関東学生連合のトップランナーとして箱根駅伝に出場する近藤。現在は東京大学工学部の3年生で、卒業後は実業団か大学院進学を希望しているという

写真拡大

2018年の1月2日、3日に開催される第94回箱根駅伝に、東京大学の選手が13年ぶりに出場する。関東学生連合(以下、学生連合)の近藤秀一だ。

名前からして賢そうではあるが、頭脳だけでなく、ランナーとしても高校時代から秀でていた。静岡・韮山高時代の5000mベストは14分27秒。県高校駅伝の1区では、下田裕太(現・青山学院大学4年)を抑えて区間賞も獲得している。

箱根常連校からスポーツ推薦の話もあったが、日本の最高学府の受験を決意。不合格となり浪人生活に入るも、20〜25kmを走り込みながら毎日10時間の勉強を続け、東大理科二類に合格した。

浪人中も練習を続けていた近藤は、東大でも1年時からエースとして活躍する。しかし、箱根出場までの道のりは長かった。1年時に出場した箱根予選会で、61分00秒で全体の73位に入り学生連合に選出されるも、チーム11番目のタイムで出番はなし(出場できるのは10名)。

翌年は61分04秒の58位で、学生連合では10番目の選手として出場が確実視されていたが、11月下旬に行なわれる1万m記録挑戦会で最終選考が行なわれることになり、近藤はメンバー入りを勝ち取ることができなかったのだ。

当時の規定では、学生連合の選考対象となるのは「本戦登録1回までの選手」で、補欠とはいえ2度エントリーされた近藤は出場権を失ったことになる。しかし今年の7月下旬に「本戦出場経験がない選手」とルールが変更されたことで、3度目のチャンスが巡ってきた。

近藤は今年2月の東京マラソンで2時間14分13秒をマーク。学習院大学時代に箱根を走った川内優輝(現・埼玉県庁)の学生時代の記録を4分も上回るタイムを引っ提げて、10月14日の予選会を快走した。「箱根駅伝への挑戦は終わったと思っていたので、自分の走りを俯瞰(ふかん)で見られるようになり、余計な力みがなくなりました」と“自然体”で駆け抜けて、59分54秒の20位でフィニッシュ。

自己ベストを1分以上も短縮すると、予選会敗退校の選手の中でトップの成績を残した。それでも、「練習どおりだったので、自己採点は85点くらい」と本人は満足していない。

今回の箱根に出場する学生連合は、予選会と1万m記録挑戦会の合計タイム上位選手から、優先的に区間の希望を出すことができる。近藤は1万m記録挑戦会でも2位で合計タイムで1位となり、希望していた1区をゲットした。

目立ちたいために1区を選んだわけではない。2年連続で学生連合に帯同し、箱根は流れが大切であることを痛感。チームで好成績を残すために「走力が一番高い選手が1区を担うべきだ」と判断した上での選択だったのだ。「チームの中では経験値が高いので、それを生かして、過去2回の悔しさを晴らしたいですね。東大陸上運動部の主将としての“意地と存在感”も見せたいです」と近藤は意欲をみなぎらせている。

駅伝に本腰を入れる大学では選手寮が完備され、栄養管理された食事が提供される。一方の近藤は、都内のアパートでひとり暮らし。自炊をしながら、家庭教師のアルバイトもこなす。そんな厳しい環境で走力を磨いてきた異色の選手が、“三度目の正直”で栄光のスタートラインに立つ。

(取材・文/酒井政人 写真/松尾・アフロスポーツ)