ロジクールの笠原健司社長

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 ロジクールが日本市場での売り上げを伸ばしている。主力のマウス・キーボードが堅調なだけでなく、ゲーミングデバイスやワイヤレスイヤホンなど、別ブランドで新たに進出したジャンルの製品が成長をけん引しているのだという。大手から新興メーカーまで多く企業が激しい競争を繰り広げるアクセサリ市場を、ロジクールはどのように勝ち抜く戦略なのか、2016年10月より日本法人を率いる笠原健司社長に聞いた。

取材/道越 一郎 BCNチーフエグゼクティブアナリスト

文/日高 彰、写真/松嶋 優子
マルチブランド・マルチカテゴリ化で

高付加価値製品をさらに伸ばす

●市場が伸び悩む中でも日本は大幅売上増



道越 日本市場のビジネスが非常に好調とお聞きしています。

笠原 2017年第2四半期(7〜9月)、日本が含まれるアジアパシフィック(AP)地域の売り上げは前年同期比123%で、世界の中でも特に大きな伸びをみせています。各国個別の売り上げは開示していないのですが、日本市場はその123%をはるかにしのぐ成長を遂げることができました。

道越 国内のPC市場は必ずしもよい状況ではありませんが、どうしてPC周辺機器を主力とするロジクールの売上高がアップしたのでしょうか。

笠原 主に二つの戦略をしっかり立てて、それを着実に実行できたことが成功の要因だと考えています。

 ひとつは単価向上の戦略です。PC周辺機器市場の推移はほぼフラットで、お客さまが購入されるマウスの台数は大きく変わらないわけですから、少しでも付加価値の高いものをお届けすることに注力しました。これは、われわれメーカーだけがそう思っているのではなく、販売パートナー各社さまとお話しをしていても、単価を上げたいという要求が非常に強いことがわかりました。そこで、パートナーさまごとの特性に合わせた具体的な販売戦略や数字を決め、われわれの強みである高い品質や機能をしっかりお客さまにお伝えしていくことで、単価アップを図ることができました。

道越 もうひとつの戦略とは。

笠原 当社がグローバルで取り組んでいる「マルチブランド・マルチカテゴリ」の推進です。Jaybirdのワイヤレスイヤホン、Ultimate Earsのスピーカー、LogicoolGのゲーミングデバイスなど、従来のPC周辺機器以外で新しい製品カテゴリをどんどんとつくっているところです。規模はまだ小さいですが、成長率ではこれらのカテゴリが圧倒的に大きく伸びています。ゲーミングデバイスは、すでに次のビジネスの柱になりつつありますね。

●独自のポジショニングが新分野進出のカギ



道越 PC周辺機器メーカーというイメージも変わってきていますね。

笠原 ロジクールブランドの付かない製品は今後も増える見込みです。ただ、単にカテゴリを増やせばいいわけではなく、重要になるのはポジショニングです。例えば、Bluetoothイヤホン市場が伸びているといっても、そこにはすでに大手オーディオメーカーが数多く存在し、同じ土俵で戦うのが難しいことは、われわれもよく自覚しています。

 そこでJaybirdでは、ワイヤレスイヤホンというよりも、シューズやウェアのようなスポーツアイテムというメッセージを押し出し、特にランナーにフォーカスしてマーケティングを行っています。17年には皇居周辺のランニングステーションとコラボレーションし、機器を貸し出して実際にランナーの方々に使っていただく取り組みなどを行いました。

道越 ゲーミングデバイス市場は好況が伝えられていますが、海外に比べると日本はまだこれからという印象です。

笠原 「eスポーツをするならLogicool G」というブランドを確立できたと考えていますが、PCゲームという切り口でみると、おっしゃる通り、日本はこれからの市場で、まさに今が飛び立つ直前の時期だと思います。一方、日本特有の事情として、PCゲーム市場に比べてコンソール(家庭用ゲーム機)市場の規模が非常に大きいため、やはりコンソールにも力を入れていく必要があります。まだ具体的にお話しできる段階ではないのですが、当社では17年夏にコンソール向けのハイエンドヘッドセットを手がけるASTRO Gamingを買収しており、このようなブランドも武器にできます。今後どのように市場を開拓するか、戦略を練っているところです。

道越 新しいカテゴリの製品も、それぞれのブランドで高付加価値を訴求していく戦略ですね。

笠原 市場が伸びているから、海外でヒットしているからといって、単にその製品を売り場に並べるだけでは売れません。特に高付加価値の製品ほど、ターゲットをしっかり絞り込み、コアなお客さまに向けて丁寧にご説明していく必要があります。18年以降に向けても多くの魅力的な製品を開発中ですので、ご期待ください。

※『BCN RETAIL REVIEW』2018年1月号から転載