21日、韓国の男性5人グループ「SHINee(シャイニー)」のメンバー、ジョンヒョン(享年27)さんの告別式がしめやかに行われた。韓国・中央日報は、ジョンヒョンさんがミュージシャンの友人に託した遺書の内容を報じた。そこには「僕は体の中から壊れてしまった。じわじわと僕をむしばんでいった憂鬱は結局僕を飲み込み、僕はそれに勝てなかった」と綴られていたといい、精神的に追い詰められていた様子も伺える。

 K-POPアイドルグループの元メンバーで日本人のユナさんは今年6月、「週刊文春」で、所属していた芸能事務所の"ブラックぶり"を告発した。小学生の頃からダンスや歌の練習を始め、高校生の時にSHINeeの大ファンになり韓国語を学ぶようになった。その流れで韓国へも足を運ぶようになり、韓国芸能界にも興味を持ったという。

 2015年1月にはソウルでオーディションに参加。同年11月、アイドルグループのメンバーとして「藤乃ゆな」の芸名でデビューした。ユナさんによると、契約時に事務所とビザの申請をしてくれるという約束を交わしたが、実際はいつまで経っても申請はされず、事務所幹部に直訴した際には怒鳴られたこともあったという。給料も未払い状態で、男性に身体を触られることもあった。次第にユナさんは心身に不調をきたすようになる。

「私生活にあまり自由がないというか、皆で一緒に生活をして朝から晩まで練習という形が日本と比べ多いので、どうしても心が苦しくなってきた。もちろん覚悟して行ったが、周囲にはメンバーと事務所スタッフしか頼れる人もいなかった。近くに家族がいなかったのも大きく、言葉の壁もあった。そのうちに、仕事に行こうとしても頭痛がするようになって…」。

 翌年12月には一時帰国し入院、そしてグループを脱退。今年1月にはベトナム人の新メンバーが加入した。しかし3月になって、事務所側がユナさんの不法滞在を申告したという。

「体調を崩して、事務所の許可をとって日本に行ったにもかかわらず、『日本に逃げた』みたいな言い方をされた。そして、私が休んでいる間に名前が消えた。事務所は入国管理局に『こういう日本人がビザなしで活動している』と申告していたようだ。でも、日本と韓国を行ったり来たりしていたので、実際には不法滞在はしていない。それなのに事務所からは『あなた、テレビに出たでしょ。だから仕事したのと同じ』と言われた。一銭ももらっていないのに仕事だって言えるのかなと」。

 『週刊文春』7月6日号の取材に対し事務所側は「2016年12月に芸能ビザを申請した」、セクハラについても「ない」と主張していた。また、契約中にユナさんが脱退したことには「約1500万円の損害賠償を求める」としている。

■韓国の学歴社会、育成システムがトラブルの遠因か

 ジョンヒョンさん以外にも、韓国では近年、人気芸能人の自殺やトラブルが相次いでいる。女優の故チャン・ジャヨンさん(享年29)は、性的接待を強要されたとメモを残して自殺。また、女優の故チェ・ジンシルさん(享年39)は、インターネット上の誹謗中傷に悩まされていたという。様々な問題を抱えていて辞めたくても、事務所と複数年の契約を結ばされ、違約金が怖くてやめられないという実態があると話す関係者もいる。

 今月7日には世界的な映画監督キム・ギドク氏が暴行の疑いで起訴されたと中央日報が報じた。ギドク氏の映画に出演した女優が台本にないヌードシーンを強要され、暴力を受けたのだという。

 SHINeeのファンクラブにも入っていたというお笑い芸人の石井てる美は「韓国芸能界に色々なことがあるというのは知っていたけど、自分の思い入れのあるグループがこんなことになるなんて、夢にも思っていなかった」と涙を流す。

 こうした事件が起こりやすくなる背景には、韓国社会を取り巻く現状と、韓国芸能界独自の育成システムがあるとの見方もある。

 韓国芸能界事情に詳しいノンフィクションライターの高月靖氏は「学歴社会の裏返しのような側面もある。自分は勉強がダメだからこの道で行こう、と、学業の代わりにアイドルを志望する若者が非常に多く、芸能事務所がその受け皿になっている。とはいえデビューできるのは一握り。日本の芸能界と基本的に構造は似ているが、向こうの方が極端というか競争がもっと激しい」と話す。

 そして、韓国では一般的にオーディションに合格後、「練習生」として寮や合宿所で集団生活を送りながら歌やダンス、演技などの技術を磨いていくという。大手事務所の場合、それらの費用を負担してくれるケースが多いというが、小さな事務所の場合はそうした補助も無く、ユナさんの場合も交通費や生活費などを仕送りに頼っていたという。

 さらに、デビューまでにかかる期間には個人差があり、ユナさんによると10年以上練習生をしている人もいたという。「韓国では歌手になりたくて一生懸命小さい頃からそういう学校に通ったりする子が多いので、アルバイトもまったくしたことがない。それしか本当に集中してこなかったので、他にやれることがない」。

 こうした背景からか、演技者の38.9%がうつ病に苦しめられており、40%は自殺を考えたことがあるという研究結果が報じられた(中央日報)こともあるほど、心身を追い詰められてく若者が現れてくるというのだ。また、インターネット上には"アンチ"のコミュニティもあり、芸能人は激しい誹謗中傷にも晒されるという。ユナさんの周囲にも、苦しんでいる仲間がいた。

 高月氏によると、大手の事務所ほど様々なリスクを考えながら運営をおこなっているというが、小さい事務所の中には、過剰な引き抜きやパワハラ・セクハラなどの訴訟沙汰を抱えているところもあるのだという。

  かつての所属事務所や韓国芸能界に対してユナさんは「最初は『家族だよ』と言っていたのに裏切られたので、そこはどうしても許せない気持ちはある。でも自分が芸能界に入りたかった面もあるし、韓国芸能界で活動できた経験はありがたかった。全てが悪いことばかりではなかったし、今でも韓国が好きなので…」と複雑な心境も覗かせた。

 議論を聞いていたフリーアナウンサーの柴田阿弥は「韓国では競争が激しいイメージがある。日本でも地下アイドルにお給料が払われていないということがあったので、韓国だけのことではないと思う。私もアイドルが好きで、アイドルグループにいた身として、追い詰められる気持ちというのはわかります。でも人の夢を利用するようなことが無くなると良いなと思った」と語った(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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