正式オープンを控える「漣泉大江戸(日本語名:さざなみ大江戸)」(筆者撮影、以下同)


 昨年(2016年)末、日本の温泉リゾート施設「大江戸温泉物語」と同じ名称を使用したスーパー銭湯「大江戸温泉物語」(通称「上海大江戸温泉」)が上海に登場し、話題となりました。

 筆者は日中両国で「パクリではないか」と大きな騒動となった上海大江戸温泉へ赴き、その内実と従業員らの証言を記事にしました。そして先週には、騒動から1年経った現在も順調に営業が続けられている様子を報じました。

・「パクリ疑惑の上海『大江戸温泉物語』に行ってみた」(2016年12月27日)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48789
・「あれから1年、『パクリ疑惑』上海大江戸温泉の今」(2017年12月20日)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51842

 その上海で、このほど新たに「さざなみ大江戸」(中国語名「漣泉大江戸」)という名称のスーパー銭湯施設が2018年初頭にオープンすることが分かりました。

「『大江戸』という名の付く新たなスーパー銭湯が上海にできるらしい」との情報を筆者がキャッチしたのは、先週の記事を配信した直後です。上海の大江戸温泉ウォッチャーを自負する筆者としては、聞き捨てならない情報です。

 12月23日、正式オープンに先立って開業式が開かれることを知り、開業式に招待はされていませんが、現地を訪れて取材をすることにしました。

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ショッピングモールに温泉施設を併設

 新たにオープンするスーパー銭湯「さざなみ大江戸」は、上海市中心部から南西の郊外に立地しています。最寄駅は上海地下鉄1号線の終点駅「莘庄」です。

 さざなみ大江戸は、ショッピングモール「彩生活時代広場」に併設された施設です。ショッピングモールも開業前(12月29日オープン予定)ということもあり、取材当日はまだあちこちで工事が進められていました。

 施設に到着すると、ちょうど入口前で、大きな提灯を吊り下げる作業が進められていました。開業式の会場には招待客らが続々とやって来ており、浴衣を着た女性従業員らが恭しくお辞儀をしながら迎えていました。筆者が「招待状はないが中に入って取材してもいいか」と従業員に尋ねたところ、「うん、オッケー」と二つ返事で入れてもらうことができました。

目を見張る内装と多数のくまモン

 施設の正式なオープン日は来年の1月10日。料金は138元(約2400円)で、24時間営業で運営していくそうです。

 建物は2階建て構造で、1階は受付と浴場と売店、2階はフードコートと休憩・イベントスペースとなっています。まだオープン前ということもあって、内部は至る所で工事中でした。肝心の浴場にもまだ入れず、中を確かめることはできませんでした。

 施設内に入ってまず感じたのは、その広さと、内装のレベルの高さです。他の日系スーパー銭湯と同じくに和風の内装となっていますが、2階へと続く階段や通路内のモニュメントなどは驚くほど丁寧に意匠が凝らされており、日本国内でもこれほどの施設はなかなか拝められないと感じます。運営会社広報によると、これらの設計は日本人職人が担当しているとのことです。運営会社側も同職人について「非常に努力していただいた」と述べ、その仕事ぶりを高く評価しているようでした。

1階と2階をつなぐ大階段


 なお、売店らしきコーナーには上海大江戸温泉と同様に熊本県の公式ゆるキャラ『くまモン』のグッズが多数置かれていました。こうした施設にはどうやらくまモンが必要不可欠なようです。

ここでも溢れるくまモングッズ


「大江戸温泉物語とは無関係」と説明

 開業式の前後、施設従業員や運営会社関係者から詳しく話を聞くことができました。

 まず誰もが最も気になっていると思われる日本の「大江戸温泉物語」との関係を尋ねたところ、資本関係や人的交流を含め「無関係」であり、「さざなみ大江戸」は完全に新規のブランドであると説明されました。上海大江戸温泉とも関係はないそうです。

 また、施設名称に「大江戸」の文字が入っている理由としては、「日本の銭湯文化をイメージさせる上で最も適した言葉であり、施設全体の趣向やテーマを示すため付けた名称に過ぎない」とのことでした。

 なお運営会社関係者によると、昨年末の上海大江戸温泉の騒動はもちろん把握しており、誤解をされないように当初は「大」の字を外して「さざなみ江戸」とする案も出たそうです。しかし、やはり「大江戸」にしないとイメージが伝わらないとの判断から、結局この名称になったといいます。

 運営会社関係者によると、施設の管理責任者は日本から招いた日本人技術者が担当するそうです。日本の銭湯施設に負けないという意気込みでハードを整え、サービス面については日本式のやり方をしっかりと従業員に学ばせてきたと語り、オープン後の運営に強い自信を覗かせました。

 今後の店舗展開についてもすでに計画を進めており、具体的な展開地として北京市、河北省、江蘇省淮安市、浙江省紹興市、湖南省長沙市などの名が挙げられました。

2階休憩スペースの一角


従業員研修で東急不動産HDが協力

 施設内部のイベントスペースで催された開業式には、「漢庭(ハンティン)ホテル」に代表される中国のビジネスホテルチェーン大手「華住集団」の幹部や、日系不動産大手の東急不動産ホールディングス役員、上海総領事館の領事らが出席していました。

 式に出席した東急不動産ホールディングス役員兼東急住宅リース社長の北川登士彦氏によると、「さざなみ大江戸」側から従業員研修を相談されたことをきっかけに、関わりを持つに至ったそうです。具体的には、「さざなみ大江戸」から派遣された中国人従業員を東急不動産系列のリゾート施設で受入れ、日本でのサービス研修を行うことを検討しているとのことです。

 現時点では施設運営会社との資本関係はありませんが、こうした人材育成面での業務提携は今後も続けていくとのことです。また今後については、双方で観光分野などの広報や斡旋でも提携を発展させていく可能性もあるとの考えが示されました。

開業式でのテープカットの一幕


 最後に筆者の忌憚のない意見を述べさせてもらうと、日本の銭湯文化が中国で高い需要を持っていることは間違いありません。だからこそこうした施設が続々とオープンしているわけです。ということは、単純に儲かる可能性も高いのだから、日系資本ももっと中国でこうしたリゾート施設の運営に取り組む価値があるのではないかと思います。パクリかどうかで騒ぐだけではなく、この分野でいかビジネスを発展させるかについて考える方がよほど建設的なのではないでしょうか。

筆者:花園 祐