AIが写真を変える? ファーウェイMate 10 ProのAIシーン認識はP10を超えたのか

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ファーウェイ・ジャパンが、12月1日に発売した「HUAWEI Mate 10 Pro」は、2017年を締めくくるにふさわしいハイエンドスマートフォンである。

アスペクト比18:9の6インチ大画面と、6GB RAM・128GB内部ストレージ、そしてAI演算用のNPU(Neural-network Processing Unit)を搭載した最新のチップセット「Kirin 970」を搭載する、」押しも押されもしないフラグシップモデルだ。

注目は、新規に搭載されたNPUの役割だ。
1つは、ユーザーの振る舞いを学習し次の振る舞いを予測することで効率の良いシステムリソースの使い方ができるのだという。

要するに、いつまでもサクサクが続くと言うことなのだ。
意外と地味な裏方に、なぜAIが使われているか? と思われるだろう。
しかし、この一連の流れをCPUで行おうとすると、折角のハイスペックなリソースが機械学習のために占有されてしまうため、逆にパフォーマンスが落ちることにもなる。

そしてもう1つのNPUの使い方が、機械学習を利用したカメラにおける被写体とシーン認識である。
たとえば、カメラを料理に向ければ、彩り鮮やかで美味しそうな写真がオートで撮れるというわけだ。

今回は、そのAIを搭載するカメラの性能を「HUAWEI P10」と撮り比べてみた。はたして、AIによる画像認識はフラグシップスマートフォンに相応しいカメラ機能なのだろうか?

Mate 10 ProとP10はともに光学式手ブレ補正付きのライカのダブルレンズを搭載し、1200万画素のRGBカラーセンサーと2000万画素のモノクロイメージセンサーで、様々なシーンに対応する。

この2機種の違いは、レンズの明るさだP10のレンズはF2.2の「LEICA SUMMARIT-H」であるのに対して、Mate 10 Proはさらに明るいF1.6の「LEICA SUMMILUX-H」である。

焦点距離はどちらも35mm判換算で27mm。2機種を比較する上でカメラの特性上、角度が変わっただけで露出が変化してしまうのだが、それを踏まえた上で比較したところモノトーンの壁面の撮影ではそれぞれのトーンカーブの作り方に違いが出た。


Mate 10 Proはシャドー部分を持ちあげた階調重視の仕上がりとなった。



一方、P10はシャドー部分が暗く、メリハリのあるものとなった。記憶色に近いのはMate 10 Proだが、写真としてはP10の方が様々な影の階調が残っていてこちらも悪くはない



<Mate 10 ProのRAWデータ>

RAWデータでは、両機種ともに周辺減光が見られた。F値の異なるレンズだが、写りは同じ傾向である。


<P10のRAWデータ>




ダブルレンズカメラの特徴でもある「ワイドアパーチャ」機能によるボケの表現は、Mate 10 Proはボケない箇所が見受けられるが、正確に距離を把握しているようだ。



P10は、ボケない箇所がMate 10 Proとは傾向が異なり、同じ面であってもボケない箇所があるなど、残念な箇所がある。色々テストしてみた結果、ワイドアパーチャに関してはMate 10 Proの方が好ましい結果がでることが多い印象だ。



Mate 10 Proは被写体を花と認識し、ホワイトバランスや色合いなど温かい雰囲気に調整している。



ホワイトバランスに関しては正確だと思っていたP10だが、色温度が低く全体的に寒色系の仕上がりだ。冬の花壇なので寒い雰囲気が伝わってくるという解釈もできるが、被写体の色合いを表現するなら、Mate 10 Proの方が好ましいように思う。



日の入りのころに撮影してみたところ、Mate 10 Proはシーン認識によって空の階調を残し、シャドー部分を持ちあげた仕上がりだ。



P10は、輝度差に反応したのか見た目以上に暗い仕上がりとなった。夕焼けを表現するならP10の方が色濃くでるのだが、Mate 10 Proの明るい所から暗いところまで階調を残す方が綺麗に見える。ほぼ、まるで写真家の作風に近いような表現の違いがこの2機種にはあるようだ。



Mate 10 Proの被写体認識は、機械学習した画像と素材を照合し認識しているようで、盛り付け方を変えても料理として認識した。Mate 10 Proは、あまり派手目に誇張せずに自然に素材の色彩を表現している。



P10は、特に被写体が何であるのかを認識していないため、ホワイトバランスや明るさなど料理としてはよろしくない結果となった。Mate 10 Proのような仕上がりにするには、プロ写真モードでホワイトバランスと明るさを調整する必要がある。




最後は夜景だ。Mate 10 Proは、シーン認識によって驚くべき階調表現を見せてくれた。本来ならこれだけの明るさを出すには三脚を使ってスローシャッターで撮影する必要があるのだが、手持ちでこの明るさで撮影できたことに驚いた。
仮に三脚を用いてスローシャッターで撮影したとしても、明るい部分の階調を残すとなるとRAWで撮影して調整する必要があるだろう。




P10は、見たままの明るさとなった。Mate 10 Proと比較すると奥の明るさは近いのでHDRによる階調表現であることがわかる。

これまでP10のホワイトバランスの良さと、色の出方が気に入っていたのだが、Mate 10 ProのAIによる画像認識とそれにあわせた画像処理は、効果的であることが分かった。

とはいえ撮影したなかには、期待したものと違う結果となることもあるので、撮影者の好みをAIで学習しながら、やがて自分好みの絵が撮れるカメラへ進化して欲しいと感じた。


執筆  mi2_303