駅伝において、早稲田大学ほど「名門」という言葉が似合う大学はないだろう。箱根駅伝に第1回大会(1920年)から出場し、総合優勝を果たすこと13回。OBには瀬古利彦、渡辺康幸、竹澤健介、大迫傑ら、名ランナーたちが名を連ねる。

 そのDNAを引き継ぐ名門も、今季は出雲駅伝で9位、全日本大学駅伝で7位と、近年では”ワースト”ともいえる結果となっている。

 しかし、主将・安井雄一(4年)は「総合優勝を狙っています!」とキッパリ口にする。就任3年目の相楽豊駅伝監督も、「出雲と全日本の結果からすると簡単ではありませんが、チームの年間目標は『箱根駅伝の優勝』です。我々にはノウハウがありますし、距離が延びれば延びるほど戦えるチーム。総合優勝にチャレンジしたい」と力強く語った。


3年連続で5区に起用されることが濃厚の安井

 出雲と全日本の結果について、安井は「少しのミスでこういう結果になってしまったのかなと思います」と分析している。出雲は2区終了時でトップと56秒差の6位につけるも、3区のエース永山博基(3年)で9位に転落。さらに全日本では、5区を任された宍倉建浩(1年)が区間20位に沈むなど、チグハグな駅伝になってしまった。

 しかし、全日本以降はチームの足並みが揃いつつある。

 全日本4区で区間13位に沈んだ藤原滋記(4年)は、上尾ハーフで1時間3分22秒と自己記録を更新。全日本を腰痛で欠場した光延誠(4年)も箱根には間に合う見込みだ。また、八王子ロングディスタンス1万mで新迫志希(しんさこ・しき/2年)が29分09秒89と好走し、1万m記録挑戦競技会ではルーキー宍倉が29分17秒12の自己新をマークしている。

 箱根の1区候補は、全日本1区で3位と好走した太田智樹(2年)と、スピードランナーの新迫。2区は前回に続いて永山を予定している。永山は昨季、全日本4区で区間賞を獲得すると、八王子ロングディスタンス1万mで28分25秒85の好タイムをマークした。しかし、箱根の本番10日前に右腓骨(ひこつ)に痛みが発生。その後は軽いジョグが中心になったこともあり、2区で1時間8分50秒の区間10位に終わった。

 今季は度重なるケガに苦しんできたが、「速いペース走」という位置づけで出場した八王子ロングディスタンス1万mを予定通りの28分台で走破。調子は上向いており、2度目の2区で快走を誓う。

「出雲と全日本は思ったように戦えず、本当に悔しかった。歴代の先輩方に対しても申し訳ない気持ちです。箱根では意地もありますし、キッチリと走りたいですね。最低ラインは1時間7分台。エースの自覚を持って完璧な状態で臨み、しっかりした働きをしたいと思っています」

 エース永山に続き、藤原、光延らの復調で3区、4区の人材も計算できるようになった。そして今年のチームは”山”の経験がある選手がいることが大きな強みになる。

 3年連続で5区を走ることが濃厚の安井は、前々回、現在より2.4km長かった5区を1時間21分16秒と好走。前回(区間4位/1時間14分07秒)は大平台(7km地点)の通過が11番目と序盤で波に乗ることができなかっただけに、今回は持ち味の積極的なレースを見せるつもりだ。

「後半には自信があるので、前半から攻めていき、武器である下りでギアチェンジしたい。1時間12分切りの準備はできていますよ。近年の箱根は、総合優勝するためには往路優勝が必須になっていますし、自分の走りをしっかりして、区間賞と往路優勝の2つを手にするのが僕の仕事と思っています。できれば、後続に1分から2分の差をつけたいです」

 6区候補の石田康幸(4年)は、今季に最も力をつけた4年生だ。関東インカレはハーフマラソンで5位入賞。自己ベストを連発して、全日本でも最長8区を区間6位でまとめている。実力がついた分、前回の6区(区間12位/1時間00分23秒)の走りには不満が残っているという。

「前回は最後の5kmで、トップの青学大に90秒くらい離されたんです。今の走力ならそこをカバーできるので、互角にいけるんじゃないかなと思っています。今回は59分台前半が最低目標。あわよくば58分台に突入したい」

 今回は青学大、東海大、神奈川大の”3強対決”が予想されているが、この3校はいずれも「5区」の戦力が不透明な部分がある。早大は4区終了時で大きく引き離されていなければ、山での大逆転も夢ではない。相楽監督にも明確なイメージがあるようだ。

「駒野(亮太・現在は早大コーチ)が5区で区間賞を獲得したときも、往路に主力を突っ込んで(復路の)9区まで逃げたんです。今回もそんなレースができたらおもしろいですね」

 第84回大会(08年)では、主将だった駒野が5区で5人抜きの大逆転劇を演じて往路Vを果たした。翌日の復路でも、6区の加藤創大(そうた)が区間賞を獲得。山を制した早大は9区の途中までトップを守って、最終的には総合2位に入った。

 今回の早大は、10年前のレースを”再現”しての総合優勝を目指す。史上3校目となる「学生駅伝3冠」を達成した2011年以来となる箱根Vを達成し、大手町に校歌『都の西北』を響かせることができるか。

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