本田圭佑がパチューカに加入して半年。すでにチーム内で欠かせない存在になっている【写真:Getty Images】

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タイトル逃すも“ゴラッソ”で示した確かな存在感

今年7月にメキシコのパチューカに加入した本田圭佑は、移籍当初こそ順応に時間を要したものの、徐々に周囲の信頼を確固たるものにしていき、半年間でチームに欠かせない存在となった。日本代表での立場は安泰ではないが、来年6月に自身3度目のW杯出場を無事迎えることができるだろうか。そのために必要なこととは何だろうか。(取材・文:河治良幸)

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 現地時間21日にメキシコのグアダルーペでコパMX(メキシコカップ)の決勝が行われ、本田圭佑を擁するパチューカはモンテレイと対戦した。拮抗した試合となったが、後半の早い時間にモンテレイがドルラン・パボンのスルーパスにアルビル・ウルタードが抜け出す形で先制。そこからタイトな守備ブロックでパチューカに流れからほとんど決定機を許さず勝利した。フル出場の本田も直接FKのチャンスに決められないなど、チームを優勝に導くことはできなかった。

 モンテレイはリーガMX2017/18前期リーグを首位で終えたが、“リギージャ”と呼ばれるプレーオフの決勝で同じモンテレイをホームタウンとするティグレスとのダービーに敗れ、惜しくも優勝を逃した。リーグ13位で“リギージャ”進出を逃したパチューカもコパMXでは7試合で15得点1失点と盤石の戦いぶりで勝ち上がってきたが、最後は地力の差が出たと言えるかもしれない。

 半年前の7月に加入した本田については、ここまで良いシーズンと送ってきたと評価できる。当初は右ふくらはぎに違和感をかかえ、高地の環境に適応に時間を要するなど、ディエゴ・アロンソ監督も慎重にデビュー時期を見極めなければいけなかった。

 しかし、リーグ第6節のベラクルス戦で途中出場ながらカウンターからの左足シュートで衝撃的なゴールを決めると、前線の複数ポジションで起用されながら着実に信頼を高め、レギュラー定着につなげた。
 
「ノルマっていう意味では果たした部分は多いですよね。W杯出場もそうだし、クラブW杯も3位で、パチューカのレベルのノルマで考えたらノルマを達成したかな。カップ戦も優勝できなかったですけど、決勝まで行けた。でもやっぱりもっと勝ちたいと思ってしまう」

 12日24日に帰国した本田は、その日の午後に自身がプロデュースする「SOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOL」とANAの協賛で行われたメキシコ大地震のチャリティイベントに参加した。

「子どもたちはやっぱり純粋にサッカーが好きなんだなっていうのは感じますね。プロになるとそれを忘れてしまうので。純粋な時の気持ちっていうのを思い出させてくれる、僕にとって非常に貴重な機会」

 そう語る本田はこの半年間で何らかのタイトルを獲得することを目標に設定していたという。その意味でもコパMXでチームを優勝に導けなかったことは残念な結果であったようだ。

結果で築き上げた信頼。半年間で不動の存在に

 しかし、メキシコからロシアへの道のりは確かにつながっている。リーグ戦の12試合であげた3ゴールはどれも見事で、3得点をあげたコパMXでも準々決勝ティファナ戦の60mドリブルからのループシュートはメキシコ国内はもちろん欧州の大手メディアにも絶賛された。

 そうした“ゴラッソ”が、本田がパチューカで地位を築く助けになったことは間違いない。本質的に独力でゴールをこじ開けるタイプではないが、外国人選手が目に見える結果で認めさせるというのは非常に重要なことで、本田も強く意識していただろう。

 ただ、本田のベースは周囲とのコンビネーションにある。中盤あるいは右サイドでパスを引き出し、相手のプレッシャーをいなしながら周囲の選手に前を向かせる。そこから機を見て自分もゴール前に顔を出してシュートを狙うのが本田の基本スタイルだ。リーグ戦で8得点をあげたビクトル・グスマンやウルグアイ代表のホナタン・ウレタビスカヤなど、仲間の持ち味を引き出すプレーが特にスタメンに定着してからは効いていた。

 ポジションは“偽9番”的なセンターFWからミラン時代や日本代表と同じ右サイドでの起用が続き、本田が当初から希望していた[4-3-3]のインサイドハーフはクラブW杯の2試合などに限られた。もともとパチューカの中盤はメキシコ代表クラスのホルヘ・エルナンデス、エリック・グティエレス、ビクトル・グスマンと優秀な駒が揃っている。

 前線やサイドの選手にはゴールに絡む仕事が求められるが、高い位置でラストパスの1プレー、あるいは2プレー前で起点になれる本田が入ることで、2列目のグスマンがFWを追い越す動きでゴール前に顔を出しやすくなる。右サイドで出場していても、そうしたプレーを周りの選手と共有することにより、本田は実質的に中盤の選手と同じ役割をこなすことができているのだ。CKやFKのキッカーを任されていることも背番号02のチーム内での位置づけと信頼を示している。

“格上”ばかりのW杯で必要な本田の経験値

 メキシコは秋春制だが1シーズンが前期(アペルトゥーラ)と後期(クラウスーラ)に分かれており、それぞれチャンピオンを決めるレギュレーションだ。来年1月7日から開幕する後期リーグではあらためてタイトル獲得を目指す形となる。パチューカの場合はクラブW杯、さらにコパMX決勝があり、オフ期間は2週間ほどしかない。言い換えれば試合勘をそれほど失わずにリスタートできるメリットはある。

 おそらく後期リーグでも本田の基本ポジションは[4-3-3]の右サイドで、試合の流れや主力選手のコンディションによってセンターFWやインサイドハーフで起用されるケースもあるだろう。[4-2-3-1]ならトップ下のポジションに入る可能性もあり、パチューカのスタイルであれば本田の特徴は生かしやすい。ポイントはそれが日本代表の選考にどう影響するかということだ。

 今月行われたEAFF E-1サッカー選手権でも見られた通り、日本代表経験の浅い選手たちでイレブンを組むと能力的な部分以上にゲームコントロールがかなり厳しくなる。レベルの高い相手ばかりが揃うW杯ではなおさらだろう。

 過去2度のW杯を経験し、国際舞台で何度も修羅場をくぐってきている本田がコンディションさえ良好であれば、メンバーに選ばれない理由はない。ただ、戦術的にどうチームに当てはめていくかはそう簡単ではないだろう。ハリルジャパンは縦に早い攻撃が主体とされるが、特に本大会は“格上”ばかりとなる。

 基本的にはボールを奪ったら素早く相手の裏を狙う戦い方になることが想定される中で、本田はサイドより中盤の方が機能しやすそうではある。だが、クラブとの起用法の違いや中盤でのボール奪取力との兼ね合いで、ハリルホジッチ監督がどういうバランスやメカニズムを考えて布陣を決めるか未知数だ。ただ“格上”と言っても初戦の相手であるコロンビアは意図的に引く時間帯もある。セネガルは局面のデュエルで苦戦が予想されるが、コンパクトな戦い方ができれば攻撃の主導権を握れる余地もある。

「移籍は全く考えない」。本田はロシアW杯に全精力を注ぐ

 そしてもう1つ、本田は彼ならではの強みを口にする。

「ロシアでのW杯ということもありますし、みなさん覚えているか忘れているか分かんないですけど、4年間一応、あそこに住んでいたので、そんな日本人なかなかいないっていうことも必ずアドバンテージになる」

 それもピッチで示していくしかないと語る本田は、個人的にも思い入れのあるロシアでのW杯を日本代表での集大成として捉えている。「もしその次(のW杯を)目指すって言ったら36でしょ。何とも言えないです。絶対ってことはないので。ただ、単純に今のところ全く考えられないですよね、そこを目指すというのは。それだけの話です」。つまり代表引退を宣言するということではなく、今は全力でロシアW杯に集中するということだ。

 ハリルホジッチ監督は最後の3週間でチームを仕上げると語っており、来年3月はW杯本大会の対戦相手を想定しながら、そのための最後の見極めの場となる。まずはそこまでパチューカの一員として試合に出場を続けながら、怪我なく良いコンディションを維持していけるかどうかが最終メンバー入りの鍵となる。本田のキャリアの中でも重要な半年間をメキシコでどう過ごして3度目のW杯に臨めるか。パチューカでしっかりと活躍して代表につなげる。移籍の噂も浮上したが、それに関してはきっぱりと否定した。

「年が明けてからパチューカに戻ってしっかりやりたいと思います。なので、移籍に関しては全く考えていないというのが、クラブW杯の時にも話しましたけど、全く同じ気持ちです」

(取材・文:河治良幸)

text by 河治良幸