会社、学校、マンションなど、「消火器」を目にすることは日常的にありますが、その消火器がどんな火災に対応しているのか知らないという方は多いもの。今回の無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』では、いざという時に困惑しないよう、最も多く見かける「ABC粉末消火器」について、わかりやすく解説します。

消火器あれこれ

家庭はもとより、事務所、学校、マンションの共用部分などでよく見かける消火器は、まずほとんどが「ABC粉末消火器」と呼ばれるものです。これまでに何度も目にしているはずです。

「ABC」という文字があったのに気づいていない方も、もしかしたら、白・黄・青の円が描かれてあったのに気づいている鋭い方もいらっしゃるかもしれません。このABCも色のついた円もどちらも「火災の種類」を示したものです。

A火災は「普通火災」で、紙、木、繊維などごく普通に身の回りにある可燃物が燃える火災です。

B火災は「油火災」。油による火災で、ガソリンなどの引火性の液体の火災です。

C火災は「電気火災」。電線やモーターなど電気に関わる火災です。

油に直接水をかけての消火はできないということを以前書きましたが、他にも電気の火災でも、水をかけるのはできませんね。感電の危険があるからです(霧状の水なら大丈夫ですが)。

さて、よく見かける「粉末消火器」は、以上のA火災、B火災、C火災のどれにも対応する、ということです。粉末の消化剤は、火元の可燃物を粉末で覆うので、酸素を遮断します。窒息による消火ですね。

また、「燃焼」は、可燃物が酸素と激しく結びつく反応、ということを以前書きましたが、粉末の中にはその反応を鈍くさせる(不活性化)働きのあるものがあります。これにより燃焼を止めるのですが、これを抑制による消火といいます。

ただし、「温度を下げる」という冷却効果がないので、一旦火を消せたように思えてもあとでまた再燃することもあります。しっかり最後は水や強化液で温度も下げておきたいところです。

「ABC粉末消火器」は、いろんな火事に対応していて、使いやすい消火器なので、家庭や学校,職場などで広く普及しているんですね。

「白・黄・青」の円ですが、以前は円と文字だけでしたが、これでは「どの火事に対応しているのかがわかりにくい」ということで、最近のはアイコン的に燃えている物の種類も描かれています。

もしお手元にある消火器の絵柄が古いようでしたら、ちょっとご注意。その消火器のお手入れが心配です。

消火器の点検、お手入れのことについて少し書いてみようと思います。

消火器は普段から使うものではありませんね。いざという時に使うもので、基本的には放置されたままです。ご家庭で購入したものは、ひょっとすると数年、そのままということもあるでしょう。

粉末消火器の、特に古いものが危険なのですが、中の薬剤(粉末)が固まってしまい、実際に使おうとレバーを引いた時に暴発、大怪我をしてしまう、という事故が起こっています。安全性を高めるために最近の消火器はそういった事故を防ぐように作られてきてはいますが、実際に何十年も前の消火器が家に残ったまま…という方の場合、そういうことも知らず、気づかず…という危険が潜んでいます。

古い消火器はきちんとした防災器具、設備の販売をしている業者に頼んで引き取ってもらい、処分をしてもらうのがいいでしょう。その際に新しいものを購入する相談もするといいと思います。なんと言っても専門家ですので、きちんとしたもの、必要なものを選んでくれるでしょう。また普段の手入れのアドバイスも聞いておくといいでしょう。

職場、学校、マンションなど、防災設備があるところでは、年に2回、消防設備点検が行われていると思います。そういった時に、消火器はどのような点検をしているのでしょうか。外観の汚れをチェックし、ホースやノズルの目視チェックがされたあと、消火器をひっくり返して、中の粉末が「サラサラ〜」と流れているかを聞いています。固まっていると音がしません。また、半年に1回でもひっくり返すことで、中の薬剤が固まるのを防ぐことにもなります。それでも数年に1回は薬剤の交換がされます。

そういったところもプロの業者さんにアドバイスを聞いておくと、安心していざという時に使えますね。

もちろん火事が起きないことが一番いいのですが、ちょっとしたことで炎が燃え上がることだってありえます。そんな時に、あわてず、落ち着いて消火作業ができるように、日頃から心がけておきたいですね。

「消火器なんて使ったことないからわからない」というところから一歩踏み出して、「これがあれば最初の段階で消せるぐらいにはなっておこう」と思っていただけると幸いです。

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