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皆様こんにちは、マネックス証券の益嶋です。「目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場」第9回をお届けいたします。本コラムでは、「これから投資を始めたい」「投資を始めてみたけれどなかなかうまくいかない」といった方向けに、投資家としてレベルアップするための色々な知識をお伝えしていきます。今月もまずは最近のマーケット動向を簡単にご紹介します。

○じわじわ回復日本株

前回のコラムが掲載された4月23日時点で日経平均は22,088円でした。今月のコラムを書いている5月17日時点で日経平均は22,838円まで750円ほど上昇しました。この1ヶ月間日本の株式市場は特段大きな下落もなく、じわじわと上昇してきました。4月末から5月中旬にかけて多くの日本企業が決算発表を行いました。

3月に一時ドル円が105円を割り込むなど円高が進んだため、輸出関連企業の多い日本企業の業績が大きく悪化するのではないかとの懸念が広がりましたが、日本企業全体を見ると今期の極端な業績悪化はなさそうでマーケットに安心感が広がっています。それが徐々に株価が上昇してきた一因と言えるでしょう。日経平均が1月23日につけた今年の高値は24,124円で、高値奪回まで残り約1,300円。早く達成してほしいものです……。

○ゴールデンウィークに米国出張してヘッジファンドを訪問

では今月も本題に入っていきましょう。「ヘッジファンド」という言葉を聞いたことがおありでしょうか? ヘッジファンドとは、市場が上昇したとしても下落したとしても「絶対収益」をあげることを目的に運用しているプロの投資家です。ゴールデンウィークに米国に出張した際に、ニューヨークを拠点にアジア株に投資しているヘッジファンドを訪問しました。

ヘッジファンドの中でも日本株を担当しているファンドマネージャー(運用のリーダーだと思ってください)に日本株の見通しや銘柄選定方法などについてお話を聞き、個人投資家の皆様の役にも立つたくさんのフィードバックをいただきましたので一問一答形式でご紹介させていただきます。

○Q1:ファンドが目標としている絶対リターンはありますか?

投資家(資金の出し手)に約束している明確な目標値はないが、毎年二桁のプラスリターンを達成することは意識している。それを達成できない年が複数年続けば投資家に見放されてしまうだろう。幸い過去6年で年平均10数%のネットリターン(注、手数料控除後)を達成することができている。日経平均やS&P500の上昇率からすると物足りなく感じるかもしれないが、我々のファンドは平均すると6割ロング(買い)4割ショート(売り)というところなので、ショートを含めてこの数字が達成できていることはまずまずの成績ではないか。

○Q2:アベノミクスについての総合的な評価を教えてください。

日本経済や日本のマーケットに与えたマグニチュードはかなり大きいと考えている。特に評価しているのが、コーポレート・ガバナンス改革だ。日本企業に構造的変化を求めたものであり、例えば仮に安倍政権が退陣したとしても独立した社外取締役の起用が求められる流れは変わらないだろう。

○Q3:足元の日本株全体の見通しを教えてください。

為替レートが横ばい圏で推移する前提に立てば、今年の年末の株価は今よりも上昇していると考えている。理由としては日本企業の業績がしっかりしていること、また日銀のETF買いインパクトが大きいことが挙げられる。例えば米大統領戦を控えていた2016年1月から10月までに外国人投資家は日本株を約6兆円売り越した。これは金額としては十数年ぶりの規模だった。しかし、現在日銀は1年間で6兆円程度ETFを購入することを表明しており、外国人投資家の十数年ぶりの売りを日銀が吸収できたことになる。これは日本株にフロアー(床、大底)があるようなものである。下値が堅いならば、当然上方向に行きやすいと考えられるだろう。

○Q4:現在日本では安倍政権の支持率が低迷しています。もし仮に安倍政権が退陣することがあれば、マーケットにどのような影響があると考えていますか?

「アベノミクス」というワードを知っている外国人投資家が「アベグジット」を嫌気して一旦売りに回るので、10%〜20%程度下げてもおかしくないだろう。ただ、既に「アベノミクス」は外国人投資家の間でホットな話題ではない。

アベノミクスが始まって数年間は確かに注目されていたが、現在は外国人投資家とミーティングしてもこちらから「アベノミクスでコーポレート・ガバナンスが改善された」などの話をしない限りほとんど話題に出ることもない印象だ。自民党政権が継続するならば、急激に日銀の金融緩和スタンスが変わる可能性も低いだろうし、下げたところは良い買い時になると思う。ただ、日本株全体(インデックス)を買いたいわけではなく、あくまで優良企業の安値を拾いたいというスタンスだ。

○Q5:銘柄をロングする(買う)・ショートする(売る)ときの選定方法を教えてください。

ある程度流動性がある企業のうち200〜300社程度をウォッチしている。決算短信や有価証券報告書から業績や財務を分析し、収支予想モデルを作成して割高・割安株を探している。良く投資家に対して話すのは、4つのものを求めているということだ。その4つとは、「構造的変化」「市場の勘違い」「カタリスト(きっかけ)」「バリュエーション」である。

まず、「構造的変化」とは例えば「インバウンド」や「高齢化」といったものだ。これらは景気動向や日銀のスタンスにかかわらず継続すると思われる事象だ。構造的な変化の中での勝者、敗者を探している。

続いて2つ目が「市場の勘違い」だ。例えば「これから中国経済が大きく成長する」という仮説を元に、「中国でビジネスをやっている企業は儲かる! 」という予想がたち「中国関連企業」が一斉に上昇するようなことがある。ただ、それぞれの銘柄を分析していくと本当に中国で成功して成長していけそうな会社と、実際は成長できなさそうな銘柄が混在しているものだ。我々は中国株を分析する部隊もいるので、協力しながら本当に成功しそうな企業とそうでない企業を見極めていく。

3つ目が「カタリスト(きっかけ)」である。我々が正しいと思うシナリオ持ってポジションを取っていたとしても、我々の投資家は我々の毎年のリターンを気にしているため、1-2年程度のうちにそのシナリオが実現しないと意味はない。そのため、「決算発表」「自社株買い」「M&A」など何かしらのきっかけが一定期間内に実現し株価の反転材料となりそうな銘柄を探している。

そして4つ目が「バリュエーション」である。どのような銘柄であろうとも、一般論として予想PERが30倍を超えてくるとなかなか買いづらい。当然だが我々はインサイダー情報を持っているわけではなく、できる限り「安く買って」「高く売りたい」というスタンスだ。魅力的な企業だが、PERが35倍で高くて買えない…… というような場合にはもっと割安な企業を探すということになる。もしくは、アベグジットで市場全体が暴落したときに買う、なんてこともあるかもしれない。

いかがだったでしょうか。日本株の見通しから個別銘柄の選び方まで多岐にわたる質問をしましたが、どの質問に対しても誠実に丁寧に、そしてとてもロジカルに回答いただきました。私のような金融機関のアナリストでも本場ニューヨークのヘッジファンドの方とお話する機会はほとんどありません。

今回様々なお話をお聞きできとても貴重な時間を過ごすことができました。お聞きしたマーケットの見通しや銘柄選びの方法が皆様の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。ではまた次回!

○執筆者プロフィール : 益嶋 裕

マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。■マネックス証券:https://www.monex.co.jp/