鈴木祥子が奏でる、クリスマス作品

写真拡大

2017年11月25日、クリスマス1ヶ月前に発売された鈴木祥子『Merry Christmas From BEARFOREST RECORDS〜ベアフォレストのクリスマス〜(Complete Edition)』。2枚組のアルバムは全33曲。彼女のなかの音楽との共存が表現された作品だ。2012年にCDとソノシートという2枚組で発売されたクリスマス・アルバムに5年分の年月が蓄積された。

◆鈴木祥子画像

DISC1は、彼女の音楽の原点ともいえる讃美歌「神よわたしのこの心に」から始まる。幼い頃は、毎週日曜日に教会の通っていたという彼女。彼女の心が歌っているようだ。続いて、彼女のオリジナルのクリスマスソング「Little love」。トナカイの歌のメロディに気持ちが一気にクリスマスに運ばれる。

こんな風に、カバー曲とオリジナル曲が布を織られるように交互に並ぶ。讃美歌とオリジナル曲のあとには、大正3年に発表された「カチューシャの唄」、そして民謡「竹田の子守唄」という日本の歌。まるで、時間と空間を行ったり来たりするような、それは年の終わりにやってくる、クリスマスというイベントが、その年を振り返るためにあると伝えるような。不思議な感覚になる。「きよしこの夜」は、まさにクリスマスの定番。DISC2に収められた「Silent night(英語バージョン2012)」と比べて聴くのもまた良い。

そして、クリスマスの定番曲「ホワイト・クリスマス」をはさんで、オリジナルソング8曲。個人的には、2010年のライブバージョンでの「Father figure」。公園にいる少女が視つめる“星と観覧車と月”で、いつも胸がキュンとなる。

DISC2には、彼女がドラマーとして参加していたアマチュア女の子バンドの楽曲が3曲収められている。今はステージでは鍵盤やギターを弾くことが多い彼女だが、ドラムが彼女のプロへの原点だということを改めて思う。

1983年の曲に続いて収録されているのが、5年後1988年のデビュー曲「夏はどこへ行った」の2017年のライブバージョン。実に34年の年月を一瞬で繋ぐようだ。曲は、歌い手の思いや環境、聴く人の心の状態など、組み合わせの数だけ存在する。そんなことを思う。この曲を知ってから、夏は毎年、どこへ行ったのだろう?という勢いで過ぎていく。

2012年からの5年間には、音楽活動を止めていた2014年があった。そのとき、リハビリのように一人多重録音で創られた「Emptiness(空=くう)1」「Emptiness(空=くう)2」の2曲も収められている。歌詞は、般若心経を英訳したものだという、ポップなメロディに惑わされてしまいそうだが、自分自身が存在することを考える曲。この楽曲の前に収録されている「I,I,I」は、Iという言葉だけで、ひたすらに自分を向き合った曲と考えると、とても対照的に思える。

「Silent night」は、英語バージョンと5年前のメッセージ付きバージョンで。

ラストは、クリスマスが終わった街を歌った「ムーンダンスダイナーで」。作詞を手掛けた川村真澄氏の小説『まちがい天使』で描かれたニューヨークの交差点でのシーンが浮かぶ。小説でのフレーズは、“ゴミ箱のツリーに雪が積もっていた”。

12月25日は、年に一度ある他の日と何も変わらない一日。だけど、世界中の多くの人がこの日を祝い、この日を特別な日と考える。今年もクリスマスがやってくる。どんな形でこの日を迎えるとしても、すべての人の心に光が射し、明かりが灯ることを祈る。

寄稿:伊藤緑 http://www.midoriito.jp/

鈴木祥子『Merry Christmas From BEARFOREST RECORDS〜ベアフォレストのクリスマス〜(Complete Edition)』
BECD-018 3,500円+税

◆鈴木祥子オフィシャルサイト