「Thinkstock」より

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 成功というのは遥か彼方ではなく、時として薄っぺらな壁の向こう側(=すぐにでも手の届くところ)にあるものです。成功を目指して努力を続けているのに、あるいは難しいノウハウやスキルを身に付けているのに、道が開けてこないと感じている人は、特に意識するとよいことがあります。

 それは「人の役に立つために、自分には何ができるか」「人に満足してもらうには、どうすればいいか」を考え、行動してみることです。こうした視点に立って周囲と接したときに、成功に近づく自分を実感できことは多いものです。

●あいさつや返事の仕方でわかる「成功との距離」

 簡単なことから考察してみましょう。まずは、あいさつや返事の仕方です。もし、あいさつや返事と聞いて、「なんだ、そんなことか……」と思った人は、特によく考えてみてください。

 あなたの職場の人たちを思い浮かべると、好感度の高いあいさつをする人と、(場合によっては)その逆の人がいるのではないでしょうか。意識的に「相手に失礼のないように」「相手の気分が悪くならないように」と考え、普段から気持ちのよいあいさつや返事を習慣にしている人は、どのくらいいるでしょうか。

 筆者が企業の営業部員向けの研修講師をする際に、はじめに最も力を入れるのは、この部分です。顧客にあいさつをするシーンを想定した演習で、顧客より声が小さいような場合には、遠慮なく指摘し、注意することにしています。

 企業の営業部員だけでなく、コンビニエンスストアや販売店で接客をする人にも、電話を受ける係をしている人にも、「どうすれば相手に好感を与えられるか」を十分に考えていない人はいるものです。職場で「身内」と話すとなると、そんなことはまるで考えない人も多いでしょう。筆者の周囲にも、相手をまともに見ることすらなく、スマートフォン(スマホ)の画面を見ながら無愛想なあいさつをするような人は、やはり存在しています。

 誰でも好感度の高い人とは、積極的にかかわりたいと思うのが普通で、そうでなければ避けられがちになるという当たり前のことを忘れないようにしましょう。あなたとかかわりたいという人が増えなければ、成功への道は開きにくいままなのです。

●上司は何を期待しているのか

 人に満足してもらおうと思えば、「相手が何を期待しているか」について考える必要があります。ここでは「上司が何を求めているか」を考えるための例を見てみましょう。

 先日、ある製造企業の技術部長から伺った話があります。新製品の試作を行う技術部では、「見える化」を進めています。仕事の進捗状況をビジュアルに把握できるようにしていますが、たとえば「見える化」に求められる要件の一つである「部品を発注した日」を「見える化」のボードに記載すると、それ以上の詳細は何も報告しない部下がいるのだそうです。

 部長は「部品を注文した」のであれば、入荷の見込みやその日程など、詳細な情報が気になるのですが、部下にはそれがわからないというのです。上司から見ると、部下の仕事ぶりは十分といえるものではなく、信頼しにくいわけです。

 部下は「上司が期待、心配していることは何か」について、もっと想像をめぐらすことが必要でしょう。自分が上司であれば何を知りたいか、部下からどんな報告がほしいかを考えて、行動する必要があります。

 私たちは既存の顧客や見込み客に対しても、同じように想像をめぐらせることで、いっそう受け入れられやすくなっていきます。「自分に何ができるか」「満足してもらうには、どうすればいいか」を考えはじめたときに、より多くのチャンスを与えてもらえるようになるものです。

 たとえば、顧客先の担当者が(当社の取り扱い製品について)自社の会議で話すときに「持っていれば便利な資料があるとすれば何か」といったことを考え、それを作成して渡しておくことが大切なのです。

●悪い見本にならないように注意

「会社のために何ができるか」と考えたときに、たとえば「自分がこんな資格を持っていれば役に立てるかもしれない」と思うこともあるでしょう。その資格を持つことによって、あらたに任せてもらえる仕事も増えるかもしれません。

 資格やスキルについては、自分が組織の中の悪い例とならないように注意が必要です。以前、筆者が勤務していたメーカーの国際部に、外国語学部のドイツ学科を卒業した新入社員が入社してきたことがありました。しかしながら、この新入社員はドイツ語の読み書きはおろか、日常的な会話もまったくすることができず、またそのことをなんとも思っていない様子が、組織の中の悪い見本となっていました。

 会社の役に立つどころか、全体のモラルやレベルを下げる人にならないよう気を付けたいものです。資格やスキルアップについては、地道に努力を続ける人はいるものですから、そういう人たちと付き合うか、自分がそうした模範となるよう取り組みたいところです。

●理不尽な要求は、上手に断ればOK

「上司や顧客の役に立つために」と考えて行動していると、それによって理不尽な状況に追い込まれることがある――このような心配を抱く人も少なくないようです。

 業務の改善提案をしたら「おっ、いいアイディアだな。ぜひやっておいてくれ」と丸投げされるとか、顧客にとって便利と思うものを用意したら、次から当たり前のように要求されるという話は珍しくないからです。これでは上司や顧客にいいように使われるだけと感じても無理はないでしょう。

 しかしながら、ここでは上司や顧客のイエスマンになることを勧めているわけではありません。そうした周囲からの要求に対しては、どのあたりまで対応するのが適切なのか見極め、上手にやっていく必要があります。

 仕事そのものとは別に、日本ではたとえば残業をするのが当然のように考えられている組織が少なくないため、それが習慣になっていることも多いですし、同じ職場の人と飲みに行くようなことも、文化のように存在していることがあります。その場合、そうした残業や付き合いを断り続けるのが大変なこともあるでしょう。

「人の役に立つために何ができるか」を考え行動するにあたっては、こうした(考え方次第では)理不尽に思えることについての対策案を決めて、どこかで線を引いておくことも必要です。

 周囲の言いなりになるのではなく、けじめのある姿勢で仕事にあたるというセルフイメージが大切になることもあります。そうした考えを持っていれば、それを尊重してくれる人も数多く現れてくるものなのです。

「人のために何ができるか」を考えて行動を続けたときには、物事を任せてくれる人や、あなたを信頼してくれる人が増えてくるでしょう。成功が、思っていたよりも近くにあると感じるときが来るはずです。
(文=松崎久純/グローバル人材育成専門家、サイドマン経営代表)