学生のスマホ保有率はほぼ100%という中、企業の半数がスマホに対応できていないのが、現実です (写真:しげぱぱ / PIXTA)

マイナビが主催する合同企業説明会では、今年から、スマホ(スマートフォン)を使って入場するシステムを導入しました。これまで、学生から紙の受付票を回収していましたが、持っているスマホに表示されるQRコードで入場を確認するようにしています。

時代は変わったのだと感心するとともに、スマホがどの程度「インフラ化」しているのか、関心を持ちました。実際のスマホの保有状況を、総務省の「平成28年通信利用動向調査」で追うと、全年齢では56.8%に留まるものの、20代(20〜29歳)に限定すると、94.2%に達します。いうまでもなく、スマホは若い世代の必須アイテムとなっています。

ほぼすべての学生がスマホを保有


今回は、スマホを学生たちがどのように就職活動で活用しているのか、また採用難が続く企業の対応状況を検証したいと思います。

「2018年卒マイナビ大学生のライフスタイル調査」(以下、ライフスタイル調査)で調査したスマホの保有率をみると、2012年卒以降年々上昇、2018年卒では98.5%と、ほぼすべての学生が保有しているといってよい状況になっています。

これは地域や文理男女などに関係なく、一律で9割を超えています。1日の利用時間は「3時間以上」が62.4%。こちらは男女で差が見られ、女子は「3時間以上」が71.7%と、男子の54.7%を大きく上回っています。これは、女子のほうが友人とのコミュニケーションや情報収集を熱心に行う影響で、長時間の利用になっていると推測されます。


今年流行語大賞に選出された「インスタ映え」する写真をアップしたり、LINEで複数のグループを作り友達関係を維持したりするなど、コミュニケーションツールとして無くてはならないものになっています。

ここからは、学生が就活でどのようにスマホを活用しているか、見ていきます。就職情報サイト「マイナビ」にエントリーする際、2年前の2015年時点では「パソコン経由」が6割を占めていました。しかし、今年は「スマホ経由」が6割となり、比率が逆転しています(3月末時点)。またマイナビの調査では、「就職情報サイトのアプリ」の使用率は64.5%(前年比15.5ポイント増)と、前年より大きく増加しています。

スマホを就活でどのように使っているのを聞くと、「企業セミナーの予約・確認」87.2%、「地図の閲覧」77.9%が上位に挙がりました。人気企業の個別説明会の予約はすぐに埋まってしまうため、スマホを使えば、どこでも即座に予約をすることができ、会場に向かう際には地図機能も活用できます。

スマホでエントリーシートも入力


さらに、「企業からのメッセージの確認」74.7%、「面接の予約、確認」67.3%が続き、どこにいても企業から連絡があればすぐ対応する、という姿勢も感じられます。さらに、この選択肢にはありませんが、エントリーシートの作成でもスマホを活用している学生が増えています。使い慣れたフリック入力や音声入力などを活用、メモアプリに草案文章を作成し、文章アプリなどを使って推敲・提出しているそうです。また 「企業研究や業界研究」も、5年前から大きく伸びています(5年前比で21.0ポイント増の53.4%)。

このように、学生はスマホの小さな画面で業界・企業研究からエントリー、セミナー予約、さらにはエントリーシートの作成まで、フル活用していることが分かります。前述の総務省の調査でも、世帯あたりのPC保有割合が頭打ちとなっており、PCを使わず就職活動を進める学生が増えていると思われます。さすがに企業に提出する証明写真を、加工アプリで自ら修整する学生の話は聞いたことはありませんが、近い将来、学生が自撮りの写真を加工して提出するのが当たり前の時代になるかもしれません。


「モバイルフレンドリーテスト」の画面

では採用難に喘ぐ企業側は、学生のそういった現状にどのように対応しているのでしょうか。今回、企業の採用ホームページがどのくらいのスマホに”最適化”しているのか、検証することにしました。就職情報サイト「マイナビ2018」に掲載されている約2万3000社の企業から、従業員規模や業界に区分してそれぞれ20社ずつランダムに抽出し、計480社の採用トップページを1つ1つ調査しました。

スマホの最適化に関する定義は、Google社の「モバイルフレンドリーテスト」を活用し、スマホでの閲覧に適しているかどうかを判別しました。モバイルフレンドリーテストとは、Googleがスマホ最適化の判断基準として示しているいくつかのポイント(文字の大きさ・ボタン同士の間隔・表示領域の調整可否など)を、自動判別するものです。最適化されていれば、「このページはモバイルフレンドリーです」と、そうでなければ「このページはモバイルフレンドリーではありません」と表示されます。

最適化企業は約半数の52.9%


結果、各カテゴリー別のスマホ最適化割合は、次のようになりました。

全480社中、スマホに最適化していた企業は254社で全体の52.9%。多くの学生がスマホで採用ホームページを閲覧しているにも拘らず、半数近い企業は対応できていないということになります。

従業員規模別に比較してみると、大企業(従業員1000人以上)は64.4%と対応率が比較的高いものの、中小企業(従業員299人未満)は43.1%と、対応の遅れが見られます。業界別では、対応率が最も高かったのは「マスコミ」の71.7%で、最も低かったのは「メーカー」の35.0%と、ダブルスコアの差がつきました。

他にも「ソフトウエア・通信」の61.7%、「流通・小売」の60.0%など、自社の商材に関連する業界やBtoC系の企業は、ホームページ自体の最適化も含め、対応が進んでいる印象が強いです。一方、最下位の「メーカー」や「商社」の45.0%などは、BtoB系の企業が多く、ホームページ自体が最適化されていないケースが多く見られます。

「官公庁・公社・団体」も45.0%と低く、多くの市民に見られる機会が多い割には、対応が遅れているようです。予算との兼ね合いもあると思いますが、検討の必要性を感じる結果となっています。

もちろん、モバイルフレンドリーテストで未対応だとしても、「表示されない」とか「情報が読めない」というわけではありません。ただし、文字が小さすぎて拡大しないと見えないものや、クリックしにくいという状況は学生にストレスを与えます。パソコンベースで内容が充実し、魅力的な採用ページを作っても、学生には伝わらない可能性もあるのです。

マイナビの調査でも、主にスマホで採用ホームページを閲覧する学生の7割が「採用ホームページがスマホに最適化されていたほうがよい」、と回答しています。

では企業はどのように対応すれば良いでしょうか。一言で「スマホに最適化したサイト構築」というのは簡単ですが、改修には一定の費用がかかります。毎年変わる新卒採用に、そこまで多額の費用をかけられないという企業もあると思います。

最適化すれば、Google検索の上位に来る

一方、Googleは、2015年4月21日以降、スマホでの検索において、「スマホに対応」したサイトを優先的に表示すると発表しています。つまり検索順位に影響を及ぼすことになるのです。 自社のサイトを少しでもスマホの検索結果上位に表示させるためには、多少投資をする必要もあるのではないでしょうか。

今回の検証で、学生の就活におけるスマホの活用に対し、企業のインフラが追いつけていない状況が改めて浮き彫りになりました。その対応策にはさまざまな方法がありますが、1つ確かなことは、今後、自社の採用情報を発信するには、常にスマホ環境への対応を念頭において準備する必要がある、ということです。

それだけではなく、すでに、スマホを利用した新たなサービスも生まれています。たとえばスマホを通じた面接診断サービスでは、学生は画面に表示される面接官の質問に答えていくだけで、カメラで録画された学生自身の回答内容を基に、自社にマッチした人材を判断するサービスです。

今後、このようなサービスがどんどん生まれてくることで、採用におけるスマホの活用方法も、さらに進化していく可能性があります。採用活動専用のアプリを開発する企業も出始めています。人事担当者のみなさんは、時代に乗り遅れないよう、最新の動向を注視しておきましょう。