国内屈指の新湯注入率を誇る天然かけ流し温泉の共同浴場「正面の湯」は利用料200円。「つかさや」に隣接し、宿泊者は無料

写真拡大

山形県庄内地方の鶴岡市には湯田川温泉という温泉がある。開湯1300年、鶴岡の奥座敷、湯治場として有名だ。こじんまり&しっとりとした小さな温泉街で、落ち着いて過ごしたいオトナにはうってつけ。豊富な湧出量を誇る硫酸塩泉はとても肌あたりのいいまろやかなお湯で、湯上りの肌はツルツルになる!そして温泉であったまったあとは美酒と美肴を堪能するしかない!そこでありえない量の日本酒飲み比べができるという「つかさや旅館」を訪れた。

「とことん飲み比べ10種」の日本酒。火入れしたものや生酒、熟成酒とバリエ豊か。どれが一番自分の口に合うか探すのもまた一興

■ 「ちょこちょこ呑みたい」「いろいろ呑みたい」…そんなわがままを叶える10酒のラインナップ

星野リゾートの旅館で働いた経験を糧に、お父様が経営していた旅館を継いだのが当館の“若旦那”こと庄司丈彦さん。3人の子育てをしながら奮闘する妻の“若女将”と共に切り盛りしている。家業を継ぐまで日本酒に興味なかったそうだが、庄内産の水と米という最高の素材で作られた酒をお客様に積極的に提供しない手はないと思うように。なにせ鶴岡を含む庄内地方は、食の都。庄内の美味には庄内の美酒が一番マッチするのだから。今では若旦那自ら毎日試飲して、選りすぐりの10種を日替わりで提供している。

7年前に4種類の飲み比べから始めたが、「せっかくいらしてくださるのだから、もっとあってもいいんじゃない?」という若女将の提案で6種類、10種類もスタート。確かに料理と同様、おいしいお酒もちょこちょこいろいろ試してみたい。ちなみに10種すべて飲み尽くすと660ccにも!

お酒が運ばれてきたと同時に、日本酒の名前や度数、原料米などが書かれた「本日の10種飲み比べ」解説表を渡される。

もちろん、日本酒にも番号が振られており、基本的には1〜10の順番に呑んでいくのがいいらしい。

さて、取材した日の日本酒といえば…?1〜2は口当たりもよくて軽い。3〜6はより味がしっかりして、刺身や焼き物などの食事にも合わせやすい。8〜9は、ちょっとお酒に飽きたころのアクセントになる個性が際立つもの。10は平成21年に作られた酒の熟成酒で、好き嫌いがはっきり分かれるかも…というラインナップ。数字が大きくなるにつれじわじわとより強く濃く、よりエッジがきいたものになっていくのがわかる。おっと酒の肴も忘れてはいけない!庄内の旬の山の幸、海の幸がてんこ盛りの“ごっつぉ”(ご馳走)がとてつもなくうまい。

日本海側の魚は白身魚が多いので、酸味が少ないさっぱりとした庄内の酒が必然的に合う。口に運ぶうちに、なぜだかDNA(というか本能が)が自分を駆り立てるような気がする。「もっと呑め、もっと食べろ」とーー。

■ おひとり様でものんびり楽しめる!飲み比べ&源泉かけ流しの湯

最近では、自分の部屋で、飲み比べセットを嗜む20〜40代のおひとり様女子のゲストも増えたそう。「みなさん、ぼーっと呑んでいらして、なんだかシュールな光景ですけど(笑)。黙々と呑んでますが十分楽しんでおられるようですよ」。部屋は一人きりだから、自分のペースで飲み、食べ、くつろぐことができるのもメリット。源泉かけ流しの内風呂は24時間入浴可なので、いつでも入れるのもいい。ただし酔っぱらっての入浴は厳禁だ。

毎日奮闘する若旦那の夢は日本酒バーを開くこと。「最初は一人で来られた方も楽しく過ごしているんですが、食事が終わるころには誰かとしゃべりたくなるみたい(笑)。だから、そういう人たちがコミュニケーションできる日本酒バーがあったらいいのになと思っています」。

蔵元を呼んでの日本酒イベントなども随時開催中。日本酒は食事を盛り立て、人をつなぐ潤滑油でもある。さあ、食の都庄内で、うまい酒に出合う旅へいざ!【ウォーカープラス編集部】(東京ウォーカー(全国版)・取材・文=東野りか、水島彩恵)