手取り足取り指示しなければ仕事をしない後輩にイライラしています(写真:ocsa / PIXTA)

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【ご相談】
後輩指導の件でご相談です。同じ職場に社会人2年目の女性後輩がいるのですが、彼女の指導で悩んでいます。彼女は、手取り足取り指示しなければ仕事をしようとしません。自分で考えて工夫をする、といったことはまったくしないので、すごく細かく指示する必要があります。
面倒くさくなって、「自分でやったほうが早いのでは」と思ってしまい、私が手を動かすと、「信頼されていない」と言って泣き、まるで私がいじめているような態度に出ます。コミュニケーション上でも、背景や意図をくみ取る、ということをしないので、逐一説明するのですが、少し雑な説明をしてしまうと額面どおりの出来上がりになりがっかりします。彼女が先回りして仕事をし、心から「ありがとう!」と言える日が来るとはとても思えません。そんな彼女と私とが、給料がほとんど変わらないかと思うと、イライラは募るばかりです。どう指導すれば、少しは意図をくみ取った仕事ができるようになり、指示待ちの姿勢を正すことができるのでしょうか。

「変える」という発想は捨て去る


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なるほど……。思ったとおりに動かない、指示待ちの後輩にイライラしていらっしゃるのですね。ストレスがたまっているというのを超えて、爆発寸前の雰囲気ですね。

同僚同士で飲んだときなどに、この手の後輩の愚痴はよく話題になったりしますが、発散はそういう場ですることにして、イライラは職場では抑えこむようにしましょう。あなたの言うとおり、あなたの立場も悪くなってしまうかもしれませんから。

私は社会人になってから25年経ちますが、このテーマは程度の差こそあれ、いつの時代も存在した問題である気がします。一方で昨今は、自分をしっかり持った若手が多いとも聞きます。もしかすると、先輩や上司サイドの仕事の依頼の仕方や、ゴール設定のあいまいさなどによって、若手から「ダメ先輩認定」されてしまい、「この人の案件は、指示されるまでやらない」と戦略的に指示待ちをされている可能性もありそうです。

もちろん、あなたにも言い分はあるでしょうし、彼女の問題がどの程度かわからないので決めつけられませんが、ある意味、この手の問題はもう卒業したいものです。つまり、私たち先輩の「彼女を変える」という発想は、捨てる去るべきときなのかもしれないと思うのです。そして、あなたと違う彼女の個性を理解することのほうが、あなたにとってずっと重要な気がします。

私も、彼女のような後輩や部下を持ったことが何度もあり、頭を抱え、イライラし、「どうしてこうなのか」「どう指導したら変わってくれるのか」と胃の痛い思いをしてきました。私自身、自分を変えるという発想はなく、結局は相手に変わってもらおうとしていたと思います。

「行間を読め」は身勝手な話

あるとき、1回り以上歳が下の男性新入社員が配属されたことがありました。自己主張の強いメンバーが多い会社であり職場だったのに、彼はとても寡黙で、なかなか心を開いてくれません。細かく指示すれば、きちんとやり遂げますが、「どうすればいいと思うか?」と聞くと「経験がないのでわかりません」と答えます。こちらとしては、間違っていてもいいから、「僕はこう思います」などと意見を聞きたい。でも表情をほとんど動かさないまま、「僕には意見は特にありません」「どうすればいいか教えてもらえればそのやり方でやってみます」と言うのです。最初は、反発されていると思っていたし、言い方にもカチンとくるし、「そんなんじゃだめだろう」と思っていました。

そんなある日、彼の顧客の件で打ち合わせをしていると、また指示と「解」を求められ、私は心底うんざりして、「そんな仕事の仕方をしていて何が楽しいの? 今のままじゃうちの会社ではやっていけないよ?」と言ってしまったのです。すると、彼はじっと考え込んだ後、「いつまでに退職届を出せばよいですか?」と言ったんです。にらんだり、とか、すねたり、とかではなく、明らかに普通に! 私はその瞬間を忘れられません。

別の女性メンバーは、「このミスするの、何度目?」としかったら、ごく冷静な表情で、「4回目くらいだと思います」と返してきました。これもかなりびっくりしました。大幅に遅刻して待ち合わせ場所に到着しないメンバーに、「どこにいるの!」と電話でしかったら、明るい声で「○○駅のホームです」と言われたことも。

疑問形で発言しているけれど、明らかにしかっていて、答えなど求めていないのは「行間を読めば」わかるはず、と思いがちです。でも、そもそも「行間を読め」なんて求めすぎで、身勝手な話なのです。コミュニケーションとは、相手に意図が伝わって初めて成立するのだ、と悟るべきでしょう。

昨今話題の横綱暴行事件で報道されているエピソードで、説教されているときにスマホをいじる後輩力士に、「こんなときに誰なんだよ!」と声を荒げたら「彼女です」と答えられて腹が立った、というような話がありましたね。想像にはなりますが、同じ部類の話かもしれないなと思いました。かーっと頭に血が上る気持ちは理解できるけれど、「ああ、こういうタイプの後輩だった」「私もまだまだダメだなぁ」と考えたほうがずっと気持ちが楽です。

先に出てきた、男性新入社員に「退職」と口にされた話ですが、私はそのとき衝撃とともに、「わお、私とはまったく違うコミュニケーションのタイプなんだわ、この子!」と理解できてしまいました。そして、よくよく思い返してみると、彼はとても賢い人で、指示も解も仰ぐけれど、それを着実に自分の経験にしていることに気づいたのです。「主体性」の名のもとに、私のような昭和タイプが大好きな、「チャレンジ」を果敢に行ったり、がっつり自己主張することはないけれど、彼なりに確実に少しずつ経験から学び、成長していると思ったら、「こちらの好みの問題で、彼に窮屈な思いをさせてきちゃったなー」とすとんと考えることができました。

自分のやり方を後輩たちに仕込んでいく、というより、おそらく今は、後輩たちの強みをそれぞれに伸ばしていくように、伝え方もやり方も、柔軟にコントロールしていくことが求められる時代だと感じます。自分とはまったく特性の違う人と付き合っていくことは、今後のビジネス人生でもきっと役に立つ力になるはずですから、「指示待ち後輩」を実験台にするくらいのつもりで、いろいろアプローチして育ててみたらよいのではないでしょうか。

意図をくみ取らないなら、わかるまで意図を説明する。行間を読まないのなら、行間を作らない説明をする。指示を待っているなら指示を浴びるほど与えてみる。そして、少しずつ彼女が成功体験を積むのを一緒に見届け、認めてあげるようにしたらいいのではないかと思います。

「間違うのがいやだ」「自分は認められていない」と思っているようなタイプだとしたら、たっぷり指示をしてそのとおりに仕事が仕上がってきたときに、「正確な仕上がり」をまずは認め、具体的に褒めてみてはどうでしょう。そして、その中にその人が思う「改善ポイント」や意見を問うてみるとか。

自分自身が変わるきっかけにする

私は、先の男性部下とじっくり話す時間を作り、「勝手な思い込みで仕事を進めないこと」「行間を読みすぎず、事実をもとに仕事をしようとすること」を高く評価している、と具体的な事例をもとに伝えました。そのうえで、一つひとつの指示された仕事から何を学んだか、どう感じたか、についてちゃんと話してもらいたいと言ったところ、それから驚くほど関係性が変わりました。彼は、「あうんの呼吸」を疑うタイプだったし、私がそれを求めているように感じて、ずっとおかしいと思っていたそうです。

そこまで開いた会話をして初めて、彼の成長支援は楽になりました。彼なりのやり方があることを周囲に理解してもらうための努力を私がしていたのも知っていたようで、数年経ってから感謝の気持ちを伝えてくれました。うれしいことに、いまや彼はピカピカのエース社員です。今でも誇らしい存在です。

仕事がいっぱいあって、そのうえ、短い時間で仕上げて早く帰れと言われ、給料もそれほど上がらず、上からも下からもやいのやいの言われる。ちょっとは苦労をわかってほしいわ、と思う気持ちはよくわかります。でも、もう下っ端じゃないってことですよ。立派な「中堅社員」です。深呼吸をして、「私が成長するために、乗り越えるべき壁が現れたのね。乗り越えてやろう」と思ってみましょう。そして、自分自身が変わるきっかけにするといいと思います。来年の今頃は、今とは違った境地に至っているといいですね! 一緒に頑張りましょう。