「苦しくてもキラー特許は押さえなければならない」(阪根さん。後ろにあるはランドロイド)

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 ベンチャー企業の知的財産経営が注目されている。開発型ベンチャーであれ、ブルーオーシャン(未開拓市場)を切り開くベンチャーであれ、経営資源に限りがある小さな企業にとって最大の武器となるのはやはり知財。どのように攻め、どのように守り抜くのか。全自動衣類折り畳み機の開発企業として話題のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(東京都港区)の阪根信一社長に聞いた。

 セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズは2014年設立。阪根社長の父親が経営するアイ・エス・ティ(大津市)から独立した。洗濯物折り畳み機の開発で一躍注目を浴びている。

 ―カーボン・ゴルフシャフトに一般医療機器「ナステント」、そして世界初の洗濯物折り畳み機「ランドロイド」。あまりに分野がバラバラですが、自社の技術シーズを水平展開することなどは重視しないのですか。
 「世の中にまだないものを開発テーマに選ぶので、どうしても技術を一から開発しなければならない。テーマはあくまでニーズから選ぶが、技術シーズの開発は普通の会社と同じようにゴリゴリとやっていますよ」

 「ただ、なまじっか技術力がある企業は、自分の持っている技術を応用すれば、あれができる、これができるなどと、シーズからシーズへと思考が展開しがち。大学での研究ならそれで良いのかもしれないが、企業がそれではいけない。ビジネスだから、売れなければ意味が無い。だからニーズから選ぶんです」

 ―ランドロイドの開発はずっと秘密で進めていたそうですね。
 「2005年から開発を進めていましたが、銀行に話したのは2014年。提携相手となるパナソニックに話したのは2015年6月で、これが銀行以外では初めてだった。そして2015年10月開催の家電見本市『CEATEC(シーテック)ジャパン』で発表した」

 「銀行から何に研究費を使っているのかと聞かれても、未来の技術に投資していますとだけ答えていた。懸念したのは、開発テーマを公にしてしまうと、まねされてしまうこと。だから徹底して秘密裏に進めていた。すべて知財を守り抜くため。まあ、折り畳み機なんて言ったら、融資を引き上げられてしまっていたかもしれないですね」

 ―知財への意識はもともと高かったのですか。
 「大企業出身の父は、私が中学生の時に研究開発ベンチャーを興しています。そこで知財でいろいろな戦いをしてきた姿を見てきましたから、知財や機密保持に対する意識は非常に高いと思っています。小さい規模の割りにはぬかりなくやっているのでは。ランドロイドも相当の特許を出願してきたが、他社に話を持って行く直前に、もう一度弁護士などを交えて特許を見直しました。だから5月31日出願の特許もある。我々なりに万全にできる範囲のことをやってきました」

 ―どのようなお父さんですか。
 「父は会社を立ち上げた時、田舎のバラックを出世払いで手に入れたのですが、その窓硝子にフィルムを貼る手伝いをしました。窓の外には田園風景が広がり、せっかく良い景色なのにもったいないと不平を漏らしたんですね。そうしたら『何言っているんだ。ここから新しい技術が続々と生まれるのだから、外から見られてはいけないんだ』と怒るんです。まったくがらんどうだったのに」

 ―ご自身が知財で経験したことは。
 「父の会社で私が社長を務めていた時、取引先に特許係争をしかけたことがあるんです。侵害されていると。でも結局、勝つことはできませんでした。このまま続けても損にしかならないと、手打ちにするしかなかった。製造特許だったのですが、これは非常に戦いにくい。侵害を証明するには相手の工場に踏み込まなくてはならないのですから」