年末企画:児玉美月の「2017年 年間ベスト映画TOP10」 映画作家たちが才能と美学を忌憚なく発揮

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 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。映画の場合は2017年に日本で劇場公開された(Netflixオリジナル映画は含む)洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第9回の選者は、大学院修士課程で主にジェンダー映画を研究している児玉美月。(編集部)

参考:白石和彌監督『彼女がその名を知らない鳥たち』の“鳥”が意味するものーー驚くべき二面性を読む

1. 『ノクターナル・アニマルズ』2. 『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』3. 『パターソン』4. 『ネオン・デーモン』5. 『20センチュリー・ウーマン』6. 『ラ・ラ・ランド』7. 『彼女がその名を知らない鳥たち』8. 『メッセージ』9. 『ベイビー・ドライバー』10. 『ムーンライト』

 2017年は名だたる映画作家たちがそれぞれの才能と美学を忌憚なく発揮した年だったように思う。その観点からみれば、驚愕さえしたのが1位に選出したトム・フォードによる『ノクターナル・アニマルズ』。繊細さと強烈さが同居する独自のイメージで織られた復讐劇を、彼以外にはなし得なかった見事なアダプテーションで描き切った。これで彼の映像作家としての地位はより確固たるものへとなったのではないだろうか。

 2位の『雨の日は会えない、晴れの日は君を想う』は、完全に2017年のダークホース的作品。ジェイク・ギレンホールの芸達者な演技と、心の破壊と構築を真摯に描いた傑作中の傑作であった。

 3位の『パターソン』は、ジム・ジャームッシュの持ち味である洗練された朴訥さで普遍的な日常にある煌めきを伝えてくれる秀作。車中での会話劇『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)や、コーヒーと煙草を巡る『コーヒー&シガレッツ』(2003)などの過去作品が回顧される。これぞジャームッシュ。

 ニコラス・ウィンディング・レフンは欲望渦巻くファッション業界を舞台に描いた『ネオン・デーモン』で、相変わらずの“鬼才”っぷりを見せた。エル・ファニングの可憐な少女からの悪夢的なメタモルフォーゼがグロテスクなまでに美しい。

 パーソナルな映画を撮り続けるマイク・ミルズは、父親を描いた『人生はビギナーズ』(2010)に続き、『20センチュリー・ウーマン』で母親をテーマに主人公の少年と3世代の女性たちとの交流を描く。彼の普遍的な家族の物語はいつ観ても私たちをノスタルジックな世界へと誘ってくれる。

 選出した10作品のうち、この『20センチュリー・ウーマン』と『ムーンライト』は映画会社A24による作品だが、2018年もグレタ・ガーウィグが監督した『レディ・バード』の公開が控え、定評のある映像美と個性的な作品を多く輩出するA24は、良質な作品を見極める試金石的なワードになっている。

 そして言わずもがな、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル。嫌味なほどにキザな演出を颯爽とやってのける彼はやはりカリスマであり、映画史に残るミュージカル映画を一つ更新した。

 今年は邦画がやや不発に感じてしまったため、頭一つ抜けていた『彼女がその名を知らない鳥たち』が唯一の邦画となった。2018年も立て続けに監督作品が公開予定の白石和彌監督の更なる活躍が期待される。

 8位は『ブレードランナー 2049』が記憶に新しいドゥニ・ヴィルヌーヴが、映像ならではの表現を巧みに操り形而上学的なテーマを高尚に描いた『メッセージ』。

 続く9位は“おれたちのエドガー・ライト”として親しまれるエドガー・ライトの『ベイビー・ドライバー』。音楽と映像のシンクロとスペクタクルな展開に多くの観客が熱狂した。

 10位は今年のアカデミー賞で見事作品賞を勝ち取った『ムーンライト』だが、今年は同作以外に秀逸なクィア映画(LGBT映画)が見当たらなかった。賞レースを牽引している『君の名前で僕を呼んで』の公開が待つ2018年に期待したい。

 また、クィア映画の中でも近年トランスジェンダーをテーマにした映画の勃興がめざましい。今年も全編iPhoneで撮られた『タンジェリン』や、日本では生田斗真主演『彼らが本気で編むときは、』、ドキュメンタリー作品『恋とボルバキア』が公開された。この潮流は、2018年も『アバウト・レイ 16歳の決断』、『ナチュラルウーマン』を筆頭に引き継がれていく。映画は声なき者を可視化させる格好のメディアである。同テーマの作品が数多く受容されることを願う。(児玉美月)