すばやく暖めるダイキンの「うるさら7 Rシリーズ」の「新気流制御」の仕組み

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 本特集<2017・冬エアコン>の最終回となる今回は、ダイキン工業のルームエアコン「うるさら7(セブン) Rシリーズ」に迫ってみよう。富士通ゼネラルと同じ「気流制御」陣営に分類できるダイキンの代表的な機能は、暖房運転時の温風を身体に直接あてないように、壁に沿って送り出す「垂直気流」と、給水いらずで外気中の水分を室内に取り込む「無給水加湿(うるる加湿)」の2つだ。いずれも肌が乾燥しがちな冬に威力を発揮する機能として根強い人気がある。
 最新の「うるさら7 Rシリーズ」では、ダイキンの真骨頂である気流制御技術をさらに進化させた「ヒートブースト制御」を搭載した。「部屋全体をいち早く快適で温かい空間にして、その状態を長く維持できるように改善した。とりわけ暖房時の立ち上がりのスピードにこだわった」と、空調営業本部 事業戦略室の谷内邦治住宅用事業担当課長は説明する。

●「ヒートブースト制御」で暖房が進化



 「ヒートブースト制御」は、室温と外気温の違いによって機能する「新気流制御」「新圧縮機制御」「低温ブースト制御」の3つの制御技術から構成される。とくに「新気流制御」と「新圧縮機制御」の2つは、暖房の設定温度に到達するまでの時間を、従来の14分から11分に20%短縮させた技術だ。

 単純に立ち上がりのスピードを早くするだけなら、風量を大きくしてフル稼働させればいい。だが、人は体温よりも低い風が身体にあたると寒く感じる。つまり、いかに不快感を与えることなく、早く立ち上げるかがポイントになる。

 「新気流制御」では、暖房運転スタート時に「サーキュレーション気流」とルーバーを使って、天井に沿うように風を送り出すようにした。従来は暖房立ち上げ時に下向きに風を送っていたため、直接、身体に風があたって寒く感じてしまわないように、風が体温以上の温度に到達するまで風量を控えて運転していた。ちょろちょろと弱い風を送り出すため、温度が上昇するまでに時間を要していたのだ。

 「新気流制御」では最初は天井に向けて、体温より低く、室温より高い温風を大量に送る。人にあたらないため、人の体温よりも高い温度にすばやく到達できるようになった。

 次の「新圧縮機制御」では、室外温度だけだった従来のセンシングに、室内温度の検知も加えて、その温度差をチェックしながらコンプレッサを効率よく回転させる。運転開始時にコンプレッサを急速に回転させれば早く暖まるが、コンプレッサに負荷がかかり故障の原因となるため、実際は回転数を抑えて運転せざるをえない。「新圧縮機制御」で屋外と室内の温度差をみながらコンプレッサの回転効率を上げたことで、回転数がピークに到達するまでの時間が短縮できた。結果的に、部屋を素早く暖める技術につながった。

 最後の「低温ブースト制御」は、外気温が0度からマイナス10度になる環境で力を発揮する。外気温が低いと室外機にたまっている冷媒は冷たくなり、気体から液体に変化した冷媒の比率が高まる。液体の冷媒ではコンプレッサは運転できないため、冷媒をゆっくりと気体にさせながら運転する。このときの時間が長引くほど、暖まる時間も長くなる。

 「低温ブースト制御」では、屋内の室内機にある気体の冷媒を、いったん屋外の室外機に送ってやることで、室外機の冷媒の気体の比率を高めるのだ。気体の冷媒を増やすことで、コンプレッサの回転数を急速に上げることが可能になる。結果として、コンプレッサが一度で圧縮できる冷媒量が増加し、温風を素早く送り出せる。具体的には、外気温がマイナス10度の低温時に、エアコンの吹き出し温度が37度になるまでの時間を、従来の11分から6分に短縮した。

 屋外の液体状の冷媒を気体にするのではなく、室内の気体状の冷媒を屋外に送るという逆転の発想から生まれた技術である。内閣府の消費動向調査では、全国のエアコン普及率は92.5%(2016年)と高いが、北海道と東北に絞ると64.6%まで下がる。エアコンメーカーにとって寒冷地は、開拓余地が残された魅力的な市場で、ダイキンの「低温ブースト制御」はまさにこの市場をターゲットに開発された。

 総合空調メーカーのダイキンは12年11月に世界で初めて、ルームエアコンに環境負荷の少ないオゾン層破壊係数ゼロの「HFC冷媒R32」を採用したように、冷媒の扱いを知り尽くしている。「ヒートブースト制御」は一見すると少し難しい技術に映るが、冷媒を自在に操れるダイキンらしさが光る技術といえるだろう。(BCN・細田 立圭志)