女子サッカーの今シーズン最後のタイトルである皇后杯。なでしこリーグ覇者の日テレ・ベレーザがノジマステラ神奈川相模原(同8位)を3-0で下し、3大会ぶりの王座奪還でリーグ戦に続き2冠を達成した。


今季リーグ優勝と合わせて2冠を達成した日テレ・ベレーザ

 前半に見せたベレーザの巧者ぶりは圧巻だった。実力差からしても、まず先手を取りたいノジマがエンジンをかける前にねじ伏せた。開始3分、センターバックの岩清水梓からのロングフィードに合わせて、うまく裏を取った田中美南がボールを左足でピタリとコントロールすると、流れるように右足でループシュートを決めて先制。ノジマの出鼻をくじいた。

「”ベレーザはうまい”っていう前提から入りすぎた」とは、ノジマのアンカーに入った高木ひかり。全体的に出足が遅れていたノジマの守備陣は、田中の先制ゴールで持ち前のアグレッシブさを見失ってしまう。

 逆に、今大会も得点リーダーである田中を徹底して潰しにかかるノジマを見て機会をうかがっていたのが、ベレーザの攻撃を組み立てていた阪口夢穂(みずほ)だった。

「ミナ(田中)をすごく警戒していたから、2列目から飛び出した方がいいなと思って狙ってた」という阪口は、24分、再び岩清水が入れたロングボールにしっかりと合わせて追加点を奪う。これもフワリと浮かせてGK田尻有美の頭上を抜くゴール。得意のパス主導のコンビネーションだけでなく、相手の状況を見極め、的確な判断で攻撃を組み立ててゴールを奪う。ベレーザの柔軟性が生んだ2得点だった。

 このままでは終われないノジマは後半にようやく”らしさ”を感じさせるプレーに切り替わる。51分のCKのチャンスを皮切りに、ミッシェル・パオ、吉見夏稀、南野亜里沙、高木らが次々とシュートを放つ。当たりそこないでも、とにかくゴールへ向かう姿勢は、後半だけでも7本ものシュートにつながり、ベレーザの5本を上回る数字となった。

 ひとつのゴールさえ生まれれば、試合の流れを変えられそうなノジマの攻撃を防いだのは、ベレーザの守備陣だった。今大会のベレーザの守備は、準決勝で浦和レッズレディースに喫した1失点のみという堅守を通している。左サイドバックの有吉佐織とセンターバックの清水梨紗はケガ明け。不安要素がないわけではなかった。もちろん、まとめ上げるのは経験豊富な岩清水だが、的確な判断、指示で支える有吉が復帰したことで、今シーズンからコンバートされた清水、右サイドに入る宮川麻都らの強気に奪いにいく守備をしっかりとカバーできていた。

 岩清水が高い位置までファーストディフェンスに赴く際には、必ずといっていいほど守備ラインに現れたのが阪口だ。それがあるから岩清水は思い切り当たりにいく。たとえこぼれても、余裕たっぷりに阪口が拾っていくのだから、100%で阻止に向かえる。これほど頼もしいサポートはないだろう。

「人にがんばらせて最後に奪う。いいトコ取りなんです」と阪口は笑うが、そこに追い込む判断はさすがのひと言。90分間に多少のピンチはあっても、ノジマの気迫を跳ねのけた、ベレーザの隙のない守備に阪口が与えた影響は大きかった。2点リードしたからこその立ち位置という面もあるが、「ノジマ戦は、自分は少し引いた位置でゲームを作った方がいい感じがする」という自己分析がその根底にはあった。前半には自らゴールを挙げ、後半にはノジマの攻撃スイッチを見て下がり気味のポジションを取る。そのどちらも効き目抜群で、そういう動きをされてはもうお手上げだ。相手にとってはこの上なく嫌な選手に違いない。

 ダメ押しの1点は、大会得点王にも輝いた田中のひと振りだった。決めるべき人が決めて、相手の流れを断ち切る。「満足できる内容ではない」と選手たちは口にしていたが、満足できる試合などそうあるものではない。内容よりも、いかにして勝利を引き寄せるかが重要な決勝で、ベレーザならではの展開でつかんだタイトルだった。

 対するノジマも俯(うつむ)くばかりの内容ではない。確かに下馬評からしてベレーザ有利の見方が大半ではあったが、創設メンバーの引退など節目を迎えたノジマにも十分に戦えるチャンスはあった。ノジマとしては若さと大一番での経験不足が露呈し、らしさを自ら手放してしまった前半の戦いに悔いが残る。しかし、粘り強いプレーで女王と互角に戦った後半を見れば、このメンバー最後の試合として戦ったこの決勝は、来シーズン以降へ向けての最高の試金石となったはずだ。

 勝者には勝者の、敗者には敗者の想いがある。3-0というスコアだけでは表すことのできない、含みの多い皇后杯決勝だった。

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