P&Gの最高ブランド責任者であり、業界の数字の不透明性や不正を批判したことで知られるマーク・S・プリチャード氏は、「2018年は広告の透明性を改善していく年である」と語った。米DIGIDAYはその言葉の背景と、現状の課題に迫った。

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――「エコシステムの浄化」の進捗は?



大きく前進したと思っている。私たちが推し進めていることは、クオリティの高いクリエイティブを通してではなく、広告の透明性によって実現されなければならない。私たちにとっては、メディアサプライチェーンの透明性を向上させることが何よりも先決だった。だからビューアビリティや第三者検証機関との提携、エージェンシーに対して透明性を担保させるような契約締結、そしてアドフラウド排除といった、ブランドセーフティを重視した施策を進めてきた。今年はその多くが達成できたと思っている。

――目標に対して成績を付けるとしたら評価は?



80%といったところ。しかしまだ6週間も達成するための猶予がある。(取材日は11月中旬)現状、関わりのあるほとんどの企業が、何らかの測定法の提示や第三者検証機関による承認に踏み切ってくれている。いまもっとも大きな課題は、MRC(Media Rating Council)の認定を取得すること。これはMRCに求めている役割の大部分を占めている。

透明性の向上は、より良い決断をするためのデータを与えてくれる。たとえば、ニュースフィードにおけるビューアビリティに関してだが、ユーザーにしっかりと表示されているインプレッションは約2秒しかなかった。だからもう30秒の広告をニュースフィードに送ったりはしない。また、必要以上にコンテンツが表示されていたことも明らかになった。たとえば、表示回数を3回程度で考えていても、末端ユーザーに対しては20回も表示されてしまうケースが発生していた。ほかにはロングテール施策も廃止した。サイト内のほとんどの広告がbotによって閲覧やクリックがされていた。だけど、ブランドセーフティを担保するためにやるべきことはまだ残っている。

――2018年の最優先課題は?



広告の透明性向上をやりきること。そしてプラットフォームすべてにおけるプランニングを改善するためのデータ活用と、クリエイティブの基準を向上させることだ。また、いま私たちはデータドリブンかつ、マスに対してパーソナルに訴えるマーケティングへと方向転換している最中で、これは2018年における大きな変革になるだろう。エージェンシー各社が今後どのような仕事をしていくかもしっかり見ていこうと思う。

――エージェンシーをさらに減らすつもりは?



過去3年間で、私たちは非常に大きな変化に挑戦してきた。以前はエージェンシーの数が多すぎた。だからエージェンシーの数を絞り、クオリティを上げ、さらに私たち自身がしていた仕事を減らしてきた。しかし、さらに大胆にシンプル化を進める必要がある。もう必要なエージェンシーの席はわずかしかない。

――プラットフォームが台頭するなか、ブランドの復権は可能?



本当に問題視しなければならないのは、消費者が何を信頼しているかだ。ブランドが力を持っているかどうかを見極める一番の方法は、マーケットのシェアだ。私たちがもっとも重要視しているのはそれだけだ。消費者は誰がパンパース(Pampers)や、チャーミン(Charmin)、ジレット(Gillette)やタイド(Tide)といったブランドを購入しているかには興味がない。

プラットフォームの台頭に関して私たちが注目しているのは、消費者の変化だ。デジタル技術によって消費者がブランドとコミュニケーションを取る方法が変わったおかげで、広告費はデジタルマーケティング領域に流れ、我々はGoogleやFacebookと協働して現在のエコシステムを作り上げなくてはいけなくなった。さらにいまでは、消費者は広告を見るだけでなく、そのまま購入することができる。そこにパワーシフトがある。

産業全体で私たちがしたことは、ブランドマネージャーやブランド側の人々が行ったことと同じだ。それはメディアや広告の購入の仕方に基準を儲けようとしたこと。それによって最善の判断が下せるようにね。いま、何よりも取り組むべきは、プラットフォームの台頭を憂うのではなく、広告の透明性向上を確立すること。

――中国の成長に関して驚いたことは?



メディアに関する話でいうと、P&Gの支出の大部分は中国においてはデジタルにシフトしている。ウィーチャット(微信)、アリババ(阿里巴巴集団)、バイドゥ(百度)、テンセント(騰訊)などだ。また非常に大きなeコマースビジネスも存在している。さらに面白いのは、中国ではインフルエンサーへの依存度が高いことだ。中国におけるビジネスにおいて大きな部分を占めている。だから私たちがやることといえば、彼らが主張しているオーディエンスの規模や内容が正しいか確かめるくらいだよ。

――来年デジタルメディア業界に起きることは?



消費者データが成熟することだろうね。それに合わせて我々もマスに対するパーソナルなマーケティングを急速に可能にしていくつもりだ。

――デジタルメディア業界全体に対してメッセージは?



デジタルメディア業界は2017年に21歳になった。人間で言ったらもう立派な大人だよ。だから当然その責任も大きくなりつつある。私たちは広告の透明性の向上を推し進めているが、それはまだはじまりに過ぎない。もっと仕組化を推し進めていかなければならないんだ。いま、デジタル企業に対する期待は高まっていることは明確なのだから。

Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)