増加しつつある「中年ニート・引きこもり」は123万人も(depositphotos.com)

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 「ニート」は「15歳から34歳までの家事・通学・就業をせず、職業訓練も受けていない者」と定義されているようだ。

 しかし、ニートの高齢化は進んでいる。現在では15〜39歳を対象に「地域若者サポートステーション(愛称「サポステ」)」で就職支援が行われている。

 サポステは、厚生労働省が委託したNPO法人や株式会社などが実施している。厚生労働省は来年度から支援制度を拡充し、40〜44歳も含める方針を決めた。

 ニートに加えて、深刻な状況として考えられているのが「引きこもり」の高齢化だ。「さまざまな要因によって社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態」と厚生労働省は引きこもりを定義している。

どう乗り越える? 中年ニート・引きこもりの危機

 増加しつつある「中年ニート・引きこもり」――。日本経済新聞(2017年5月30日付)は「総務省の2016年の労働力調査を見ると、35〜59歳の<中年ニート>は123万人いることが分かった」と報じた。一般に「働き盛り」とされる年代で、ニート・引きこもりが少なくないのだ。

 「私は会社員だから関係ない」と考えている40代以上のあなた。リストラや介護、自分の健康その他諸々の事情で失職した場合、中年ニート・引きこもりになる可能性は十分にある。

 40代以上だと就職の幅が狭まりやすいうえ、プライドも高く、キャリアが長い分だけ自分の専門性などにもこだわって、再就職が厳しくなるからだ。

 今、そこにある中年ニート・引きこもりの危機。どうやって乗り越えたらいいのか、マネーと健康の両面で考えてみた。

サバイバルプランの作成は不安を軽減する一歩

 生活設計について、金銭面のアドバイスをするファイナンシャル・プランナーの立場から、中年ニート・引きこもりのサバイバルプランを作っておくことを畠中雅子さんは提唱している。

 そのきっかけは、中年の子どもが働いておらず、将来を悲観する親からの相談を受ける機会が増えたことだった。

 「『自分が死んだら、あの子は生きていけなくなる』『いっそ道連れに......』という声を幾度となく耳にしました。お子さんも同様に『取り残されたら暮らしていけない』と思い込んでいるようです。悲観する前にサバイバルプランを作成することは、不安を軽減したり、現実を直視する一歩となります」

 サバイバルプランとは、親亡き後を生きるための計画。持ち家、生命保険、国民年金などをすべて活用し、中年ニート・引きこもりが平均余命くらいまで暮らしていけるように模索するのだ。

 サバイバルプランの作り方を一部紹介しよう。

○預貯金、株式、保険などの合計額をはじき出し、不動産評価額を把握する

○現在の家計の収支を把握する

○一人暮らしになった場合の生活費の見積もりを立てる(持ち家で家賃不要なら月10万円を限度にする)

○引きこもりの子どもを持つ親は、役所や銀行での手続きを経験させるなど、子どもに一人暮らしの準備をさせる

体を動かせなくなる「生活不活発病」に要注意

 サバイバルプランを狂わせてしまうのが、中年ニート・引きこもりの健康問題。体を動かさない状態が続くと、心身の機能が低下して、体を動かせなくなる「生活不活発病」を発症する可能性が高くなる。

 筋力が弱まり、心肺・消化器機能が低下して、高血圧や高血糖を招く危険があるのだ。病気になったら医療費がかさむ。だから、中年ニート・引きこもりは健康を第一に考えたほうがよい。

 お金が一切かからず、病気予防の効果が非常に高いのが「ウオーキング」。ジョギングと比較して関節への負担が低いので、中年になって始めるのに最適なスポーツといえる。

 また、ウオーキングで全身の血流が改善されれば、めまいや耳鳴りなどと言った症状も軽減されやすくなると語る医師もいる。

 そして、1日1万歩もウオーキングをする必要はない。東京都健康長寿医療センター研究所の青胗幸利氏は、決して無理をせず、歩数を徐々に積み重ねていき「1日8000歩、そのうち20分は速歩き」ができるようになることを目指せばいいと語っていた。

 誰もが考える老後の不安に、マネーと健康が挙げられる。現在はニート・引きこもりでない人も、40代になれば一度サバイバルプランを作ってみたらどうだろうか。
(文=森真希)


畠中雅子 (はたなか・まさこ)
1963年、東京都生まれ。大学時代よりフリーライター活動を始め、長女を出産した翌年の92年にファイナンシャル・プランナーになる。現在は新聞・雑誌・インターネットなどに20本を超える連載を持つほか、セミナー講師や個人のFP相談、金融機関へのコンサルティング業務などをおこなう。 社会人の娘、大学生と高校生の息子の母でもある。『高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン 親亡き後も生きのびるために』(近代セールス社)、『貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!』(すばる舎)など著書は60冊を超える。

森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。