マーリンズの新オーナーに就任したデレク・ジーター氏【写真:Getty Images】

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チーム再建と財政整理は必須課題も、問題は「そのやり方」

 マーリンズ新オーナーの1人として最高経営責任者(CEO)に就任し、チーム再建の大なたを振っている元ヤンキース主将デレク・ジーター氏。ディー・ゴードン内野手、ジャンカルロ・スタントン外野手、マルセル・オズナ外野手ら主力選手を次々トレード放出したため、19日(日本時間20日)のファンミーティングでは辛辣な言葉を浴びせられる“大炎上劇”にあった。名門ヤンキースのスーパースターとして“優等生”のイメージを最後まで崩さなかったジーター氏だが、ここへ来てマイアミでは“悪者”になりつつある。そんな状況について、NYの地元紙「ニューヨーク・ポスト」の辛口コラムニスト、ジョエル・シャーマン氏が分析し、ジーターに「気高さと堅苦しさは脱ぎ捨てるべき」と進言している。

 ヤンキース時代のジーターをよく知るシャーマン氏によると、現役時代のジーターは「物議を醸したり、自身を美化したり」するような発言はしないよう、自身はもちろんのこと周りの状況を上手く「コントロール」していたという。ロッカーの前でしっかりメディアに対応するが、その発言は「記憶に残らないもの」で、常に「気高さと堅苦しさ」を感じさせ、人間臭い部分は決して見せなかったそうだ。

 だが、シャーマン氏は、その「気高さと堅苦しさ」こそが今回のマーリンズ再建を巡る騒動を引き起こしていると分析する。マーリンズが将来的に優勝を狙えるチームに変わるためには「財政の整理」と「若手有望株の獲得」は必至だったとジーターの決断に賛同する一方で、問題は「そのやり方」にあったと見る。ジーターは就任会見で、当初よりトレードの噂が立っていたスタントンと直接話をしていないことを明かし、「必要な時が来たら話をする」としていた。シャーマン氏は、これがそもそもの間違いだと指摘する。

 球団を買収した直後に、スタントンをはじめトレードの可能性がある選手に「本当ならば一緒に協力して勝利を目指していきたいが、チームの現状ではそれはできない。申し訳ないが、トレードする可能性が高い」と、心を込めた話し合いをするべきだったと指摘。また、クリスチャン・イエリッチやJ.T.リアルミュートら残留して再建期にチームの軸となって欲しい選手にも、今後のチームの方針を直接説明して協力を仰ぐべきだったという。なぜなら、メジャーを代表するスーパースター、ジーターが心を開いて話をすれば、選手はそれを悪く思わなかっただろうとしている。

 ジーターが初動を失敗した理由は、現役時代のように周りをコントロールしながら、自身は汚れ仕事をせずにいようとしたからだと厳しい論調が続くが、唯一ジーターにとって収穫だったのは“炎上”したことだろうと言う。そもそも賢いジーターはあの一件に触れ、自分のアプローチを変えなければならないことに気が付いたはずだと推察している。

 前途多難な船出となってしまった新生マーリンズだが、ジーターCEOはニューヨーク時代の“仮面”を脱ぎ捨て、より選手やファンに誓い、心通わせられる存在となるのか。その手腕に期待したい。(Full-Count編集部)