リターゲティング広告大手のクリテオ(Criteo)は、12月初旬に行われた業績報告において、Appleの広告トラッキング防止ポリシーにより、予想以上に業績が悪化していると発表した。報告後、クリテオの株価は、数時間で26%も下落し、同社のロゴと同じような右下がりの曲線をえがいた。

クリテオは、事業全体がリターゲティング広告に支えられており、その分野ではもっとも名の知れたベンダーだ。そのため、クリテオはAppleがトラッキング防止へとポリシー転換したことで、アドテクがどのような影響を受けるかを示す代表的な事例といえる。ただ、クリテオほどAppleのトラッキング防止ポリシーに打撃を受けてはいないものの、アトリビューション関連企業やデータプラットフォームなど、ビジネスの一部を広告ターゲティングに頼るほかのベンダーもまた、Appleの顧客プライバシーキャンペーンのあおりを受けている。

アドテクとユーザー体験



「今回のことは、Facebookのアルゴリズム変更の場合と同じケースだ。すべてのパブリッシャーの予測が突然覆される」と、独立系技術コンサルタントのマット・ローゼンバーグ氏はいう。「Appleは広告ビジネスに依存していないため、ユーザー体験を最優先に考える。アドテクとユーザー体験が天秤にかけられるという現実は、アドテクがこれまでやってきたことに対して不利に働いている」。

9月にAppleはSafariブラウザを新バージョンにアップデートし、ユーザーがWebサイトにアクセスしてから24時間経過すると、サードパーティがユーザーを追跡できなくなった。これによりサードパーティデータに依存するパブリッシャーのCPMは下がり、プログラマティック主体のサイトにとって痛手となった。

市場分析会社のネットマーケットシェア(NetMarketShare)によると、Safariはデスクトップトラフィックの4%、モバイルトラフィックの29%を占めているという。ほかに市場普及率の高いブラウザは唯一Google Chromeだが、こちらもまた来年以降「広告フィルタリング」版をリリースすると発表しており、広告業界に宣戦布告している。Safariは人気が高いため安易に無視することはできず、オープンウェブ上でトラフィックのマネタイズを図るアドテク企業ならば間違いなくSafariと関わることになる。この件に関して、クリテオはコメントを控え、Appleからも本記事にかかわる問い合わせへの回答はなかった。

力を増すテック企業



AppleがSafariのポリシー変更について発表して以来、広告主は不満を募らせていた。9月には、6つの広告業界団体が公開書簡を発表し、トラッキング防止へのアップデートがインターネット経済の妨げとなると述べた。

ある独立系の広告エージェンシーのプログラマティック担当幹部から、匿名を条件に話を聞いた。同氏によれば、Safariのアップデートによってすでに力のあるテクノロジー企業が、さらに力をつけることになるという。Google同様、Appleはブラウザへの支配力を強化し、また人々のインターネット利用方法を管理することになり、これは広告主導型の企業にとって痛手となる。

しかし、FacebookやGoogle、Amazonなどの広告事業を抱える大手テック企業とは異なり、Appleは広告ではなくデバイス販売で収益をあげる企業だ。Appleの最高経営責任者ティム・クック氏は、2014年およびAppleがモバイル広告プラットフォーム「iAd」を閉鎖した2016年に、広告主体のビジネスを批判する発言をしている。これは同社の広告に対する両面性を如実にあらわすものだ。

苦難の日々は続く



Appleがトラッキング防止に動くからといって、業界地図(Lumascape)にあるアドテク会社すべてが等しく痛手を負うわけではない。しかし、クッキーによるトラッキングやサードパーティのデータを利用してビジネスを進めるベンダーには大きな負担となる。複数のコンソーシアム(共同事業体)が、ユーザーのログイン情報から取得したファーストパーティデータによる巨大なユーザーデータベース構築に取り組んでいる。理論的には、サードパーティのデータではなく、このタイプのデータを使ってユーザーを特定および追跡することで、Safariのアップデートによってアドテク企業が受ける影響を制限することができるかもしれない。

しかし現時点で、これらのIDプールは形成段階にある。それを待つあいだ、サードパーティのクッキーによるリターゲティングに依存している企業は、苦難の日々を過ごすことになる。独立系アドテクアドバイザーのポール・ガビンス氏は次のように述べている。「確かに、ほとんどのカードがブラウザに握られている」。

Ross Benes(原文 / 訳:Conyac)