アップル傘下のオーディオブランドとして、特徴的な「b」マークのヘッドホンを街角で見かけることも多いBeats by Dr. Dre。2006年に設立された同オーディオ・ブランドが先日リリースしたのが、強力なノイズキャンセリング機能を備えたワイヤレス・ヘッドホン『Beats Studio3 Wirelessオーバーイヤーヘッドフォン』だ。

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アップル「W1」チップを中心とする最新のテクノロジーを満載したことで、過去に類を見ないレベルでの外部ノイズのキャンセルを実現した本機。その開発エピソード、そして製品に秘められた音楽への思いを、Beatsのプレジデントであるルーク・ウッド氏にインタビューすることができた。

あえてデザインを変えなかった理由



「まず外観を見る限り、きっと以前のStudio2 Wirelessと同じに見えるよね。けれど中身は全くの別物なんだ。採用しているドライバの素材から、回路設計、さらには塗料にいたるまで、すべてのコンポーネントを見直して徹底的に改善している。それはソフトウェアについても同様だよ。すべてを一から書きなおしたんだ」

―デザインを変えなかったのには何か理由があるのでしょうか?

「デザインを変えなかった背景には、前モデルの時点ですでにクオリティの高いデザインを完成していたということがある。快適性やフィット感を追求し、最高のオーディオ機器を目指して完成させたデザインだ。ヘッドホンの場合、フィット感も音に影響するものだから、デザインを変えないことにもちゃんと理由があるんだよ」



W1チップ搭載によって得られた恩恵とは



―今回の製品にアップルの「W1」チップを採用したことでどういったメリットが?

「W1チップがもたらしたものには、大きく3つのポイントがある。ひとつめはiOSデバイスとの近距離ペアリング。さらにiCloudに登録されたデバイス間でのシームレスなデバイス共有も可能になったことも大きいね。そして最後のひとつは、バッテリーの持続時間が大幅に向上したこと。これはiOS端末だけでなくAndroid端末のユーザーも恩恵を受けられるポイントだ」

―長時間連続で使用できるのは、ユーザーにとって本当にありがたいです。

「W1チップ採用によって、これまでのモデルの倍以上にまで動作時間が向上しているし、独自の急速充電「Fast Fuel」により、10分間充電するだけで約3時間の再生が可能になった。あと、Class1 Bluetooth対応で電波の強度がアップし、音が途切れにくくなったこともアピールしたいね」



あらゆる環境に対応できるノイズキャンセリング機能



―実際に『Beats Studio 3 Wireless』を試してみて、特に注目したいポイントはノイズキャンセル性能の高さかな、と。

「その通り。W1チップのおかげで再生可能時間も伸びているけれど、どちらかと言えばノイズキャンセリング精度向上のために採用している、という理由が大きいんだ。この製品の開発で特に最優先事項としたのが、ノイズキャンセル性能の向上だったからね」

―ところでノイズキャンセリングって、一般的にはどのような仕組みになっているのですか?

「元々ノイズキャンセリングは航空機での使用を前提に作られた技術で、キャンセルする周波数も航空機やヘリコプターの騒音を基準に作られている。具体的に言うと80Hz〜300HZの低音域がターゲットだ。これは音楽におけるドラムキットのキックや、ベースギターおよびピアノの低音域にあたる。これに対してソフトウェアが逆位相の信号を生成するというわけ」

―なるほど。



「この技術の問題点は、逆位相の音が元の音源に影響を及ぼすことだ。飛行機だけなら低音域のキャンセルでいいけれど、カフェや電車内など、環境によってキャンセルしたい音域は違ってくるよね。そこで作ったのが、『Beats Studio 3 Wireless』の搭載した“ピュアアダプティングノイズキャンセリング機能(Pure ANC)”なんだ」

―その新技術のポイントが非常に気になります。

「Pure ANCのポイントも3つある。ひとつめは内蔵しているマイクが周辺のノイズを拾って、環境音の音域を観測・特定する周囲環境評価。そして2つめが、イヤーカップ内側のマイクで音漏れの量を感知する漏洩評価。最後の3つめが、音質評価機能だ。元の音源とノイズキャンセリング済みのサウンドを同時にサンプリングして常に比較し、著しく差があって音質に影響がでていると判断した場合、その部分を補正して、音質を保っている。この作業はプロセッサが毎秒5万回行っているんだ」

―内部ではノイズキャンセリングのためにものすごく複雑な処理が行われている、と。

「そう。これら3つの機能はW1とは別のプロセッサが処理しているのだけれど、これらの処理は非常に高負荷だし多くの電力を食う。そこでW1を組み合わせて、バッテリーの消費を抑えつつ常に快適なリスニングを楽しめるような設計にしたんだよ」



すべてはユーザーのより良い音楽体験のため



―最後に、街でBeatsのヘッドホンを着けている人を見かけるとどんな気持ちになるかを教えてください。

「とてもエキサイティングな気持ちになるよ。僕は元々レコード業界でエンジニアリングをしていたから、ドライブ中に隣のクルマから自分の携わった音楽が聞こえてくるとやっぱりエキサイティングな気分になったものさ。Beats製品を使っているユーザーに出会ったときも、やはり同じように気持ちが高ぶるね!」



Beatsをあまり音響ブランドだとは考えていないと話す、ルーク・ウッド氏。「どちらかと言うとカルチャーを作るブランドだと思っているよ」という言葉が印象的だった。オーディオ製品を作るのではなく、究極的に目指すところはユーザーの音楽体験。製品を通して音楽がどのようにリスナーへと届くかにこだわるモノ作りは、音楽エンジニアが作ったブランドであるBeatsならではの思想ということになるのだろう。

彼らが生み出す新たな製品、いや新時代の音楽体験に今後も期待していきたい。

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Beats Studio3 Wireless(Beats by Dr. Dre)

text渡辺 "d." 大輔(編集部)