「Thinkstock」より

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 私は営業マン時代から今まで、“学歴も能力も高く、ビジネスセンス抜群”といった人たちとたくさん出会ってきた。普通に考えれば、才能に恵まれた人が当然結果を出すはずだが、芽が出ないうちに年月が経ち、“ただの売れない営業マン”に成り下がってしまう人も少なくない。

 逆に「この人は不器用でトラブルばかり起こしている」という人が徐々に頭角を現し、気づけばトップに君臨するようになる。こういった姿をずいぶんと見てきたものだ。

 では「失敗を糧に飛躍する人」と「愚痴って終わりの人」の差はなんだろうか?

 営業マン時代、同じ営業所の先輩のこと。先輩は高学歴で口が立つ人だった。物事を理論的に考え、しかもそれをわかりやすく伝えられる。どこからどう見ても「いかにも売りそう」といったタイプだ。

 しかし、その先輩は気分屋で毎日のように何かにキレたり、深く落ち込んで空気を悪くしていた。数人の営業所内でこういった人がひとりでもいると空気も悪くなるもの。先輩に気を使いながら仕事をしたものだった。

 先輩を観察していると「あの時、別の選択をするべきだったなぁ」などと独り言を言いながら落ち込んでいる。また社内での人間関係について「アイツは絶対に許さない!」などと突然エキサイトしたりする。本当に迷惑な人だった。よくよくその話を聞けば、かなり前の話だったりする。

 先輩は過去の失敗をうまく消化できていない。常に過去にとらわれて今にフォーカスできていないという感じだった。これでは、せっかくの能力が発揮できないのも当然だ。結果的に何年もの間、ダメ営業マンとして低迷し続けたのだ。

 これは私も同様だった。私は入社して7年間もの間はダメ営業マンから抜け出せなかった。ダメ営業マン時代は結果も出ず辛いことばかりだったのだが、ひとつだけ楽しみがあった。

 それは休日前の飲み会だった。その理由は思いっきり愚痴れるから。ダメ仲間と集まり、「あの客、おかしい!」「上司のやり方が悪い」「値段が高すぎる」などと愚痴や不平不満を言いまくっていた。その時は吐き出してスッキリはする。しかし、翌日には「はぁ、またやっちゃった……」と二日酔いと共に強烈な自己嫌悪に陥ったものだった。

 人によっては「不平不満を溜めると体に良くない。思いっきり吐き出したほうがいい」と言う人もいる。確かに一理ある。

 しかし、さんざん愚痴ってきた私の経験から言わせてもらえば、「不平不満はやたらと吐き出さないほうがいい」ということ。不平不満はネガティブだが、エネルギーであることには違いない。しかもその力は非常に強力である。このエネルギーを愚痴って垂れ流すのではなく、「この不満をお客様のための良い行動にぶつけよう」などポジティブな方向へその力を利用したほうがいいのだ。

 この話を聞いて、「そんなのは当たり前の話だ」と思った人もいるかもしれない。しかし、これができる人はそう多くない。私自身もマスターするまでに7年もの歳月を費やしてしまった。もっと早くネガティブなエネルギーをいい方向へ利用すべきだったと、つくづく思う。

●失敗に感謝する

 その後、私は8年目にしてトップ営業マンになった。とはいえ、いいことばかりではない。ときには間違いなく契約になると思っていたお客様から「本当にごめんなさいね」とお断りされたりすることもあった。信じていたお客様からの断りのダメージは大きい。一瞬愚痴りたくなるが、ここはグッとこらえ、そのエネルギーを他のお客様のための行動にぶつけた。だからこそ、ほぼ落ち込まずにすみ、すぐに気持ちを切り替えることができた。

 失敗をエネルギー源として次の成功につなげていたのだ。

 知人の例をご紹介させてほしい。

 私が尊敬しているAさんとお会いした時のこと。ちょっと興奮気味に「うまい話に乗って痛い目にあいましたよ」と話してきた。話を聞けば被害額も大きく、何より精神的なダメージも大きい。にもかかわらず、「いやぁ〜無知でした。今回高い授業料になりましたが、本当に勉強になりましたよ」と言っていたのだ。

 Aさんの話から“恨み節”はまったく感じられない。むしろ感謝しているような口ぶりだった。さらには「この経験を元にして一冊本でも書きますよ」と言う。本当にたくましい人だと感じた。

 仕事をしていれば、いいこともあるし悪いこともある。痛い目に遭った時、恨み節でいつまでも愚痴るか、それともそれをモチベーションにして飛躍するか。

 考え方次第でどうにでもなる。ネガティブなエネルギーを前向きな行動にぶつけた時、あなたの人生は必ずやいい方向へ向かうに違いない。
(文=菊原智明/営業サポート・コンサルティング代表取締役)