山崎賢人&竹内涼真、役柄とシンクロした成長 『陸王』 素晴らしき最終回を振り返る

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 日曜劇場『陸王』(TBS系)の最終回がクリスマスイブの12月24日に25分拡大で放送された。副題に【「陸王」がこはぜ屋、茂木、皆の未来を救う!走れ!陸王!】とあり、オンエア前のスペシャル番組の盛り上がりからも、すでに結末は予測できていた。

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 ただ、誰もが予想はできるラストだったとしても、実際にドラマが始まり、登場人物それぞれが熱い想いを語り、そのさまざまな想いを受け取った茂木選手(竹内涼真)が走る姿を見ると感動せずにはいられない。放送1日前の12月22日にも埼玉県行田市でロケが行われていたというが、見る側の人たちの想いまで巻き込んだ素晴らしい作品になったと改めて感じる最終話であった。

 池井戸潤の同名小説が原作のこの作品。資金繰りに苦しむ老舗の足袋業者こはぜ屋の4代目社長である宮沢紘一(役所広司)が新規事業へ参入し、足袋製造の技術を生かしたランニングシューズを開発して生き残るために挑戦していく物語なのだが、世界的スポーツブランドから敵視され、何度も危機に陥ってきた。

 最終回は、役所広司演じる宮沢社長が、熟考の末に買収の話を断って業務提携を提案したことで、一度は決裂した世界的アウトドアメーカー、フェリックスの御園丈治社長(松岡修造)から厳しい期限付きの提案を受けるところから物語が始まる。

 5年の返済期限付きで3億円の融資を受ける代わりに、「陸王」開発顧問の飯山晴之(寺尾聡)が特許を持つソール素材「シルクレイ」を提供するのが業務提携の条件だ。今回もまた、宮沢社長は社員を巻き込んで話し合った結果、フェリックスの御園社長の提案を受け入れる決断をする。

 一方、宮沢社長の長男、大地(山崎賢人)はかねてから就職を希望していたメトロ電業の最終面接に挑む。その最終面接のシーンで「仕事の厳しさと逃げずに挑戦する楽しさ」を父とともにランニングシューズ「陸王」を開発する過程で学んだと胸を張る大地の表情は清々しく、彼もまた経験を積むことで成長してきたのだった。

 「品質やコンセプトでは負けていないと自負しています。いつか必ず、世界一のシューズにするつもりです」と語り、父親と同じ強い想いもにじませていた。資金繰りに困る零細企業の話なので、世知辛い現実を見せつけられ、辛気くさい展開にならざるを得ないのだが、山崎賢人演じる大地が救いとなり、未来に光を感じる存在となっていた。

 そして、最後まで諦めずに自分が信じたもの、信じてくれた人のことを裏切ることなく走る茂木選手の姿は美しかった。ライバルであるアジア工業の毛塚選手(佐野岳)に水を差し出すシーンも、優勝インタビューでこはぜ屋の人たちに感謝の言葉を述べる場面も、その想いはストレートに伝わってくる。茂木と同様に、このドラマを通して一回り成長を遂げた竹内涼真だからこそ、視聴者の胸を打つことができたのだろう。

 物語の舞台となり、最後のロケ地にもなった行田市では、『陸王』関連グッズが大人気で、その経済効果は10億円以上だともいう。ドラマでもラストは、陸王により30億円を稼いだこはぜ屋は工場を増築、社員が20人から60人になって安泰だが、人のエネルギーが経済を動かすことを余すところなく見せてくれたドラマだったと改めて思う。

 登場人物たちの挑戦は続き、茂木選手が五輪出場権をかけた大会に陸王を履いてのぞむシーンで物語は終わったが、東京五輪に向けてこれほど盛り上がれるドラマがこのまま終わってしまうわけがないのでは? とも思える。多くの人を巻き込み、熱い想いを受け取り、強いエネルギーを発散させた作品が、また新しい違うかたちとなって私たちを楽しませてくれることを期待したい。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

(池沢奈々見)