starRo×鈴木貴歩が考える、“東京”の音楽シーン 「良い意味でも悪い意味でも別格」

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 11月30日から12月2日まで渋谷ヒカリエを中心に開催されたダンスミュージック国際カンファレンス&イベント『Tokyo Dance Music Event(TDME)』。音楽業界に関わる識者やアーティストなどを招き、様々なカンファレンスやデモンストレーションが行われ、世界中から観客が集まった。今回リアルサウンド編集部は12月1日のイベントに参加。本稿ではエンターテック・アクセラレーターの鈴木貴歩氏がモデレーターを務め、ロサンゼルスを拠点に活動し、第59回グラミー賞の最優秀リミックス・レコーディング部門にノミネートされたstarRoを迎えたカンファレンスの模様をレポートする。カンファレンスでは、ストリーミングリリースしたデビュー曲「Best Part of Us(feat. Michael Kaneko)」が各国のSpotifyユーザーから人気を博し、楽曲の9割以上が日本国外で再生されるなどグローバルに活躍するクリエイティブユニット・AmPmとのコラボや、10年以上に渡って在住しているLAと東京の違い、発展するアジアと東京の関係性に至るまで、熱いトークセッションが繰り広げられた。(編集部)

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■「僕のモットーは“こだわらないことがこだわり”」(starRo)鈴木貴歩(以下:鈴木):AmPmとのコラボ楽曲(「Maybe feat.Friday Night Plans」)、非常に戦略的な組み合わせだなと思いました。

starRo:リリースの背景には「東京発の音楽を世界に発信したい」という思いがありました。ただ発信するのではなく、Spotifyなどの世界でメジャーになってるクラウドフォームから音楽を発信して、良い音楽を見つけたらそれがたまたま東京(の音楽)だったという形にしたいな、と。AmPmは今世界中で愛されているアーティストなので、一緒に組んで東京、日本という国や地域の垣根のない音楽を発信していこうというところからコラボが始まりました。

鈴木:AmPmは音楽もさることながら、プロモーションの方法が面白い。Spotifyのプレイリストやレコメンデーションの中に自分たちの楽曲が登場しやすいようにするためにアルゴリズムを解析して、自分たちの音楽を浸透させる、という今までにいなかったアーティストだと思います。こうした彼らのハッカー的なアプローチはstarRoさんにもインスピレーションを与えましたか?

starRo:そうですね。ただ実は海外では普通にやっていることで、例えばSoundCloudに音楽をポストしてそれがいかに広がるかを試行錯誤したり。その究極の形がAmPmだった。

鈴木:starRoさんもSoundCloudに音楽をポストするところから始めたと伺っています。単にポストするのではなく、どうやって広げていくかも意識されていたんでしょうか。

starRo:はい。いくら自分が良いものを作っても、人に届かなければ意味がない、という意識を持ちながら活動していくのが重要だと思います。

鈴木:starRoさんの音楽には、影響を受けている音楽の要素もありつつ、どこかユニバーサルというか無国籍なフレーバーも感じます。こだわりなどあれば教えてください。

starRo:僕のモットーは“こだわらないことがこだわり”。このジャンルを作ろうっていうこだわりを持たないで作って、その時によく聞いている音楽などの影響を曲に取り入れるんです。中でもR&Bやジャズの影響が大きいのでコード感は非常に重要で、インストだとしても必ず歌モノを作ってるような感覚で作るようにしています。

■「(LAに)いるだけで刺激を受ける」(starRo)鈴木:starRoさんは10年ほどLAに住まれていますが、(活動の)ベースになっているLAから見た、日本の良いところをあげるとしたら?

starRo:色々な音楽が東京に流れてくるというところですね。本当に皆さんジャンルレスに色々な音楽を知っているな、と感じます。

鈴木:逆にもっとこういうことをやればいいのに、と思うことはありますか。

starRo:(音楽の)受け手としては素晴らしいと思うんですが、発信サイドが日本国内で止まってしまっている印象を受けます。

鈴木:なるほど。色々なものを吸収はしているけど、発信は国内までにとどまっている、と。10年LAに住まれて感じる、LAの特殊性は?

starRo:ここ5年くらいのLAは、10人に聞いたら8人は「LAが今音楽シーンで一番盛り上がっている」と言うと思います。それは住んでいても感じますね。いるだけで刺激を受けるというか。ネットが発達している時代なのでどこにいても活動はできると思うんですけど、だからこそ実際にアーティストと会ってコラボしたり、遊んだりすることが重要だと痛感してます。

鈴木:一般的なLAのイメージって、高速があって、広くて、どこに行くにも車で移動して……という感じですが、具体的にはどんな場所なのでしょう。

starRo:例えば東京だと渋谷の街を歩いていたら音楽が常に聞こえてきたり、洋服もそうですけど、インスピレーションが常に降りかかってくるイメージ。LAはコーヒーを飲みたいと思ったら自分の好きなコーヒーショップに車で5分かけて行くとか、音楽を聴きたいと思ったらクラブに行くとか、目的意識を持ってその場所に行かないとインスピレーションが得られないんですよ。それが逆に面白くて、ただダラーっとしていたら何もインスピレーションを受けないんですけど、モチベーションが高い人たちが自然にそのスポットに集まっているので、すごく濃いんです。

■「(アジアと)東京との隔たりを毎回行くたびに感じる」(starRo)鈴木:starRoさんはアジアツアーから戻られたばかりということですが、個人的に最近はアジアが面白くなっていると感じます。

starRo:面白いですね。そもそもまず「経済がバグってんなぁ」と感じます。

鈴木:インドネシアとかは人口も多いですし、全体的に上り調子ですよね。

starRo:その流れに乗って、音楽シーンも燃え上がっている。クラブもどんどん建っていっているし、いわゆる(ランキングの)TOP40みたいなものではないコアな音楽を聴いているキッズも増えているので、クラブに行ってもパンパンですし、盛り上がっているんですね。そこがいいなと思いますが、一方で東京との隔たりを毎回行くたびに感じる。

鈴木:そうなんですか。どんなところに?

starRo:みんな東京にリスペクトがあるんですよね。「東京すげぇ、超行きてぇ」とか言うんですけど、実際に行ったことはなかったり、東京にどんな人がいるか、とかは分かっていなくて、漠然と「すげぇ」みたいな感じで、遠慮してるというか。例えばアジアツアーをするアーティストも、東京だけ日程から抜けてたりするんです。アジアの中で東京は良い意味でも悪い意味でも別格で、アジアという枠に入っていないことを痛感します。

鈴木:アメリカにおけるアジアのプレゼンスも上がっているという話を聞きましたが、starRoさんから見てもそうですか?

starRo:LAの音楽シーンが今盛り上がっているということとも繋がってると思うんですけど、LAはアジアンコミュニティの人口が多いので、アジア人アーティストがTOP40に食いこんだりすることが少しずつ起きています。これまではアジア人であることをあまり推さない方が良いんじゃないか、とされていたんですが、今はどんどん「俺たちはアジア人なんだから、みんなで組んでやっていこうよ」みたいになっていて。それが功を奏している感じはありますね。

鈴木:なるほど。starRoさんは今後も拠点はLAに置き続けるんですか?

starRo:あまりそこはこだわってないです。今はLAが一番ですけど、例えば僕が今後映画音楽に集中するとか、色々な活動に可能性があると思うので、それに合わせて活動拠点を変えていこうと考えています。あまり同じところにい続けるのは良くないかな、と。(村上夏菜)