皇后杯で3大会ぶり12回目の優勝を飾った日テレ・ベレーザ。リーグ戦と合わせ、今季二冠を達成した。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 第39回皇后杯全日本女子サッカー選手権大会の決勝が24日に行なわれ、ノジマステラ神奈川相模に3-0で勝利した日テレ・ベレーザが、3大会ぶり12回目の皇后杯を制覇した。日テレはプレナスなでしこリーグ優勝を合わせて、今季は二冠を達成した。
 
 主力の代表選手7人を欠いたなでしこリーグカップ1部は準決勝で敗退したが、日テレにとっては充実のシーズンだったと言える。
 
 日テレは開幕前、DF有吉佐織が負傷で長期離脱し、シーズン途中からはDF村松智子も離脱した。ディフェンスラインの主力2名を欠いたが、DF清水梨紗がセンターバックにコンバートされて安定感を取り戻した。リーグ戦18試合でわずか8という失点数はリーグ最少で、3試合を残して早々に3年連続15度目のリーグ優勝を決めた。キャプテンのDF岩清水梓を中心とした守備は、皇后杯でも揺るがず、5試合を戦って1失点のみだった。
 
 攻撃面では近年、なでしこジャパンでも台頭著しいFW田中美南が牽引している。なでしこリーグ2年連続の得点王に続き、今回の皇后杯でも5試合で7得点を挙げて大会得点王に輝いた。「ゴールという結果でチームを助けることができているのは、自分の中での成長」と、田中本人も今季を振り返って納得の表情だ。
 
 先のE-1サッカー選手権でも3試合で2得点を決め、田中はなでしこリーグで点が取れる選手から、代表で点が取れる選手になってきた。「体幹を鍛えたことにより、今季は身体の軸がぶれずにシュートできるようになった。それが彼女の大きな成長」と、日テレの森栄次監督は評する。
 
 その攻守をつなぐのが、なでしこリーグ最優秀選手賞を3年連続で受賞したMF阪口夢穂だ。日テレのリーグ3連覇の中心には常に阪口がいて、冷静にピッチを見渡せる視野の広さと状況判断の確かさは、選手層の厚い日テレでも“替えが利かない”ほどだ。
 なでしこジャパンの2011年女子ワールドカップ優勝や、2012年ロンドン五輪準優勝の前後は、INAC神戸レオネッサが澤穂希や川澄奈穂美など多くの実力選手を揃えたため、INACが様々なメディアに登場し、当時の日本女子サッカーを牽引した。実際に2011〜13年は、INACがリーグで3連覇して隆盛を極めた。
 
 しかし、2014年に6位でシーズンを終えるなど、その後は低迷する。再建を託された松田岳夫監督は3年間で皇后杯を2連覇したが、なでしこリーグ制覇には最後まで手が届かず、今季限りでの退任が発表された。
 
 そして、日本女子サッカーの時代は今、INACから再び日テレへと移り変わってきた。
 
 日テレは過去にリーグ4連覇を2回達成しているが、2回目の4連覇を経験している岩清水は「確かに今は黄金時代と言えるかもしれないが、以前の4連覇の強さとは、違う強さだと思う」と話す。
 
 確かに今の日テレの主力はまだ成熟期ではなく、まだ若く伸びしろがあるため、4連覇、そして前人未到の5連覇も視野に入っているだろう。もちろん、それほど簡単になせる業ではない。先述したINACの時代は、同時に日テレ低迷の時代でもあった。日テレ一筋の岩清水は振り返る。
 
「自分はその当事者だったし、実際にINACは強かった。悔しさを抱えながら過ごしていたので、辛かった部分はある。でも、あの頃があるから、今があるのかもしれない。日テレには若手が揃ってきて、それをキャプテンとして経験できているのは、本当に長い間サッカーをやってきて良かったなと思える瞬間。過去の強かった日テレに匹敵するくらいにはなってきたかな」
 また、日テレの主力に加わりつつある、さらに若い才能もいる。U-19日本女子代表のFW植木理子は、日テレ・ベレーザの下部組織である日テレ・メニーナ所属ながら、ベレーザのリーグ戦全試合に出場。皇后杯では3試合連続得点もマークした。メニーナには、他にも育成年代の代表チームで活躍する、MF菅野奏音やMF木下桃香という新たな才能も控えており、下部組織の充実は、今後の日テレを明るく照らしそうだ。
 
 なでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)は今季で29年目を迎えたが、そこで日テレは15回目の優勝を勝ち取った。来季は、30年目という節目だ。その中心は再び日テレなのか、それともINACが巻き返すのか。初の皇后杯準優勝となったノジマを始め、他チームもリーグ戦の上位を窺っている。
 
 日テレの一強が続きすぎると、これは日テレの選手にとっても、あまりいいことではないだろう。日テレを実力でねじ伏せるチームが出て来た時こそ、日本女子サッカーがまたひとつ、階段を上ったと言える時ではないだろうか。
 
取材・文●馬見新拓郎(フリーライター)