『コウノドリ』最終回で示した“生まれたその先”の現実 綾野剛のメッセージを読む

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 『コウノドリ』(TBS系)シーズン2放送前に行われた『特別試写会&舞台挨拶』の場で、主演の綾野剛はこの作品について、“生まれたその先”という現実を描いていかなければならないと話していた。ゆっくりと、一つひとつ言葉を選んでいく彼の口調からは、今作にかける強い気概を感じることができた(参考:『コウノドリ』舞台挨拶レポ)。各ストーリーで描かれる妊婦の人生には、壮絶な物語があった。そして、患者を支える医師たちにも悩みや葛藤は常に付きまとう。それぞれの奇跡と決断の後には、現実が続いていく。11話、最終回の中で、1987年にダウン症児の母親、エミリー・パール・キングスレーが執筆した詩「オランダへようこそ!」が紹介された。自身が置かれた場所を受け入れるということ。それは、生まれてくる赤ちゃんはもちろん、サクラ(綾野剛)や四宮(星野源)の生き方にも示されたメッセージのように思う。

 最終回で、ペルソナメンバーはそれぞれの道を歩み始める。新生児科から小児循環器科の研修を希望していた白川(坂口健太郎)は、熱意が伝わり講談医大病院への異動が決まった。上司である今橋(大森南朋)に「先生の一番弟子になれましたかね?」と質問する白川。「僕の弟子じゃない。頼りになるパートナーだよ」と返す今橋の胸には、いつか成長してペルソナに戻ってきてほしいという思いがあった。下屋(松岡茉優)にとって、白川は研修医時代から共に切磋琢磨してきた同期。ことあるごとに喧嘩をしてきた2人であったが「お前がそばにいたから今までやってこられた。ありがとうな」と白川は下屋に感謝の気持ちを伝え、下屋も「頑張れよ」と送り出す。産科を離れ救命科へと異動した下屋も、仙道(古舘寛治)や加瀬(平山祐介)から徐々に頼られる存在へと成長している。

 “母親にならない人生”を覚悟した小松(吉田羊)は、ペルソナを辞め、お母さんのケアに力を入れた場所を作ることを決心する。産む前もその後も家族の人生に寄り添いたい。その思いは、助産師としてたくさんの出産に立ち会ってきたから。そして、四宮もペルソナを離れることに。石川県能登にある唯一の産科医を引き継ぐこと、それは亡くなった父の思いを受け継ぐことでもある。そして、地域医療研修医として四宮のもとには吾郎(宮沢氷魚)が。四宮は吾郎のことを忌み嫌っていた。しかし、それは産科医の息子として同じ境遇にある四宮なりの愛情の裏返しでもある。「邪魔はするなよ。ジュニアくん」「体当たりで学ばせてもらいます。ジュニア先輩」。そんなやりとりのあとに、四宮は「ぷっ」と笑みを見せ、吾郎と笑い合う。これは、シーズン2では四宮が見せた唯一の笑顔。荻島(佐々木蔵之介)が四宮に言った「独りぼっちで戦わないといけないことはない」というセリフが思い出される瞬間だ。

 そして、サクラはペルソナに残る。赤ちゃんと家族の人生に寄り添っていくため、それぞれ別の場所で頑張るみんなを繋げることが、一人ひとりの母親の笑顔に繋がっていくと信じて。『コウノドリ』は、私たちに今、医療が直面している現実と共に様々なメッセージを伝えてきた。命に寄り添うことということ、誰も一人ではないこと。先述した舞台挨拶にて、綾野は自分たちができることは「見つめ続けること」だと話していた。私たちが生きる現実も、ペルソナチームの現実も、変わらず続いていく。

(渡辺彰浩)