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●異なる業界でも経営者

常々、不思議に思うことがある。経営者と呼ばれる方々は、数年で転社し、そしてまた経営者として活躍される。これは、どういうことなのだろうか。

有名なプロ経営者の例を挙げてみよう。たとえば、サントリーホールディングスの代表取締役社長 新浪剛史氏。氏はローソン代表取締役社長兼CEOを経て、現職に就いた。もともと三菱商事の外食関連の職に就いており、飲食に関係の深いコンビニや酒類メーカーの経営者となった。

まったく異なる業界の経営者としてわたり歩く例もある。たとえば原田泳幸氏。アップルコンピュータ代表取締役兼米アップルコンピュータのヴァイスプレジデントを務めたのち、日本マクドナルドのCEOになった。当時は「マックからマックへ」という表現で、多くのニュースで報道された。その後、ベネッセホールディングスの会長兼社長に就任したが、就任直後におよそ2000万件の個人情報流出が発覚。ほとんど活躍できないまま、同社を去った。ベネッセの件は、不運だったといわざるをえない。

ただ、コンピュータから外食産業、教育企業という、まったく異なる業界の経営者を歴任した有名な例といえよう。

○酒類業界からリゾート、オークションをわたり歩く

日本ヒルズ・コルゲートの瀬口盛正氏

このように、まったく異なる業界をわたり歩いている経営者は、ほかにもいる。たとえば10月から日本ヒルズ・コルゲートの代表取締役社長になった瀬口盛正氏。日本ヒルズ・コルゲートは、ペット用食品のグローバル企業、Hill's Pet Nutritionの日本法人だ。

では、瀬口氏はどのような業界をわたり歩いてきたのだろうか。企業トップとして活躍した例をみてみよう。

2003年にマキシアム・ジャパンの代表取締役社長になった。マキシアムは、レミー・マルタンやジム・ビームといった酒ブランドを所有する企業。オランダに本社を置く、グローバルな酒類企業だ。続いてマキシアム・メキシコの代表取締役社長に就任する。続いて、2009年にクラブメッドの上席副社長になり、2011年には同社の代表取締役社長に就任。クラブメッドは、リゾートをユーザーに提供する企業で、地中海のバカンスで有名だ。「エーゲ海に捧ぐ」という映画を観た世代なら、同社の名前に聞き覚えがあるだろう。

●組織づくりが経営者の見せどころ

瀬口氏のキャリアはまだまだ続く。クラブメッドのあとはサザビーズジャパンの代表取締役社長となる。サザビーズは、美術品を中心としたオークション運営企業で、18世紀に設立された老舗だ。ルノワール作の「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」という絵画を、バブル期に119億円で日本人が落札したことで大きなニュースになった。サザビーズジャパンは、そのオークション企業の日本法人だ。そしてその後、現在の日本ヒルズ・コルゲートのトップとなる。

つまり、酒類からリゾート、オークション、ペットフードと、まったく異なる業界をわたり歩いてきたのだ。前出の原田氏に劣らない業界バリエーションだ。

○人を育ててこそ経営者

だが、疑問も残る。これほど多様な業界をわたり歩いて、順応できるものなのだろうか。瀬口氏は「経営者の仕事は組織づくり。8割は組織作りに労力を使い、専門知識の習得は2割ほど」と話す。また、組織をつくるということは、人を育てるということと強調する。人を育てるということに関しては、業界は関係ないとも力強く語った。

ただ、これほど多様な業界をわたり歩いているのは、瀬口氏の性格にも起因していそうだ。「同じ業界の企業に移っても面白くない。異なる業界だからこそ新たな刺激になる」(瀬口氏)という。まったく違う客層に接せられることが、楽しみなのだそうだ。

また、自分が日本人であることも強みだという。前述のとおり、瀬口氏はグローバル企業のトップとして活躍してきた。ただ、日本法人となると特殊で、日本ならではの商習慣が存在する。瀬口氏は、グローバル企業の常識と、日本ならではの商習慣を理解している。そうしたスキルがあるからこそ、さまざまな企業のトップに招聘されるのかもしれない。

今後の瀬口氏の活躍に期待したい。