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●キャッシュレスのニーズ増に応える自販機

マルチ決済対応自動販売機のイメージ(伊藤園プレスリリースより)

伊藤園は12月21日、GMOフィナンシャルゲートと共同でマルチ決済端末を搭載した自動販売機を開発したと発表した。2018年1月以降、りそな銀行の10支店に設置する。

マルチ決済端末はクレジットカードや電子マネーなど、複数の決済手段での支払いを可能にするものだが、これを自販機に取り付ける。急速に拡大するインバウンド需要を見込んだキャッシュレスでの決済手段の提供に注目が集まっているが、この伊藤園の自販機もそうしたニーズを狙ったものだ。その実際の狙いと今後をまとめていく。

○プロモーションを目的としたVisaデビットカード支払い専用自販機

今回採用されたマルチ決済端末はNayax製のものを採用し、決済手段としては「Visaデビットカード」の非接触タイプのみを受け付ける。「(Visaデビットカードによる)キャッシュレスの利便性を体験してもらう」ことが狙いで、従来であれば自販機に決済端末とは別に搭載される現金の取り扱い口が、用意されない予定だ。

りそな銀行は「Visaデビットカード」を発行しており、そのメリットを強調する形でのキャンペーンを展開しているが、りそな銀行にVisaデビットカード専用自販機が設置されるのは「そのプロモーションの一環」と伊藤園の広報は説明している。

そのため、今回の自販機の設置は伊藤園、GMOフィナンシャルゲート、りそな銀行の3社がパートナーを組んでの展開ということになるが、今後も「新たなパートナーがいれば設置エリアを拡大していく」(伊藤園)と述べており、ニーズを鑑みつつ全国展開を進めていくようだ。

経済産業省が出した「キャッシュレスの現状と推進」の報告書によれば、クレジットカード/デビットカード/電子マネーなどの現金を用いないキャッシュレス決済は、個人消費全体のうち20%を現在占めている。これを今後、10年間(2027年6月まで)に40%まで引き上げることが政府の目標だ。

また、2020年の東京五輪までにインバウンド需要を取り込むためのキャッシュレス対応がさまざまな業界で進んでいる。長年クレジットカード決済に対応していなかったマクドナルドなどが2018年から利用可能になるほか、コンビニ各社もPOS端末の更新期に差し掛かり、さまざまな決済手段への対応を順次進めている。

こうした流れを、伊藤園を含む自動販売機ビジネスを展開する各社も当然注視しており、これに対応する形で今回の発表に至ったようだ。ただ、今回は認知向上というプロモーションを主因とした設置のため「それほど売上が出るとは考えていない」と伊藤園側が認めているように、実際にこれが広域展開できるかどうかは、さまざまなオプションを探りつつ行っていくことになる。

●インバウンド需要を狙った設置計画

なお伊藤園では、今回のマルチ決済端末搭載自動販売機について「国内初」をうたっている。この意味は、Visaデビットカードの非接触決済に加えて、「Nayax製端末搭載の国内初の自販機」ということだ。2016年7月に東京で開催された「インバウンドジャパン2016」において、伊藤園の自販機と同型のマルチ決済端末を展示していたNayax関係者に質問したところ、サントリーなど自販機大手らと交渉を続けていると説明していた。

Nayaxのマルチ決済端末。こちらは旧タイプのもの

当時は2016年末から2017年にかけて、古くなった自販機の一部からリプレイスしていく可能性を示唆していたが、伊藤園は「Nayax製の端末の設置自体が初のケース」としている。現時点でリプレイスがほとんど進んでいないことがうかがえる。

Nayaxの決済端末は欧米など海外の自販機では比較的よく見かけるもので、そこでは主にクレジットカード決済を取り扱うことを目的としている。旧タイプでは磁気カード、接触(IC)、非接触の3種類の決済手段に対応していたが、新タイプでは比較的大型のカラー液晶を採用し、各種電子マネー対応のほか、タッチパネルでの項目選択が可能になっている。

また、液晶とカメラを組み合わせて近年増加しているQRコード決済にも対応しており、過去に行われたデモではAlipayのアイコンが表示されていた。ただ伊藤園のケースでは、クレジット/デビットカードの非接触決済のみのサポートに限定されている。これは、10月にりそな銀行で「非接触決済に対応したVisaデビットカード」の発行がスタートした関係もあるだろう。

伊藤園によれば、「現時点で話せる計画はない」としたものの、今後はりそな銀行のようなパートナー提携で展開を模索するほか、主にホテルや観光地など外国人が比較的多く訪れる場所で設置を目指していくようだ。当然、国内利用者がメインとなる電子マネー対応だけでなく、クレジットカードやQRコード決済への対応も行っていくようだ。

同社は12月7日にWeChat Pay(微信支付)とLINE Payに対応した自販機を設置したことを発表しているが、この自販機は成田市内にあるホテル1カ所で稼働しており、前述のように主にインバウンドを狙ったプロモーションを兼ねてのものだという。

実験的ではあるものの、単純な目先のビジネス的視点でなく、このように試行錯誤を続けているベンダーがいるのは非常に興味深い。こうした取り組みの成果は継続して追いかけていく予定だ。