アイアンを最大の武器としているイ・ミニョン そのテクニックに迫る(撮影:上山敬太)

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上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が、女子プロの中でも特に“上手い!”と思う選手のプレーをピックアップし解説する「女子プロの匠」。今回はイ・ミニョン(韓国)の代名詞とも言えるアイアンショットをチョイス。
【連続写真】切れ味抜群!ミニョンの代名詞アイアンショット
ミニョンはQTランキング4位の資格で今季から日本ツアーに参戦すると、4月の「ヤマハレディース」でいきなり初優勝。さらに7月の「ニッポンハムレディス」で2勝目を挙げるなど、その後も着実に賞金を加算し、鈴木愛と最後まで賞金女王の座を争った。
最大の武器がパーオン率1位を誇るアイアンショット。同じく稀代のショットメーカーであるテレサ・ルー(台湾)も、「あのショットを見ていると、私もそういう風に打ちたいって思いますよ」と絶賛してやまない。また、女王となった鈴木も開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」の3日目に一緒に回って「とても良いフェードを打つ選手。勉強になる」と序盤から目を見張っていたほど。昨今は男子ツアーでも珍しいものとなった、扱うのが難しい3番アイアンをバッグに入れているのが何よりの自信の証しだ。
持ち球である『パワーフェード』も話題を呼んだ。ストレートの軌道からやや右に曲がりながら落ちてピタッと止まるその球筋は、同じショットメーカーでもイ・ボミ(韓国)、テレサらドローヒッターの多い女子ツアー界において異彩を放った。それは同時に、女子ツアーでも“フェードでボールを止める”という新時代の到来を予感させるものでもあった。
長くて扱いづらいロングアイアンを自在に操り、重くて力強い球を放ち風に負けずにピンを差す。そんなすい星のごとく現れたパワーフェーダーの匠の技について早速辻村氏に解説してもらおう。
大前提として、何故ミニョンは球が上がりやすいユーティリティではなく、扱いづらいロングアイアンを入れているのか。これについて辻村氏は球筋が大いに関係していると見ている。
「ミニョンさんのアイアンの番手別に球筋を見てみると、ショートアイアンはほぼストレート。5番から7番くらいで軽いフェード。そして3番、4番はフェードかスライス。左に曲がる番手は1つもありません。ここから推測するにミニョンさんの場合、本来優しいクラブであるユーティリティだとPWくらいつかまってしまうのかもしれません。ミニョンさんのミスは左に出ることで、それを最も嫌います。出球をイメージしやすく、“右に絶対曲がってくれるクラブ”が彼女にとって最良の選択なのでしょう。また、ロングアイアンはラインを出しやすいことも選んだ理由の1つだと思います」
もちろん、その選択はミニョンの技術があってこそ。「3番アイアンでも高さを出して止められる。ロングアイアンの難しいところは“ボールを上げないと”と意識してしまうあまり、右肩が下がり煽り打ちしてしまうこと。ミニョンさんはそれが一切ない。そこには懐の深さあるからで、だから体も突っ込まない。だからラインも高さも出していける」。では、それを踏まえてスイングを見ていこう。
力感のないアドレス、十分な上体の捻転、インパクト時の顔の位置、アドレスからインパクトまで変わらない左足のツマ先・左ヒザの位置、角度…評価ポイントの多いミニョンのスイングだが、その中で辻村氏がロングアイアンを打つ上での一番のポイントに挙げたのが懐の深さである。
「ミニョンさんは、体とグリップエンドの距離の取り方が非常にうまい。というのもスイング中に懐をつぶす動きがないからです。それにもかかわらず、ダウンスイングでは、左ヒジよりも右ヒジのほうが20センチほど下にあるので、クラブを十分に引きつけています。インパクト後も体とグリップエンドの距離を近づけることなく振り抜いています」
もう1つのポイントがボールへのクラブの入り方。「3番アイアンというのは、ある程度のヘッドスピードとスピン量がないと球が上がらないクラブ。おそらく、ミニョンさんでも3番アイアンを打つヘッドスピードはないと思います。ミニョンさんの使う3番アイアンは中空のもので、難易度的には4番アイアンくらいですが、それでもヘッドスピードが足りていません。それにもかかわらず球を上げられるのは、入射角の良さが要因です。ヘッドの入りがシャロー(浅く穏やかな角度)で、とにかくインパクトゾーンが長い。ロングアイアンというクラブは、あまり上から入り過ぎても煽って打ってもダメなのですが、ミニョンさんはクラブの入り口から出口まで低くボールを拾えている。だから高い球を打てる」
さてここまで読んで「ロングアイアンをかっこよく打ちたい!」と思った方も多いはず。そんなゴルファーに向けて辻村氏が提案した練習法が『直ドラ』だ。
「直ドラはボールに上からクラブをぶつけて行っても球は上がらないし、上げようと思ったら打点が狂う。どれだけレベルに打てるかを意識して、直ドラでホップするようなライナーボールを打つ練習をしてみましょう。フェースの一番下に当たっていいんです。それを低空飛行の球筋で、10ヤード先くらいから少しホップするイメージで打ち続けていると、3番アイアンを打てるための技術が身に付いてくると思います。ロングアイアンを打つ技術を身に付けるためには、小手先の動きとかを考えるよりも、シンプルに直ドラでライナーボールを打つ練習をしたほうが良いでしょう。煽り打ったらインパクトの前にマットに当たって上がらないですし、上げたいからと上から被っても上がらない。ちゃんと打てるようになったころには、シャローな入射角となっているでしょう」
いきなり直ドラは難しい、というアマチュアには「最初はショートティでも良い」と続ける。「低いティでドライバーを打ち続けることで突っ込むとか煽るとかという感覚が削れてくる。そうすると、道具と自分の間隔が一定のボディターンが身に付いてくると思いますよ」
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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