年末企画:小野寺系の「2017年 年間ベスト映画TOP10」

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 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。映画の場合は2017年に日本で劇場公開された(Netflixオリジナル映画は含む)洋邦の作品から、執筆者が独自の観点で10本をセレクト。第6回の選者は、今年もリアルサウンド映画部でもっとも多くのレビューを執筆した、映画評論家の小野寺系。(編集部)

参考:小野寺系の『最後のジェダイ』評:ディズニー帝国の『スター・ウォーズ』に新たな希望は生まれるか?

1. 『オクジャ/okja』2. 『マリアンヌ』3. 『夜明け告げるルーのうた』4. 『ムーンライト』5. 『花筐/HANAGATAMI』6. 『しあわせな人生の選択』7. 『SING/シング』8. 『LOGAN/ローガン』9. 『ドリーム』10. 『人生タクシー』

 2017年は、何よりも「デヴィッド・リンチの年」として記憶されるべきである。真の天才の、現時点での集大成であり新たな挑戦作ともなった『ツイン・ピークス The Return』は、もはや人類史に刻まれる芸術の一つとして数えられるだろう。そのあまりの別格さと、ドラマ作品ということもあって、映画ランキングからは除外した。

 それ以外にも、2017年は『アトランタ』や『マインドハンター』のような、配信作品やTVドラマの傑作が、ダムが決壊したように次々に出てきた年として記憶されそうだ。今後ディズニーが配信作品の制作に本腰を入れてくることが予想されるため、2019年以降、この流れは一気に加速していくだろう。

 そんな時代を象徴する『オクジャ/okja』は、ポン・ジュノ監督の真の才能が久々に花開いた傑作だ。デヴィッド・フィンチャーやアダム・ウィンガード、ヒロ・ムライなどもそうだが、このようなきわめて質の高いクリエイターが、従来の映画業界の枠を越えて活躍しているのだ。もはや劇場作品とドラマ作品の間の垣根は、少なくとも内容の面で実質的に消え去っているといえよう。

 世界の娯楽が激動の状況にあるなか公開された『メアリと魔女の花』は、未来に不安を感じさせる、日本の保守性・消極性の象徴として目に映った。だが反面、希望を示したのが、湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』だった。日本ではヒットに至らなかったものの、既成概念に縛られた前者に比べ、なんと自由でのびのびとした作品だろうか。これをグランプリに選んだアヌシー国際アニメーション映画祭は、確かな審査を行っていると感じた。自由といえば、ますますアヴァンギャルドになってゆく大林宣彦監督の『花筐/HANAGATAMI』も外せなかった。

 『ラ・ラ・ランド』、『20センチュリー・ウーマン』、そして『マリアンヌ』と、なぜか往年の映画『カサブランカ』を重要な要素として扱った作品が続いた年でもある。『カサブランカ』は、軽薄さも含め、現在のアメリカの娯楽映画のかたちが完成された記念碑的な存在である。病的なフェティシズムとともに、そこに最も踏み込んで、ハリウッド娯楽の神髄に触れた『マリアンヌ』も高く評価したい。

 ほか、志向性の高い撮影と色彩の編集などによって、個人的な体験や時間感覚を豊かに表現した『ムーンライト』、人間の感情を繊細に写し取って生きることの意味を追求した『しあわせな人生の選択』、いまの時代にショーを見ること、見せることの意義を描いた『SING/シング』、ヒーロー作品のなかで介護問題を扱うという挑戦をした『LOGAN/ローガン』、未踏の地へと前進する勇気を与えてくれる『ドリーム』など、人間ドラマの秀作を選出した。

 自由な表現、そして人間や社会などへの深い理解。「映画」の定義が曖昧になっていくなかでも、その根本的な価値を忘れなければ「映画」の精神は受け継がれていくはずだ。イラン政府の弾圧によって映画を撮ることを禁止されたジャファル・パナヒ監督が、タクシーの防犯カメラを使って「映画ではない」と言い張れる作品、『人生タクシー』を発表できたように、またそこで映画への愛が一輪の薔薇によって示されたように、かたちは変化するにせよ、映画というものはまだまだ残り続けていくだろう。(小野寺系)