洛南の大橋大空【写真:平野貴也】

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ずっと思い描いた夢…涙で敗戦の大橋大空が明かした米国挑戦の理由

 小さな体から、どこまでもエネルギーが溢れていた。攻めても守っても、よく走る。プレーが止まれば、口からマシンガンのように言葉を発する。自分に言い聞かせる言葉、仲間に言い聞かせる言葉、スタンドに向かって叫ぶ言葉……。どのメッセージにも熱い気持ちが込められていた。3点差で敗戦寸前まで追い込まれても「大丈夫! あと2秒ある!」と仲間を勇気付け、最後の最後まで戦い抜いた。けいれんで足が疲労していることに気付いたのは、試合が終わった後だった。

 ウインターカップ2017第70回全国高校バスケットボール選手権大会は26日に東京体育館で第4日を行い、男子の洛南(京都)は、59-62で明成(インターハイ準優勝=宮城)に敗れて3回戦で姿を消した。

 洛南のポイントガード(PG)である大橋大空は、フルタイムを走り抜いて、17得点を挙げた。ただ、得点よりも、声をかけて周りを動かし、鼓舞し続けた姿が印象に残った。試合後のベンチでは自分を殴るような仕草をして涙を流していたが、負けた悔しさと、主将としてチームを勝利に導けなかった腹立たしさは、ロッカーに置いて来たのだろう。

 大橋は、少し意識した明るい声で「第1ピリオドから接戦で均衡していて、レベルは互角だったと思う。どこで負けたのかは分からない。誰かのせいではない。リバウンドやルーズボール、どこかで気持ちが弱くなった部分が、最後の3点差になったのかなと思う。でも、みんな本当に良くやってくれたので、良かったと思います」と試合を振り返った。試合ですべてを出し切れる選手だ。

 ドリブルをして、相手をかわして点を取って喜ぶ。どこにでもいるバスケット小僧の素地に、洛南で磨いたゲームメークが乗っかり、高校世代で注目されるガードに成長した。鋭いドライブでゴール下に相手を引き寄せ、鮮やかなパスで味方の得点を誘う。ライバルの東山(前回準優勝)との混成で構成された京都府チームで臨んだ国民体育大会は、優勝。集大成の場となるウインターカップでもう一度日本一を狙ったが、今度は届かなかった。上には上がいるものだ。彼よりも身体能力に優れた選手、技術に秀でた選手も探せばいる。

 その中で、大橋は大きな夢に挑戦しようとしている。希望進路は、米国だ。

憧れはクリス・ポール…165センチが持つ夢に全力で突き進む力

 現地でプレーを見てもらい、NCAAを目指す。身長は、165センチ。日本でも小柄な彼が、身長190センチでも大きくはないと言われる本場に挑むのは、容易ではない。しかし、大橋は高校入学時から、ずっと米国挑戦を夢見てきた。

 大橋は「中学生の頃、知り合いを頼って米国に行ってバスケットをさせてもらったんですけど、結構やれるなと感じました。それに、向こうの人はとても楽しそうにバスケットをしていて、その中でプレーするのが本当に楽しかったんです。その雰囲気にハマってしまいました。それで中学のときに2回行って、あとは洛南の遠征でも行きました」とまくしたてるような早口で渡米の理由を説明した。

 またエネルギーが溢れてきた。憧れの選手は、NBAのロケッツで活躍するクリス・ポール。視野が広い上に得点力も兼ね備えたガードで、大橋も平均20得点ができる選手を目指しているという。

 米国で活躍するには、明らかに小さい。得点力も課題だ。しかし、夢に向かうときに必要なのは、能力だけではない。夢を描いたら全力で突き進む力も必要だ。大橋は、少なくとも後者の条件を満たしている。

「大きい空のように、大きな人間になる、大きく育つという意味で大空(ひろたか)という名前を付けられたんですけど、僕、全然大きく育たなかったので、名前負けしているかなと思います。ワハハハ」

 関西人らしい明るさで、敗戦の暗いムードを消して進むくらい、大橋はたくましい。ウインターカップで名勝負を繰り広げた小さなガードは、日本という島から溢れるほどのエネルギーで海の向こうに挑戦する。(平野貴也 / Takaya Hirano)