「新入社員の定着率が高い会社」トップ10

写真拡大 (全6枚)


2013年入社組、2014年入社組の定着率が100%の任天堂。現在は「Switch」がヒットしている(撮影:田所千代美)

2017年も残すところあとわずか。年末を故郷で過ごす学生も多いはず。まだ就職活動らしいことをやっていない現大学3年生(2019年卒生)は、この機会に業界研究や企業研究に手をつけてみるのはいかがだろうか。

近ごろは、長時間労働や人手不足を背景に「働き方改革」が叫ばれており、就活生が会社を選ぶ基準も、給与などの待遇より働きやすさを重視する傾向があるようだ。ここで働きやすさを計るうえで注目したいのが、新卒入社者のうち3年以内に離職した割合を表す「3年後離職率」だ。

大卒3年後離職率は全体で32.2%


厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」調査によると、最新の大卒3年後離職率は全体で32.2%。「3年で3割が辞める」計算になる。言い換えれば「3年後に定着しているのは7割弱」ということになる。とはいえ個別の会社に焦点を当てると、離職率が低い会社=定着率が高い会社が存在するのも確かだ。ではいったいどんな会社か。

東洋経済では『就職四季報2019年版』(総合版、女子版、優良・中堅企業版)の中で、3年後離職率を調査しているが、この逆数を定着率とし、その値が高い会社を、「新入社員が辞めない会社ランキング」として紹介していきたい。

対象は『就職四季報2019年版』(総合版)の掲載会社のうち、最新の3年後定着率(「2014年4月入社者数」<ただし10名以上>と、「うち2017年4月在籍者数」をもとに算出)に、有効回答があった942社。このうち上位200社を「新卒入社者の定着率が高い会社ランキング」にまとめた。なお、定着率が同じ場合、入社者の多い順に順位付けした。

定着率が100%の会社、つまり「入社から3年の間に離職者が1人もいなかった会社」は80社。うち2014年入社者が最も多かった1位は、京都に本社を置き医療用医薬品を手がける、日本新薬(2014年入社者数66人)がランクインした。

2位は産業用ロボット、世界首位のサーボモーターやインバーターを製造する、安川電機(同59人)。3位は任天堂(同57人)が入った。同社は日本新薬と同様、本社は京都にある。4位森永乳業(同55人)、5位アサヒビール(54人)、6位電源開発(51人)までが、入社者50人以上で離職者がゼロだった会社だ。なお2年連続で定着率が100%の会社は、任天堂や10位の宇宙航空開発機構(JAXA)など、28社にのぼる。

電力・ガスやメーカーの定着率が高い

業種別で定着率が最も高いのは、電力・ガスなどのエネルギー(95.6%)だ。事業に安定感があり、それが働きやすさにつながっているのだろう。逆に最も低いのは、小売(75.6%)である。それ以外の業種の平均は、メーカー91.6%、建設・不動産87.1%、情報・通信・同関連ソフト86.9%、金融86.5%、などとなっている。

942社の3年後定着率の平均は88.0%で、前号(前年)比で0.9ポイント減少した。有休取得日数平均は微増、残業時間月平均もわずかながら減っており、働きやすさを示すデータはやや改善傾向が見られているのに、定着率は逆に悪化している。

新卒だけでなく、中途採用市場でも企業の採用意欲は高く、転職しやすい環境が続いている。定着率が下がっているということは、より働きやすい会社を求めて、人材が流出した可能性も考えられる。

ランキングの見方にも注意が必要だ。1位と199位では、定着率で4.2ポイントの差があるが、この程度の差ならあまり大きくこだわる必要はないだろう。しかし、母数である入社者が少ない場合、少し注意が必要だ。極端な話、入社1名の場合、3年後定着率は100%か0%のどちらかになり、その間がない。数字のブレにとらわれず、より実態が分かるように、『就職四季報』には2期分のデータ(3年後離職率)を掲載しているので、ぜひ参考にしてほしい。

就活をまだ始めていない、今の大学3年生(2019年卒生)は、このランキングを見てはじめて知る会社も多いはずだろう。ここで気付いてほしいのは、知名度と働きやすさは必ずしも一致しないということである。

3月1日の広報解禁以降は一気に慌しくなり、企業研究にじっくり取り組む余裕はないと見ておくとよい。それまでの間に、知っている会社を増やして、志望企業群をある程度絞る段階を目指してほしい。そう、すでに就活は始まっているのだ。