2017年2月に、日本勢の”第1号”として平昌五輪出場を決めたアイスホッケー女子日本代表。12月6日には23人の代表メンバーが発表され、その会見の中で山中武司監督は「目標はメダル獲得」と力強く宣言した。

 山中監督のメンバー選考の基準は”守りが計算できる選手”。出場8カ国のうち、開催国の韓国を除けば、日本の世界ランキング(9位)は最も低い。体格、実力で勝る相手の攻撃を堅い守備で封じ、スピードある攻撃で確実に得点を重ねていくことで表彰台を目指す。


アイスホッケー女子日本代表のGKを務める藤本那菜

 実際に、日本は平昌五輪の最終予選3戦をわずか3失点で全勝し、グループ首位で出場権を手にしている。そんな”スマイルジャパン”の鉄壁の守備を、一番後ろから支えるのがGKの藤本那菜(チーム:ボルテックス札幌、所属:デンソー北海道)だ。

 藤本は、2015年の世界選手権でセーブ率93.75%を記録し、「ベストGK」を受賞。同年10月に産声を上げた、世界初の女子アイスホッケープロリーグ『NWHL(National Women’s Hockey League)』のニューヨーク・リベターズと契約し、日本人初のNWHL選手となった。端正な顔立ちから”美女GK”としても人気を博す藤本は、自らのポジションについて次のように語る。

「『ここで止めてほしい』というところで安定したセーブができれば、チームは波に乗ることができるので、安定感と冷静さが大切だと思っています。キーパーは最終ラインなので、ひとつのミスが試合の勝敗を左右するポジションであり、チーム全体を見渡せる”司令塔”的な役割も担うことになります」

 藤本が”天職”と出会ったのは小学5年生のとき。6歳でアイスホッケーを始め、父から熱血指導を受けながらも芽が出ず、辿り着いたのがGKだった。最後の望みをかけて取り組んだポジションで才能が開花し、17歳で日本代表入りを果たすまでに成長した。

 日本代表の未来を担う選手として期待された藤本だったが、バンクーバー五輪の予選を戦った後、2012年まで代表を離れることになる。

「(代表を離れていた時期は)アイスホッケーから気持ちが離れ、人生自体に迷っていた時期でしたね。大学・大学院で勉学に励んだりしていたので、日本代表活動を辞退していました。気持ちを新たに復帰した年は、試合に出ることなくベンチでサポート役に回りました。チームが(2014年の)ソチ五輪の切符を獲得したのは嬉しかったんですが、選手として(出場権獲得のための)試合でチームに貢献できなかったことが悔しかったです」

 その悔しさをバネに、ソチ五輪の本番には正GKとして全試合に先発出場した。結果は5戦全敗に終わるも、そのうち3試合が1点差での惜敗。当時の飯塚祐司監督が「藤本でなんとかもっている」と発言したように、まさに藤本が”最後の砦”になっていたのだ。


平昌五輪の最終予選でも好セーブでチームを救った藤本

 ソチ五輪後は不動の守護神として日本代表のゴールマウスを守り続けてきた藤本は、来年の3月に29歳を迎える。若い世代の選手の台頭もある中で藤本を支えるのは、アメリカでプレーしていたときにチームメイトにかけられた、「Age is just a number(挑戦に年齢は関係ない)」という言葉だという。

「当時、チームの中では27歳の私が最年長だったんです。10代や20代前半の選手と比べ、体の変化もあって悩むこともありましたが、チームメイトたちは『年齢はただの数字。何かに挑戦するときに気にすることではない。年齢を気にしているのは自分だけだよ』と、笑いながら言ってくれたんです。その言葉のおかげで、変化を受け入れ、自分の目標に向かってチャレンジし続けることが大事だと思えるようになりました」

 そんな藤本の目標は、チームと同様に「メダルを獲ること」。5戦全敗で終わったソチ五輪のリベンジの場でもある平昌五輪に向け、気持ちは高まっている。

「今の代表チームは家族みたいな雰囲気で、このメンバーで戦えることを誇りに思います。私たちは、たくさんのサポートに支えられてここまでこられたので、皆さんに恩返しができるように頑張りたいです」

 グループBに入った”スマイルジャパン”の初戦は、2018の年2月10日。世界ランク5位のスウェーデンとの試合で表彰台への一歩目を刻む。



藤本那菜(ふじもと・なな)

1989年3月3日生まれ、北海道札幌市出身。身長163cm。
2015年にデンソー北海道に入社。6歳よりアイスホッケーを始め、2007年に女子日本代表に初選出される。2015年の世界選手権ではベストGKを受賞。同年7月、世界初の女子プロリーグNWHL(National Women’s Hockey League)のトライアウトに合格し、ニューヨーク・リベターズと契約。日本人初のNWHL選手となる。2014年ソチ五輪に続き、2大会連続で五輪の舞台に挑む。

※本文で使用した藤本選手のインタビューの全文や、応援ムービーなどは以下をチェック

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