考えがある。野球の殿堂もそれに従うだろう」と結論づけている。日米両国での実績を考慮すれば、殿堂入りは決して非現実的ではないというのだ。これは、メジャーでは同じような成績を残したハフ氏との最大の違いと言えるだろう。

 もちろん、投票権を持つ全米野球記者協会の記者は、実際にはほとんどが米国のみの成績で評価するため、松井氏については来季の候補者として残ることも確実とは言えない。ただ、日本からメジャーに渡る選手への見方が、変わってきていることは確かだ。(Full-Count編集部)