中豪関係が険悪化している。中国から豪政界に対する献金問題が発端となり双方が批判を応酬。豪若手有望議員1人が中国からの献金問題で辞職。中国の現地公館は、中国人留学生に対する暴力事件が発生しているとして注意を呼び掛けた。写真は豪のチャイナタウン。

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オーストラリアではターンブル首相自らが、中国がオーストラリアの政治に対して「これまで前例のない、ますます巧妙な工作を行っている」と発言。中国側が反発すると、ターンブル首相は毛沢東主席の建国宣言をパロディーのように用いて、中国語で「オーストラリア人民は立ち上がった)」と述べ、中国側は改めて反発した。

事態はさらに進展した。オーストラリアの野党・労働党のダスティヤリ上院議員が12日、中国人実業家から政治献金を受けていたことを認め、辞職して次回選挙に出馬しない意向を明らかにしたのだ。ダスティヤリ議員は南シナ海の問題について中国寄りの発言を続けてきたことで知られている。ダスティヤリ氏は1983年生まれで、若手有望政治家と見られていた。

ここで思い起こしてしまうのは、「オーストラリアの国内政治に影響を与える考えはない」としていた中国外交部の耿爽報道官の発言だ(前回参照)。「南シナ海問題はオーストラリアの国内問題ではない」と解釈すれば、形式的には「ウソでない」とも言える。しかし、献金していたことが事実ならば、中国は金銭を使って他国の政治に干渉していたことになる。11日の記者会見で、報道官が「いけしゃあしゃあと言い逃れをした」とのイメージは、中国に対する不信感をさらに増加させることになった。

陸慷報道官はダスティヤリ議員の辞職表明直後の12日の記者会見では、同議員の辞職問題について「他国の内政についてはコメントしない」と述べた上で、「最近、個別の西側国家で突然、『他国の内政には干渉しないこと』に関心が出ている。よいことだ。これらの国の人々の頭に、『内政不干渉』が根づけば、国際関係の健全な発展に効果がある」などと述べた。

この「妙に強気な対応」は、中国人が窮地に立たされた場合にしばしば見せる反応だ。自分らの姿勢にブレがないことを「証明」しようとする心理が働いているように思える。しかし、報道官としては「言わずもがな」の発言であり、かえって失笑を買ったことは間違いない。

15日付ロイター社によると、中国外務省が8日、駐中国オーストラリア大使を呼び出して、中国が内政干渉を試みているといオーストラリア側の主張に抗議していたことも分かった。

オーストラリア内には、ターンブル首相以上の対中強硬論も多い。そこで問題になるのが、オーストラリア経済に中国への依存体質が定着してしまっていることだ。オーストラリアにとって中国は2000年以来、最大の貿易相手国だ。中国政府商務部(商務部)によると、2016年におけるオーストラリアの対中輸出額は599億1000万ドルで、前年比1.4%減とわずかに後退したが、同国の輸出総額の31.5%を占めた。オーストラリアの主な輸出品目は鉄鉱石や石炭だ。

中国には、関係が悪化した国を経済面で苦境に陥れようとした「実績」がある。しばらく前には尖閣諸島の問題などで対立を強めた日本に対してレアアースの輸出を差し止めた。最近では、高高度防衛ミサイル(THAAD)配備で、それまでは「蜜月関係」だった韓国が、中国人観光客の激減や中国に展開する韓国系小売チェーンのロッテマートが営業中止に追い込まれるなどで、大きな打撃を受けた。

そのため、中国が石炭や鉄鉱石の輸入先をブラジルに切り替える可能性があるとの見方もある。しかし、中国が仮にそのような動きに出た場合、中国にとって少なくとも中長期的に有利になるとは思えない。中国がオーストラリアからの資源商品の買い付けを控えれば、日本、あるいはインドなどが同国からの買い付け量を増やそうとするかもしれない。オーストラリア側企業が対中貿易の「政治リスク」を痛感すれば、その後は対中取り引きに慎重になる可能性が高い。