『ACROSS THE FUTURE 2017』が提示した、ラウドロック/エクストリームミュージックの未来

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 Crossfaithがオーガナイズするライブイベント『ACROSS THE FUTURE 2017』が、12月3日に新木場STUDIO COASTにて開催された。2014年からスタートしたこのイベントは“未来の向こう側”をテーマに、ジャンルの壁や国境、国籍をも超越することを目指したもの。Crossfaith結成10周年という記念すべき年に開催される今回は、盟友coldrainやa crowd of rebellion、Survive Said The Prophetといった国内若手バンドに、アメリカからI See StarsとMiss May Iの2組を迎えた計6バンドが出演し、約6時間にわたり熱演を繰り広げた。

(参考:マンチェスターテロ事件から改めて考えたーーCrossfaithが語る、“音楽で表現すべきこと”

 日曜とはいえ、16時開演という通常のライブと比べてかなり早い時間からスタートした『ACROSS THE FUTURE 2017』だったが、トップバッターのSurvive Said The Prophetがステージに登場した時点で、フロアは血気盛んなキッズですし詰め状態。不穏なSEに導かれて登場した彼らが「Lost in Time」からライブをスタートさせると、そのエモーショナルかつカオティックなサウンドに対してフロアから熱い声援が送られた。しかも、イベントのオープニングにもかかわらず、この曲の中盤ではCrossfaithのKoie(Vo)がステージに姿を現し、激しいスクリームでオーディエンスを沸かせた。Survive Said The Prophetはその後も緩急自在のサウンドと音の空白を効果的に活かした演奏スタイル、フロントマン・Yosh(Vo)の巧みなボーカルワークで観る者を惹きつけた。

 30分という短い演奏時間ながら、その存在感を存分に発揮したSurvive Said The Prophetに続いてステージに登場したのは、新潟からの刺客a crowd of rebellion。オープニングナンバー「M1917」のギターリフが鳴り響いた瞬間、フロアには大きなサークルモッシュが発生し、会場の熱気は一気に高まる。a crowd of rebellionはスクリーモのスタイルを維持しつつも、1曲の中にJ-POPやギターロック、あるいはボカロナンバー的な側面などを次々に繰り出し、独自の存在感をアピール。また、ライブ序盤に宮田大作(Vo)がウォール・オブ・デスを促すジェスチャーを見せると、フロア中央に空間ができ、「O.B.M.A.」のスタートと同時にオーディエンスは左右から中央に向けて突進。そのエクストリームなノリで、フロアの盛り上がりは一気に沸点まで達した。

 3番手としてステージに現れたのは、このイベントのために来日したMiss May I。Crossfaithやcoldrainとも共演経験を持つ彼らは、パンパンに詰まったフロアを前にオールドスクールなメタルコアサウンドを展開。リーヴァイ・ベントン(Vo)はひたすら激しいスクリームを会場に響かせ、血気盛んな日本のキッズたちを煽り続ける。そして観客もこの熱演に、ありったけのパワーで暴れることで応えていく。そんなシチュエーションを前に、リーヴァイは嬉しそうに「今夜、君たちは俺たちのファミリーだ!」と挨拶。その後も緩急自在なヘヴィサウンドを轟かせ、フロアを熱狂の渦に巻き込んだ。

 Miss May Iの熱演を引き継ぎ、ステージに登場したcoldrainは新作『FATELESS』のオープニングナンバー「ENVY」から勢い良くライブを開始。彼らがライブを始めた途端に会場の空気が一瞬にして変わったことは、特筆しておきたい事実だ。正直、彼らがヘッドライナーなんじゃないかと錯覚するぐらいの熱を帯びたライブパフォーマンスは、Crossfaith同様に海外の荒波に揉まれたバンドならではの説得力が備わっており、それが1音鳴らしただけで空気を一変させるだけの力強さになっているのだろう。そう考えると、彼らが年明け2月に初の日本武道館単独公演を行うというのも、非常に頷ける。

 Masato(Vo)はライブ中、「日本のエクストリームな音楽は、ここまできてるんですよ!」と笑顔で語ったが、Crossfaithやcoldrainはもちろんのこと、Survive Said The Prophet やa crowd of rebellionといったバンドの存在感や独自性が海外のバンドと比較しても引けを取らないことは、この日のイベントを観れば一目瞭然だ。そんな頼もしさを見せるcoldrainは、巨大なサークルモッシュを前にエネルギッシュなパフォーマンスを繰り広げ、ラストに演奏した「The Revelation」でこの日何度目かのクライマックスに到達。Miss May Iのライアン・ネッフ(Ba)は興奮のあまり、ステージ袖からフロアに向けてステージダイブを繰り広げる一幕もあった。

 coldrainの好演に負けじと、独創的なサウンドを携え登場したのがI See Stars。ラウドなバンドアンサンブルにエレクトロな味付けを施した彼らのエレクトロニコアサウンドは、時にダンサブルに、時にエモーショナルに鳴り響き、オーディエンスを魅力していく。ロックスター然とした佇まいのデヴィン・オリヴァー(Vo)は、ステージ上をところ狭しと動き回りながら、目の前の観客とコミュニケーションを図りつつ、自分たちの空気感を作り上げていく。その変幻自在なサウンドは、この日出演した6組の中でも異質なもので、改めてラウドな音楽の中で独自性を見つけることの重要さについて考えさせられた。

 そんな筆者の思いなどお構いなしに、I See Starsはマイペースにステージを展開していく。曲間にはちょっとしたインタールードなども挟み、その熱量を一瞬たりとも下げることなく激しさとメロディアスさを伴う楽曲を連発。ラストナンバー「Murder Mitten」ではドラマチックさとヘヴィさを兼ね備えたサウンドで、クライマックスを迎えた。

 この日のラストアクトを務めたのは、『ACROSS THE FUTURE 2017』オーガナイザーのCrossfaith。オープニングSE「System X」をバックにメンバーがひとり、またひとりとステージに登場すると、Koieの「待たせたな、新木場!」を合図にバンドは「Freedom」からライブをスタートさせる。イベント開始からすでに5時間以上経過していたが、オーディエンスはそんなことお構いなしにCrossfaithのヘヴィなサウンドに身を委ね、モッシュやクラウドサーフで自身の感情を表現。続く「Rx Overdrive」ではフロア中央に巨大なサークルピットが発生し、「Jägerbomb」ではI See Starsのメンバーがステージダイブするなど会場は興奮のるつぼと化した。

 MCではKoieが観客に向けて「心の底からホームと思える」と話すと、そのままシャンパンボトルの栓を開けてオーディエンスに振りまくハプニングも。その後は「Wildfire」「Revolution」などダンサブルな楽曲が連発され、会場に設置されたミラーボールのまばゆい光もあってフロアはダンスホールへと一変。さらに、盟友coldrainからMasatoをステージに呼び入れ、Linkin Parkのカバー「Faint」を披露して観客を驚かせた。Crossfaith、coldrain両バンドのルーツのひとつであるLinkin Parkの楽曲をここで披露することは、今年7月に亡くなったチェスター・ベニントンへのトリビュートという意味だけでなく、日本のラウドロック/エクストリームミュージックはここまで成長したんだという事実を証明しているようにも受け取れた。実際、この日の「Faint」はこれまで目に/耳にしてきたどんなLinkin Parkのカバーよりも、深い愛情が込められた好演だったと断言できる。この豪華なコラボレーションを目撃することができたオーディエンスは、自身が歴史の目撃者のひとりになったことを覚えておいてほしい。

 アンコールでは、Koieの合図でウォール・オブ・デスが始まる「Countdown To Hell」を披露。モッシュの渦に巻き込まれて倒れた観客を助けるため曲が中断するハプニングもあったものの、大きな事故もなく6時間におよぶ一大イベントは幕を下ろした。

 一口でラウドロック/エクストリームミュージックと言っても、その中にはさまざまなタイプのバンドが存在する。この日出演した国内バンド4組も、楽曲やサウンドスタイルは異なるものを持っており、そこに海外からの2組が加わることで、実はラウドロック/エクストリームミュージックは多面性を持つジャンルだと気づかされる。改めて、こういった国内外の個性的なバンドを多数招聘し、このジャンルの未来は明るいものであると証明し続けるCrossfaithに賞賛を送りたい。

 このイベント中に発表されたように、Crossfaithは年明け1月24日にニューシングル『WIPEOUT』をリリースする。結成10周年を経て、さらにスケールアップを続ける彼らは、今後も『ACROSS THE FUTURE』を通じてラウドロック/エクストリームミュージックの“未来の向こう側”を提示してくれるはずだ。(西廣智一)