「乗客」だけがタクシー会社の顧客ではないことに、日本交通は気づいた

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「スキル等を含めた自社の本質的なアセット(資産)」を点検し、それを基点にして、振り向ける先をちょっと「ずらす」だけで、「新たな何かを(無理に)得る」必要はなく、新しい顧客を獲得できる。それが「顧客ずらし戦略」の基本概念だ。日本初のタクシー配車アプリを開発したことで知られるタクシー会社「日本交通」のケースで考えてみよう。(フィールドマネージメント代表 並木裕太)

日本初のタクシー配車アプリを開発
「海外展開していたらUberになってたかも」

 ビジネスの形態として極めてシンプルで、かつ規制も多いタクシー業界では、新規事業によって業績を拡大させていくことは容易ではありません。しかし、タクシー会社の顧客は、実は「乗る人」だけではなかったのです。BtoCからBtoBへの“顧客ずらし”に成功した事例を今回はご紹介したいと思います。

 その会社は、日本交通。グループ車両台数約7000台を誇る、都内最大手のタクシー会社です。

 同社の3代目経営者、川鍋一朗氏(現代表取締役会長)が新たなビジネスの可能性に気づいたのは、2011年のことでした。業界の先頭を切って、スマホからタクシーが呼べる配車アプリの開発に着手、1月に『日本交通タクシー配車』としてリリースします。

 川鍋氏は反響の大きさに驚いたといいます。

「すぐにTwitterを通して拡散していきました。その頃は東京限定のサービスでしたが、地方のお客様や、海外からも、『私の住んでいるところにも対応してほしい』という声をたくさんいただいた。そこで私がピンと来て海外展開しておけば、今頃はうちがUberになってたかもしれないんですけどね(笑)。そんな時、あるタクシー事業者から問い合わせの電話があったんです。『このアプリ、ソースコードごと売ってくれないか』と。1000万円払う、と言われました」

 目の前の大金に一瞬は目がくらんだ川鍋氏でしたが、売却することはなく、開発担当者の助言を受けてクラウド化に踏み切ります。そして2011年12月、全国版アプリ『全国タクシー配車』(現『全国タクシー』)がリリースされることになりました。全国のタクシー会社がサービスに加入し、このアプリを通して1台配車されるごとに数十円が、アプリを運営する子会社へと入る仕組みになっています。

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