Googleがニューヨークのマンハッタンに出店したポップアップストアの内部にある巨大なスノードーム。雪に見立てた白い球体に彩られたスペースは、誰でもなかに入ってポーズをとり、Googleの新型ピクセル2スマートフォンで写真撮影ができる。訪れた人は休日のショッピングを楽しみながら、携帯のカメラを試すことができるのだ。

Googleのポップアップストアは、従来の小売店にエンターテインメントとテクノロジーを融合させた体験型小売店の一例だ。「リテイルテインメント」ともいわれる体験型小売店は、自撮りコーナーやライブイベントにはじまり、アプリ決済やバーチャルリアリティおよび拡張リアリティコンテンツなどのデジタルタッチポイントまで、多岐にわたる。

これはリテールが買い物客を実店舗に呼び込むための取り組みのひとつだ。大手金融機関のクレディスイス(Credit Suisse)の試算によると、今年は約8000のリテールが閉鎖される見込みだ。つまり、リテールは今後ますます、消費者と深い関係性を築くことのできる実店舗を、マーケティングの機会として活用していかなければならない。

以下の5つのチャートは、体験型小売店導入が進んでいる様子をあらわしている。

消費者意識の変化



Amazonをはじめとするeコマースサイトが台頭している現代、消費者のショッピングにはより多くの選択肢が存在する。データ分析会社グローバルデータ(GlobalData)によると、2006年の時点では、25歳未満の支出のうち、76.3%が従来型の伝統的なリテールに向けられていた。それが2016年になると、61.2%にまで低下している。

しかしデータを見ると、機会損失への不安から、いまも消費者がパソコンやスマートフォンを飛び出して、店舗での体験を得るために出かけていることがわかる。2017年7月に全国小売連盟(National Retail Federation)が発表した調査報告書「コンシューマービュー(Consumer View)」によると、消費者が店舗に魅力を感じているのがわかる。これは3002名のミレニアル世代およびZ世代の消費者を対象にした調査に基づいたものだ。2017年7月時点で、調査対象の49%が、以前より店舗を訪れるようになった、と回答している。新しいエンターテインメントや食事のメニューがその理由だ。回答者のほぼ半数が、1年前よりも店舗での買い物回数が増えているという。



Source: National Retail Federation

ポップアップストアの増加



Googleと同様に、ブランド各社は実店舗で体験型小売を導入し、また体験を軸にしたポップアップストアストアを出店するなど、時流に遅れまいとしている。

11月には人形店のアメリカン・ガールは、ニューヨーク市に体験型店舗を立ち上げた。ここは、事前に予約しておけば、少女たちが持参した人形にヘアスタイリングを提供してくれる。シングルデイ(独身の日)には、アリババが中国全土で60軒ものポップアップストアを試験的に出店した。なかでも目玉となったのは、サングラスや化粧品をバーチャルで試着できるデジタルスクリーンや「今見て、すぐ買う」をテーマにファッションショーだ。金融市場を分析するシーキングアルファ(Seeking Alpha)によると、その日アリババの受注件数は8億1200万件、売上総額は過去最高の253億ドル(約2.8兆億円)に及んだという。

今年のホリデーシーズンには、特にこの傾向が顕著に見られる。カルバン・クライン(Calvin Klein)とAmazonファッションのポップアップストアには、Amazon Echo端末を備えた試着室が用意されており、商品に関する質問に答えてくれる。また、ナイキ(Nike)はブラックフライデーに合わせてバスケットボールの試合を開催。オールドネイビー(Old Navy)やホームデポ(Home Depot)、そしてノードストローム(Nordstrom)はパブリッシャーと提携し、美容講座や日曜大工教室など、イベント満載のホリデーポップアップストアをそれぞれ開設する。

市場分析サービスのブランドウォッチ(Brandwatch)は、SNS上でのGoogleとカルバン・クラインとAmazonファッションのポップアップストアについての反応を調査した。ハッシュタグ#GooglePopUpのインプレッション数は2820万回で、95.2%が肯定的な意見だった。カルバンクラインとAmazonファッションについてはSNSで560回話題に上っており、88.9%が肯定的だった。



体験に投資するリテーラー



リテーラーは体験型のマーケティングに投資する意思があるようだ。トレンド追跡会社のPSFKによる報告書「Future of Retail 2018(小売りの将来)」では、調査対象となった400名の小売経営幹部のうち、55%が2020年までにマーケティング予算の一部を店頭体験に費やすことになると回答している。店頭体験は、データ収集および追跡に次いで、投資の優先順位2位に位置付けられ、リテーラーの68%が2020年にその分野に投資すると答えている。



Source: PSFK

ショッピングモールはどうか?



2016年6月から2017年6月にかけて1万2045人に対して出口調査を行い、その結果に基づいてグローバルデータが研究を行ったところ、レストランや施設内エンターテインメント、ポップアップストア、託児所などの付加サービスを提供するモールには、顧客の訪問頻度も高く、また消費金額も多いことがわかった。



Source: GlobalData

店舗の個性的なサービス



どのような店舗体験が消費を促進するのかを知るため、広報およびデジタルマーケティングエージェンシーのウォーカーサンズ(Walker Sands)は2017年3月、アメリカ全土の1622名の消費者を対象に調査を行い、調査報告書「2017 Future of Retail(小売業の将来)」を作成した。実店舗に行きたくなるのはどんなときか、という質問に対し、調査対象者は飲食サービス、製品のライブデモンストレーション、そして特別イベントなど、個性的で独自性のある体験が関係していると指摘した。スマート更衣室やVR体験という声もあった。



Ilyse Liffreing (原文 / 翻訳:Conyac)