2016年、ソフトバンクとのクライマックスシリーズで、プロ野球最速の球速165キロをマークした日本ハムの大谷翔平(写真:共同通信)

北海道日本ハムファイターズ・大谷翔平投手のポスティングによるメジャー移籍が決まったことを受け、親会社の日本ハムは12月15日、22.8億円の特別利益を2017年4〜12月期(第3四半期)に計上すると発表した。

現段階での2018年3月期の当期純利益見通しは期初据え置きの370億円。当然、ここにこの特別利益は含まれていないが、業績予想の修正があれば「来年2月の第3四半期決算発表と同時に発表する」(日本ハム広報)という。

ダルビッシュ有投手の移籍金40億円が入った2013年3月期は、移籍金のおかげで減収減益から一転、増収増益となり、ファイターズは孝行息子となった。

今期は期初から増収増益予想で、2017年4〜9月期(第2四半期)までの進捗もほぼ計画どおり。業績に対する球団の貢献度は2013年3月期ほどではなさそうだ。

その資金使途については、「何も決まっていない」というのが親会社・日本ハムの公式見解。だが、いまだ温存されている“ダルビッシュマネー”とともに、現在計画中の新球場建設費用の一部に充当される可能性は十分にある。

地元では既成事実化している新球場建設

球団経営において、本拠地球場が“自前”かどうかは収益に大きく影響を及ぼす。物理的に所有していなくても、指定管理者の指定を受けていたり、運営権を取得していれば、球場内の広告看板収入や飲食店、グッズショップの収益は球団に入る。

プロ野球以外のコンサートやスポーツイベントなどでの賃貸収入も球団のもの。が、まったくの賃借だと、球団はもっぱら賃料を支払うだけで、これらの収益は全て球場経営会社のものになる。

ファイターズの本拠地・札幌ドームは札幌市が所有し、運営権は札幌市が55%を出資する第3セクターの札幌ドーム社が握っている。

Jリーグのコンサドーレ札幌も本拠地として使用しているため、ファイターズファーストとはほど遠い状況で、相当以前から球団は不満を募らせていた。

かねてから内々に検討を重ねていた自前の新球場建設について、建設するかしないかも含めて、2018年3月までに一定の方向性を出すことを、2016年12月に親会社の日本ハムと連名で公表している。

その球団の新球場建設についても、建設予定候補地がどこであるか以前に、そもそも建設するのかどうかも含め、親会社・日本ハムの公式見解は「何も決定事項はない」だ。

だが、地元北海道では、球団が本拠地を札幌ドームから新球場に移すことは確定、新球場の建設予定地も、札幌市が推す「真駒内(まこない)公園案」と、北広島市が推す「きたひろしま総合運動公園案」に絞り込まれていることを、当事者である札幌市も北広島市も認めている。

さらに、夏頃までは北広島市案が大きくリードしていたが、札幌市が真駒内案で巻き返しを図り、地元政界からは真駒内案有力説まで出ているらしい。

真駒内VS北広島で争奪戦


現在の札幌ドーム(写真:bj_sozai / PIXTA)

新球場誘致に真っ先に名乗りを挙げたのは、札幌市に隣接する北広島市。札幌からJR千歳線普通電車で22分、エアポート快特なら16分の距離に位置する。

候補地は「きたひろしま総合運動公園」。市が所有している36.7ヘクタールもの広大な敷地なので、球場だけでなく商業施設やホテルなどを併設した、球団が目指す「アジアナンバーワンのボールパーク」構想の実現には十分な広さであることをアピールしている。

アクセスについても、現在のJR北広島駅からだと球場入口となる場所まで徒歩で20分以上かかるため、目の前への新駅設置をJR北海道に働きかけることを宣言。新駅設置が難しければ、現在の北広島駅から球場入口まで、一度に100人運べる大型ゴンドラを整備する、とまで言っている。

このほか、一定期間の底地の賃料免除や固定資産税・都市計画税等の優遇を打ち出すなど、上野正三市長自ら積極的に誘致活動を展開している。

また、現在は公園なので、都市計画上は市街化調整区域となっており、「スタジアムは建設可能でも商業施設やホテルは建てられないため、市街化区域への線引き変更も北海道に働きかける」(北広島市企画課)という。

これに対し、札幌市内からも出て行かれてしまうことは是が非でも回避したい札幌市は、北海道大学構内案、旧道立産業共進会場周辺案の2案に加え、今年11月には3案目となる真駒内公園案も提示。

交通の利便性では北大案、共進案が勝るので、「球場に足を運ぶ市民にとっての観戦しやすさという点で、交通の利便性が高い北大案、共進案も諦めてはいないが、球団からは真駒内と北広島で検討したいと言われている」(札幌市まちづくり政策局)という。

最寄り駅の真駒内駅は、市の中心部である大通駅から地下鉄南北線で17分。現在の札幌ドームの最寄り駅である福住が12分なので、5分ほど遠くなる。さらに、駅からは徒歩で20分程度かかるので、シャトルバスでの対応になる可能性がある。

緑地の保全も図るため、対象となる敷地は3.4ヘクタールと北広島案の10分の1以下。商業施設やホテルなどは建設しない前提で、駅周辺の再開発との連携も図る戦略だ。

北広島では平和のカジノ特区計画が浮上

フルスペックのボールパーク建設が可能で、交通インフラまで整備するという北広島には、ここへ来て別の材料が浮上している。

12月14日、パチンコメーカー大手の平和が、カジノ特区申請の提案を北広島市に提出したのだ。新球場建設候補地から直線距離で3キロメートルほどの場所に、子会社のPGMが運営する札幌北広島ゴルフ倶楽部がある。

森林に囲まれた同ゴルフ場の敷地280万平方メートルの中に、総額2000億円を投じてカジノリゾートを建設、国際大会に対応できるよう、同ゴルフ場を再整備し、国際会議場や大型ホテル、温泉施設などを整備したい、というものだ。

カジノ特区の申請は、事業者が市町村に提案し、市町村が都道府県に上げ、国への申請は都道府県が行う。北海道では既に苫小牧市、釧路市、留寿都(るすつ)村が手を挙げており、いずれも行政主導であるのに対し、平和のケースは行政主導ではない。

このため、北広島市は「これから提案内容を検討する」(北広島市企画課)。平和の計画は敷地も自前なら資金も自己資金。敷地も森林によって外界から隔絶されている。

この計画が、新球場誘致に影響するのかしないのかが、現時点では全くわからない。いずれにせよ、大谷マネーとダルビッシュマネーを得た日本ハムが一定の方向性を出すと約束した期限は2018年3月だ。